「英語は『方言』」「嗅覚が一番大事。行ってその土地のにおいを感じること」乗り越えた異文化の壁…川崎宗則インタビュー【中編】

マリナーズ時代の川崎宗則
マリナーズ時代の川崎宗則

 日本、米国、カナダ、台湾―。野球選手は多くいますが、文化の異なる4つの国や地域でプレーしたプロ野球人は、それほど多くありません。スポーツ報知デジタル版の川崎宗則内野手インタビュー。中編では、ムネリン流の異文化コミュニケーション術について聞いてみました。どうしてそんなにどこへ行っても愛されて、大勢の仲間ができたんですか?(デジタル編集デスク・加藤 弘士)

 ホークスの絶対的なレギュラーだった2011年12月。ムネリンは海外FA権を行使し、会見ではマリナーズを“逆指名”した。師と仰ぐイチローと同じ球団に移籍できるなら、マイナー契約でもいい―。高い年俸と安定した地位を捨て、未知の領域へと挑む姿勢に、ファンは度肝を抜かれた。

  • 2012年 MLB開幕戦プレシーズン試合に向けた打撃練習中に、二遊間の守備についたマリナーズのイチロー(右)と川崎宗則
  • 2012年 MLB開幕戦プレシーズン試合に向けた打撃練習中に、二遊間の守備についたマリナーズのイチロー(右)と川崎宗則

 「イチローさんという世界最高の一番野球がうまい人間と一緒にプレーしたい。そして僕もうまくなりたい。それだけでしたね。マリナーズから出された条件は、ホークスと比べてかなり落ちました(笑)。複数チームからメジャー契約の話もあったんですが、シアトルはマイナー契約だったんです。でも当時は契約のこと、何も知らなかった。無知は一番恐ろしいです(笑)」

 お金には換えられない、大きな経験をされたんですね。私のよくあるそんなコトバを、語気を強めて吹き飛ばした。

 「いや、お金は絶対に必要ですよ。声を大にして言いたい。勘違いしてほしくない。でも、0円じゃないからね。ちょっと少なくなっただけ。いや、ちょっとじゃないな。かなりです(笑)。でもね、僕は毎日高級料理を食べたいとか、いいクルマに乗りたいとか、そういうのはない。普通に野球ができる環境があれば。そして、たまに美味しいものを食べたりするぐらいの感じで、と思っていましたけど…」

 私の目をジーッと見つめて、言った。

 「税金というのがあるんです。それは当時、分からなかった。ホークスの頃は親にお金を管理してもらっていたので、そのおかげで何とか払えたんですけど…危ない危ない。ファンの皆さんにも気をつけていただきたい。税金が払えないような新たなチャレンジだけは、やめた方がいいです(笑)」

 12年のマリナーズから、13年にはカナダ・トロントに本拠地を置くブルージェイズ。16年にはシカゴ・カブスへと移籍した。5年間、体当たりで異文化コミュニケーションに臨み、チームメートや指導者、街の人々に愛される姿は国内でも大きく報道された。世界で自分を試したいという若者に、何かアドバイスできることはありませんか。

 「百聞は一見に如かずというけれど、行ってその土地のにおいを感じることですよ。すると、感性がすごく研ぎ澄まされます。人間は嗅覚が一番大事だと思うんです。においを感じることで、また何かが見えてくる」

 渡米前、英語も堪能だったわけではない。

 「ほとんど勉強していなかったんですね。『Hello,Again』とか『Can you celebrate?』ぐらいで(笑)。でも行ってみて思ったのは、僕は鹿児島出身ですけど、日本のどこにも方言ってあるじゃないですか。英語も『方言』なんですよ。『何でやねん』とか『おおきに』って教科書で覚えないでしょ。でも大阪に行けば、自然と関西弁になる。アメリカに行って話しまくれば、自然と毎朝『What’s up?』と言うようになるわけです。『あれ? Good morning』じゃないんだ』って」

 マリナーズ時代は毎朝、クラブハウスで現地の新聞のスポーツ欄を読むことを日課にしていた。自然とチームメートが集い、会話が弾んだ。

 「見出しも前の日の試合で起きたことだから、だいたい分かるわけですよ。分からないところがあったら隣でメシを食っているヤツに『これどういう意味?』って。通訳いないんで、自分で聞く。選手たちも最初は『カワは新聞見ているけど、読めないんだ』とからかっていたけど、だんだん『勉強しているんだ。教えてあげようかな』となってくる。僕らも日本にいる外国人の方が必死に新聞読んでいたら、絶対に助けるじゃないですか。それと一緒ですよ。それを利用して、必死に覚えましたよね」

 体当たりで仲間に飛び込んでいった結果、トロントでは中古車のラジオCMにも出演することに。ブルージェイズを離れる際には、トロント市長が惜別のメッセージを発表するなど、多くの人々の記憶に残る男になった。

 「その文化をリスペクトして、その文化に入っていく。『方言』を学んで『方言』を楽しむ。野球だから、最後はボールを持っていけば何とかなると思っていました。野球は『ボール遊び』ですからね。『プレイボール』で始まるんですから!」【後編へつづく】

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マリナーズ時代の川崎宗則
2012年 MLB開幕戦プレシーズン試合に向けた打撃練習中に、二遊間の守備についたマリナーズのイチロー(右)と川崎宗則
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