全世界の国と地域をイメージしたKIMONO全426点が完成…込められた平和へのメッセージ

手をつなぐ着物姿のモデルたち。鮮やか色彩とともに「世界はきっと、ひとつなれる。」のメッセージを発信している
手をつなぐ着物姿のモデルたち。鮮やか色彩とともに「世界はきっと、ひとつなれる。」のメッセージを発信している

 8月15日。終戦の日である。人々は暮らしの中で平和の大切さに思いを致し、戦火のない世界になることを祈る。一般社団法人イマジンワンワールドは、世界各国をイメージして制作されたKIMONOを通じて、「世界はきっと、ひとつになれる」というメッセージを発信する「KIMONOプロジェクト」を展開している。このほど総数213の国と地域と難民選手団をイメージしたKIMONO(振袖と帯)が完成し、公式ホームページで発表された。鮮やかなKIMONOに込められた、平和への思いとは。(加藤 弘士)

 和奏(わかな)スミレさんはウェブ制作やモデルの統括・指導でプロジェクトに関わっている。キモノ着付け着姿コンテスト全国大会ではグランプリを受賞。キモノモデルとしてその魅力を発信するとともに、キモノショーやイベントを監修、プロデュースしてきた。

 「KIMONOはもちろん、日本の伝統の衣装です。同時に、私たちは『キャンバス』であると考えています。世界各国の大切にしているものをKIMONOに描くことで、他の国の方にも『世界にはこんな国があるんだ』と知っていただき、互いにリスペクトするためのきっかけにしてほしいんです」

 日本各地の染色および織物の作家や職人とともに、それぞれの国の平和と繁栄を願いながら、1点1点丁寧に制作してきた。2014年からプロジェクトが始まり、制作期間は1つの国の振袖が約1年、帯が半年以上。6年の歳月をかけ213の国と地域の振袖と帯が作られたが、制作費は国の大小にかかわらず「1か国一律200万円」がルールだ。

  • 世界各国を表現する着物に身を包んだモデルたち((C)KIMONO PROJECT KENGO MAEDA)

    世界各国を表現する着物に身を包んだモデルたち((C)KIMONO PROJECT KENGO MAEDA)

 総額4億円超の制作費は全て寄付によってまかなわれた。メンバーは全員がボランティアだ。

 和奏さんは言う。

 「200万円の内訳は振袖100万円、帯50万円、そして小物やお仕立てに50万円です。人間国宝でもそうでない作家さんにも平等に制作費をお渡ししています。一律200万円としたのは、世界には大きな国も小さな国もありますけど、全部が平等というプロジェクトの理念からなんです」

 代表理事の手嶋信道さんは元々アシックスの社員として、東京マラソンや欽ちゃん球団などを担当。多忙な日々を過ごしてきた。そんな中、ファウンダーの高倉慶応さんに出会い、このプロジェクトの理念「世界はきっと、ひとつになれる」に強く心を揺さぶられ、一念発起して会社を退職。プロジェクトに参画することになる。

 世界各国へと、どうやってKIMONOプロジェクトの素晴らしさを知ってもらえばいいのか。ヒントをくれたのは、あのオリンピアンだった。

 「きっかけは、日本初のビーチバレー選手でもある瀬戸山正二さんなんです。瀬戸山さんにプロジェクトの話をすると『本物を作れよ』と助言してくれました。『いや、本物を作っていますよ』と答えたんですが、『世間から認められなければ本物とは言えないんだ。その国の大使館に電話して、大使館の人と一緒に作るべきだ』って」

 手嶋さんは各国の大使館に電話し、会いに行き、プロジェクトへの熱意を伝え、どんなモチーフをKIMONOに描くかをヒアリングしていった。

 「当初はなかなかアポイントも取れなかったんです。最初に取れた国はモロッコ王国でした。印象深い国ですか? たくさんありますが、ミクロネシア連邦ですね。その大使は東海大のOBで、ライフセービング(ビーチフラッグス)の世界大会で日本が初優勝した時のメンバーだったんです。それが分かったので意気投合して。次に行くときには、親交のあるビーチフラッグス界の世界大会3連覇のレジェンド、モーガン・フォスターさんたちをサプライズで連れて行ったんですよ。そしたら『OH!』って一気に距離が縮まって(笑)。他国の大使館の方々も紹介していただいたり、サミットに参加するきっかけになりました」

 そのように制作されたKIMONOは、2016年からG7、G20、サミットでも披露され、各国の要人たちをもてなす確かな役割を果たすことになる。

 そして昨秋、日本中に熱狂をもたらしたラグビーW杯。その開会式には、「日本らしさ」の象徴としてノーサイド精神のもと、参加する20チームのKIMONOに身を包んだモデルたちが登場。「和の心」を発信することになった。

 東京スタジアムの芝生の上に、様々な思いが込められた「KIMONO」は鮮やかに映えた。

 和奏さんは振り返る。

 「私たちは『世界はきっと、ひとつになれる』という理念のもとで活動しています。あの日、モデルさんは日本人だけでなく、大半が外国人でした。モデルさんはあえて自らの出身国と異なる国のKIMONOを着用し、手をつなぐことで『世界はひとつで境目が無い』、ノーサイドということを表現したんです」

 2020年。東京五輪は新型コロナウイルスの影響で1年延期が決まった。開催への先行きは不透明なままだ。しかし二人は、東京五輪の舞台からKIMONOを通じて全世界に平和へのメッセージを発信できる瞬間を、心待ちにしている。

 和奏さんは力を込める。

 「オリンピックは世界の方々の視線が、日本に注がれる一番の機会。その平和の祭典でこそ、『世界はひとつ』というメッセージを発信したいという強い思いがあります。まずはお互いの国を理解し合って、多様性を認め合うことが大事です。KIMONOに描かれた柄を通して、『あの国にはこんな素晴らしい自然があって、文化がある。大切にしなくちゃいけない』という思いが生まれるだけで、大きく平和に近づきます。KIMONOが『キャンバス』として、その役割を果たせたらいいなと思います」

 手嶋さんの思いも一緒だ。

 「コロナ禍の中で、世界がタッグを組んで東京五輪がやれたら、真の平和の祭典になると思います。どんな小さな大会になっても、開催できたら、五輪にかかわってきた先人たちに胸が張れると思うんです」

 世界中が様々な不安を抱える今だからこそ、美しいKIMONOの数々が、地球上の人々に笑顔をもたらす存在になれれば-。

 奇跡の瞬間へ、プロジェクトはしっかりと前を見据えて、一歩ずつ歩みを進めていく。

 KIMONOの持つ包容力とあたたかさが、世界に光をもたらすことを、信じて。

手をつなぐ着物姿のモデルたち。鮮やか色彩とともに「世界はきっと、ひとつなれる。」のメッセージを発信している
世界各国を表現する着物に身を包んだモデルたち((C)KIMONO PROJECT KENGO MAEDA)
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