4週連続視聴率22%超の中、セリフ丸写し記事まで登場…「半沢直樹」は「令和の水戸黄門」という見方に感じる疑問

7年ぶりに帰ってきた「半沢直樹」主演の堺雅人。その熱い演技にはさらに磨きがかかっている
7年ぶりに帰ってきた「半沢直樹」主演の堺雅人。その熱い演技にはさらに磨きがかかっている
陰の主役・大和田取締役で毎回、印象的な「顔面演技」を見せつける香川照之
陰の主役・大和田取締役で毎回、印象的な「顔面演技」を見せつける香川照之

 今週も本当に面白かった―。それが毎週、心の底から感じること。1人の中年記者も日曜の夜、テレビの前に座り、リアルタイム視聴し続けているTBS系ドラマ「半沢直樹」(日曜・後9時)の勢いが止まらない。

 9日に拡大放送された第4話の平均視聴率が22・9%。これで7月19日の初回の世帯視聴率22・0%。タイムシフト(録画)視聴率も13・9%で重複を差し引いた合計の総合視聴率33・0%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)というロケットスタートを切って以来、4話全てで22%を超える好調ぶりを見せている。

 2013年7月7日から9月22日にかけて第1シリーズ全10話が放送され、最終回で平均視聴率42・2%を記録。同枠の木村拓哉(47)主演「ビューティフルライフ」(2000年1月クール)の41・3%を抜いて、平成歴代1位の好数字をマークしたモンスター・ドラマの堂々たる7年ぶりの帰還。

 新型コロナウイルスの感染拡大の中、撮影が中断。当初の予定から3か月遅れの放送開始となったことからの「飢餓感」、「待ってました感」もあり、大フィーバーを呼び起こしている。

 ネット上にも放送前から各種記事があふれ続けているが、気になる記事も、いくつか目につく。

 放送直後にドラマ中のクライマックス、例えば、香川照之(54)演じる大和田取締役の名ゼリフ「お・し・ま・い DEATH」や「死んでも嫌だね!」を中心とした堺雅人(46)演じる半沢との激しいやり取りや市川猿之助(44)演じる伊佐山部長が銀行本社に呼び出した半沢に対し、舌鋒鋭く「詫びろ、詫びろ、詫びろ、詫びろ、詫びろ~!」と絶叫するシーンなどのやり取りを、そのままコピー。「以下ネタバレ有」の免罪符のもと、長々と書き写した記事をアップするネット媒体まで登場している。

 正直、こうした記事にはゴツゴツした違和感を覚える。しかし、初回放送中に「半沢直樹」がツイッターの世界トレンド1位となり、ヤフーのリアルタイム検索ランキングでも「半沢」というワードが1位になるほど、このドラマがネット業界まで席巻しているのが現状。こうした記事まで読者に届けられてしまうのが、悲しい現実だ。

 著作権うんぬんを言うつもりはないが、私はドラマは、あくまで「総合芸術」と捉えている。優れた脚本があり、それを演出するスタッフがいた上で堺や香川のような優れた俳優がセリフを口にすることで名場面ができ上がる。

 タイムシフト(録画)視聴が主流となった今、「時に描いた芸術」(その場にいないと体感できない)演劇ほどではないが、ドラマもまた、その時にテレビ画面で味わうべきエンターテインメントだと、私は思っている。だからこそ、放送直後にクライマックス・シーンの熱過ぎるほどのセリフの応酬をそのまま書き写す行為が、どこか下品で作り手への冒涜(ぼうとく)のように思えてしまう。

 それほど、今回の「半沢直樹」に集結した俳優たちの演技はすさまじい。キャスティングも見事だ。初回早々、裂帛(れっぱく)の気合がこもった「倍返しだ!」をさく裂させた堺始め、前半の「ロスジェネの逆襲」編のラスボスだった副頭取役・古田新太(54)、こすっからい出向→銀行返り咲き組を演じた池田成志(57)は演劇界のスターだし、「顔面演技」が話題の香川、猿之助、さらに片岡愛之助(48)ら歌舞伎界のトップスターたちの「個性的過ぎる」演技の破壊力もさすがの一言だ。

 だからこそ、一部マスコミが繰り広げている名場面コピー合戦がいただけないし、さらに言えば、ヒットの要因に虐げられた半沢たちのリベンジに爽快感を感じているサラリーマンたちこそ視聴者層の主流であり、勧善懲悪の「水戸黄門」的魅力こそがヒットの理由という見方にも、一抹の違和感を覚える。

 「ああ、伊佐山がやっつけられて、スッキリした」、「大和田の無様さが気持ち良かった」という楽しみ方をする視聴者も確かにいるだろうが、そもそも、社会の一線で日々、戦っているサラリーマンたちがドラマにカタルシスを求めるものだろうか。

 確かに私も13年版の最終回での大和田常務(当時)の半沢への“カクカク土下座”には胸がすく思いがしたし、滝藤賢一(43)演じる真面目な行員・近藤の窮地には「近藤ちゃん…」と、あたかも自分の友人のような思いを胸に視聴した。

 初回の平均視聴率で男性のM2層(35~49歳)が13・6%、M3層(50歳以上)が16・2%と2位以下の番組と比べて突出して高かったのも事実だ。だが、最後に印籠を出して敵役が「へへ~」となる「水戸黄門」に代表される勧善懲悪の物語がサラリーマン層の心をくすぐったのだと、人気の理由を求める見方はあまりにも一面的ではないだろうか。不況の中、戦うサラリーマンはそんなに単純じゃないぞと私は思う。

 思い返せば、3月25日、東京・赤坂のTBSで行われた佐々木卓社長(60)の定例会見で同社長は「『半沢直樹』が7年ぶりに帰ってきます。新型コロナで閉塞感が漂っている中、お茶の間で家族で楽しんでいただきたい。テレビの力を発揮したい」と、熱く宣言していた。

 同席した編成担当の伊佐野英樹取締役も「こういう(新型コロナの)状況なので、より一発、元気を届けられないかという思いでやっている」と気合十分に話していた。

 そう、この閉塞した社会の中で堺、香川ら俳優陣が見せる魂を込めた演技、福澤克雄氏ら制作陣のコロナと闘いながらの命がけのドラマ作りに対して、私たちマスコミだって、本気で報じなければならないのだ。

 だから、私はセリフ丸写しの記事に違和感を覚えるし、ヒットの理由を日曜夜のカタルシスに求める“分かりやすい”見方にも反発を覚えるのだ。

 偉そうなことを書き殴って申し訳ない気持ちもあるが、これだけは言いたい。「半沢直樹」ヒットの理由はただ一つ、作り手サイドの「本気度」にこそあると―。

 一体、視聴率はどこまで伸びるのか。ドラマの枠を超えた伝説級のエンターテインメントの「今」を見逃したくない―。私はそんな思いで毎週日曜日、「半沢直樹」をリアルタイム視聴している。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆「半沢直樹」の視聴率推移(世帯別)

 ▽第1話22・0%

 ▽第2話22・1%

 ▽第3話23・2%

 ▽第4話22・9%

 ◆2013年7月期放送「半沢直樹」の視聴率推移

 ▽第1話 19・4%

 ▽第2話 21・8%

 ▽第3話 22・9%

 ▽第4話 27・6%

 ▽第5話 29・0%

 ▽第6話 29・0%

 ▽第7話 30・0%

 ▽第8話 32・9%

 ▽第9話 35・9%

 ▽第10話 42・2%

(数字は関東地区、ビデオリサーチ調べ)

7年ぶりに帰ってきた「半沢直樹」主演の堺雅人。その熱い演技にはさらに磨きがかかっている
陰の主役・大和田取締役で毎回、印象的な「顔面演技」を見せつける香川照之
すべての写真を見る 2枚

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請