吉村洋文府知事の「うがい薬問題」に見た、現代の「条件反射」

 「条件反射」という言葉がある。ある刺激に対する神経系の反応(反射)が、経験によって後付けで起こるようになることだ。私が子供の頃には、分かりやすい例として「梅干しを見ただけで、口の中につばがたまってくるようなもの」と教えられた。

 一連の行動には思考が関与する余地がないが、最近の条件反射はちょっとおもむきが違うようだ。そのいい見本が、最近世間を騒がせている、吉村洋文大阪府知事の「うがい薬問題」だろう。

 今月4日、吉村氏は会見で「イソジン」などの商品名で知られるポビドンヨードを含んだうがい薬が、新型コロナウイルスの感染拡大防止に有効とする見解を発表。これが「イソジンが新型コロナを防ぐことが出来る」と拡大解釈されて広がり、街中のドラッグストアからうがい薬が消えた。

 吉村氏はこれを受け、5日に「ポビドンヨードはコロナを予防できる訳ではないし、治療薬でもない」と説明。自らの発言が誤って伝わった理由について、メディアの報道姿勢をチクリと批判した。確かに「うがい薬が“特効薬”になる」と受け取られかねない報じ方もあったが、見る側はちょっと立ち止まることができるのではないだろうか。

 ポビドンヨードの殺菌能力などはひとまず置いといて、そもそもは「うがい薬」なのだから、口腔内の菌に何らかの働きかけがあるとしても、肺の中に入ってしまったウイルスには当然、影響を与えることはできない。もちろん、外部から入って来るウイルスを防ぐことも不可能だ。

 少し考えれば自明の理である。だが、新型コロナ対策で「信頼できる」とされている吉村氏の発言の“上澄み”だけを見て「思考」が抜け落ち、「条件反射」で「ポビドンヨードはコロナに効く」とドラッグストアに走るというのはいかがなものか…と思う。

 医療関係者からは「ポビドンヨードの効用はまだ完全に認められておらず、その時点で公表するのはいかがなものか?」という意見も多い。それに同意して吉村氏を批判すること自体は「政治への問題提起」として、何らおかしなことではないだろう。ただ、目に入ったものを妄信的に、「条件反射」で受け入れることは注意した方がいいし、そうならないように我々も報じていかなければならないと、一連の騒動を見て強く感じた。(記者コラム・高柳 哲人)

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