高見泰地七段が見た王位戦第3局…「1分ではなく2分」にある藤井聡太棋聖の強さ

3連勝で一気の王手を懸けた藤井聡太棋聖(日本将棋連盟提供)
3連勝で一気の王手を懸けた藤井聡太棋聖(日本将棋連盟提供)

 将棋の藤井聡太棋聖(18)が木村一基王位(47)に挑戦している第61期王位戦7番勝負の第3局が4、5日に神戸市で行われ、先手の藤井棋聖が149手で勝ち、3連勝として王位奪取に王手を掛けた。前叡王でNHK Eテレ「将棋フォーカス」司会としてもおなじみの高見泰地七段(27)が対局者心理から第3局を解説した。

 藤井棋聖の強さのひとつ「切り替えの早さ」が見えた将棋でした。対局後ではなく「対局中の切り替え」のことです。

 優勢の終盤で指した121手目▲2一銀打は、筋のいい普段の藤井棋聖なら絶対に指さない「重い手」で「藤井棋聖でもこういうことがあるんだな」と思ったくらいです。▲3三歩としていれば、自然と押し切っていた局面でした。

 思考力の疲労もあったはずですが、木村王位が掛け続けていた重圧の影響もあったように思います。木村王位らしい受けの技術を見せ、後手玉の上部脱出(注・勝負が付きにくくなる)の可能性もあった局面。相当の重圧があったはずです。劣勢になれば「相手にずっと正確に指されたらしょうがない」と開き直れますが、優勢の時は一手でひっくり返される重圧が常にある。追いつめられるのは、むしろ優勢の側なんです。

 指した直後、中継映像で「まずい」という表情をされていたのが印象的でしたが、ここからが「さすがだ」と思える展開になりました。藤井棋聖は瞬時に気を取り直して前傾姿勢に戻り、最善手を探していた。持ち時間は残り2分です。私なら1分間は「やっちゃった…」とぼう然となり、(重圧のかかる)一分将棋にして状況を悪化させていたはずです。ところが、藤井棋聖は深く読んで残り2分を維持し、終局まで一分将棋にはならなかった。ここに強さがあります。感想戦で、木村王位の128手目に△3三銀ではなく最善手の△1三銀と指されていれば苦しかった、と指摘していたのが深く読んでいた証拠です。

 序盤の「土居矢倉」も、藤井棋聖は先手を持って指したことはないと思いますが、指し慣れていない形でも良いパフォーマンスを出せてしまうんだなあと改めて感じました。角を転換させて端攻めと組み合わせた63手目▲5九角の構想も印象に残ります。

 勢いはもちろん藤井棋聖にありますが、第4局は木村王位の先手番です。第2局も先手で優勢を築いていますし、誰よりもファンの声援を背に受けて戦っている先生です。0勝3敗からでも勝てば流れは変わると思います。藤井棋聖には絶対に無くて木村王位に確実にあるものは、長年の棋士人生で培った経験。背水の陣でこそ発揮されるはずですし、次局は木村王位の底力が見られると思います。(談)

 ◆高見 泰地(たかみ・たいち)1993年7月12日、横浜市生まれ。27歳。石田和雄九段門下。2005年、奨励会入会。11年、18歳で四段(棋士)昇段。18年、新設のタイトル戦・叡王戦の決勝7番勝負で金井恒太六段を4連勝で破り、初タイトルの叡王を獲得。第3局で藤井棋聖が用いた80年前の戦型「土居矢倉」を度々採用し、現代によみがえらせる契機を生んだ。NHK Eテレ「将棋フォーカス」司会。立教大文学部史学科卒。

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