旅は僕らのコントより面白い…「春道」がつづった526日間世界一周、波乱万丈の経験

世界一周時に着用していた帽子やTシャツを手にする春道の櫻間心星(左)と林高士
世界一周時に着用していた帽子やTシャツを手にする春道の櫻間心星(左)と林高士

 櫻間心星(じんせい、23)と林高士(24)による若手お笑いコンビ「春道」。その2人が、2017年から1年半にわたって世界一周をした時の思い出をつづった「正直、旅は僕らのコントより面白い」(産業編集センター、1650円)は、苦難や葛藤、感動と友情などの喜怒哀楽が詰まった、単なる旅行記ではない一冊となっている。テレビ番組などの企画ではなく、自分たちの意思のみで彼らはなぜ世界に旅立ち、何を得てきたのだろうか。(高柳 哲人)

 社交的で何事も自ら進んでやろうとする櫻間と、一見、何を考えているのか分からない、つかみどころのない林。16年にコンビを組んだ2人は活動をほとんどすることなく、“無名芸人”として海を渡った。始まりは、東京・新宿の喫茶店。両親の影響で旅好きだった櫻間が、米国から帰国後、林を世界一周に誘った。

 櫻間(以下櫻)「最低1年はかかると思ったし、その間、相方と何もできなかったらコンビを解消されると思いました。『コイツに逃げられたら困る。だったら連れてっちゃえ』と。それに、(林が)頼まれたら嫌と言えない性格なのも分かっていたので」

 櫻間は、林を説得する材料を幾つか用意していたが、それを使うことなく林はあっさり、海外行きをオーケーした。

 林「基本、何も考えていませんでしたね。ポジティブでもネガティブでもない。『何となく楽しそうかな~』というだけ。海外に行ったこともなかったので、いい機会かと」

 そこから2人でアルバイトをして500万円をため、17年5月に最初の国・ネパールへ出発。その先は綿密な計画を立てていたわけではなかった。

 櫻「日本で決めたのは、〈1〉ウユニ塩湖【注1】を見に行く〈2〉オーストラリアでワーキングホリデー【注2】に参加する〈3〉アフリカは旅の後半で行く―の3つだけ。詳細は現地で決めました。プランは、全部僕が立てていましたね」

 道中は櫻間が旅行計画を、林が日記とカメラマン、料理を担当。これは、全て櫻間が決めたことだった。

 櫻「一度、自分の気持ちがヘコんでいた時に高士に予定を立てさせてみたら、全く日程の違うフェリーを予約しようとしたんです。『これはマズい!』とすぐに立ち直りました(笑い)。高士をカメラマンにしたのは、ただ旅行についてくるだけではつまらないだろうからと、『仕事』を与えた感じです」

 林「相方にいろいろ言われることに関しては、吹っ切れているというか『勝てないな』と。まあ、勝とうとしたこともないんですが…」

  • 「正直、旅は僕らのコントより面白い」
  • 「正直、旅は僕らのコントより面白い」

 旅先では、さまざまな“恐怖体験”をする。ニカラグアでは武装集団にバスを取り囲まれ、キリマンジャロでは高山病に悪戦苦闘。林はキューバで男性相手に童貞を喪失した。ただ、そのようなアクシデントよりも、振り返ると精神的なつらさの方が記憶に残っているという。

 林「一番つらかったのは、序盤のベトナム。財布をなくしたことをきっかけに相方と険悪になったのですが、本当に日本に帰ろうと思いました。でも早いうちにあの経験があったから、その後のつらい時も乗り越えられました」

 櫻「僕も、痛みよりも(林への)怒りの方がつらかった。中でもイギリスですね。高士の写真を見て、吐きそうになってましたから。その時は、高士の写真(のデータ)を消すことに快感を覚えていたくらいですから」

 林「えっ、そうなの? ヒドいヤツだな~」

 櫻間が「普通の生活の10年分くらいは一緒にいた」という526日間の旅。日本に帰って来た今、出発前との変化を感じることはあるのだろうか。

 櫻「相方との、あうんの呼吸は生まれたと思います。旅行前は、会話がちぐはぐだった時もあったので。こんな正体の知れないヤツのことが分かるようになった。今では、高士のウソは100%見破れるようになりました」

 林「旅に出掛ける前よりは、他人としゃべるようになりましたかね…。コミュニケーションというのは大事なんだな、と思えるようになりました」

 「もう一度、同じ旅に行けと言われたら?」と聞くと、「行きません!」と声をそろえて即答。だが、波乱万丈の経験は2人の今後の人生において血肉となっていくことは間違いないだろう。

 【注1】南米・ボリビア西部の湖。雨期の12~3月頃には湖面が空の景色を反射する絶景が見られ、「天空の鏡」と呼ばれる。
 【注2】18~30歳の若者が、異文化交流をしながら滞在費用を得るために就労することができる制度。

 ◆春道(はるみち)

 ▼櫻間 心星(さくらま・じんせい)1997年3月27日、東京都渋谷区生まれ。23歳。ツッコミ担当。

 ▼林 高士(はやし・たかし)1996年4月25日、千葉県八街市生まれ。24歳。ボケ担当。

 共に高校卒業後に都内のお笑い養成所に入所。2016年にコンビを結成する。コンビ名の由来は、人気漫画「クローズ」の主人公・坊屋春道から。後から2人の誕生日、コンビ結成、旅の出発が全て春だったことに気づき「いい名前じゃない?」と気づく。今後は8月21日にFM FUJI「沈黙の金曜日」にゲスト出演予定のほか、同29日には東京・豊島区のカフェ「slow」でトークイベントを開催。

世界一周時に着用していた帽子やTシャツを手にする春道の櫻間心星(左)と林高士
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