準硬式の逸材にプロ熱視線…最速154・7キロ 福岡大・大曲錬は就活せず「プロに挑戦してみたい」

準硬式野球でプロのスカウトの注目を集める福岡大・大曲錬投手
準硬式野球でプロのスカウトの注目を集める福岡大・大曲錬投手

 150キロ超のボールを投げれば、プロのスカウトの目に止まることは間違いないだろう。そんな逸材が大学の準硬式野球界にいる。最速「154・7キロ」を誇る福岡大の右腕・大曲錬投手(4年=西日本短大付)だ。

 今年3月15日、福岡市南区の桧原運動公園野球場にはプロ数球団のスカウトが詰めかけていた。この日、行われていたのは高校野球でも大学野球でも社会人野球でもない。準硬式野球の九州六大学春季リーグ戦、福岡大―九州大戦だった。

 ネット裏でスピードガンを構えるスカウトの視線は、大曲に向けられていた。179センチ、74キロと細身の体ながら、しなやかな腕の振りでキレのあるストレートを投げ込んでいく。先発して6イニングを投げて無安打、13三振を奪った。無名の右腕の快投に、スカウトは色めき立った。

 高校は夏の甲子園で優勝経験のある福岡・西日本短大付。硬式でプレーしていた。2年春までは控えの内野手で、秋から投手に転向した。

 サイドスローで最速は138キロも、背番号10で3年春の九州大会準決勝・長崎日大戦に2番手として登板。最後の夏は登板機会がなく5回戦で敗退し、甲子園出場はならなかった。

 大学でも野球を続けるかどうか。「迷いましたけれど、自分の力では…」。そんな時、福岡大準硬式野球部出身の西村慎太郎前監督に勧められ、福岡大に進む。準硬式であれば登板機会が増えるのでは、という思いもあった。使用球が外側はゴムの軟球、中身はコルクで硬球といったイメージの準硬式球に変わったのを機にフォームも変えた。

 「このままでは通用しない」と再びオーバースローに戻し、知人のアドバイスを受けながら一から作り直した。「最初に感じたのは、上から投げたほうが速いということ。ボールが伸びるのが、自分でもよくわかりました」。球速はコンスタントに140キロを超えるようになり、最速は「154・7キロと聞いています」というほどまでになった。

 その評判はスカウトにも伝わっていった。昨年11月、大阪、滋賀で行われた全日本大学9ブロック対抗準硬式野球大会に全九州の一員として出場。「スカウトの方が見にきていて、自分のこと? と思いました。春のリーグ戦も見に来ていたので、もしかしたら…」。夢は現実へと近づいていた。

 3月に開幕したリーグ戦はコロナ禍で中止。大学の授業もオンラインとなり、練習もできなくなった。自粛中は毎日のランニング、体幹トレーニングなどで汗を流した。「体が細いので無理やり食べています」。1日の食事の回数を何度かに分けて増量に取り組み、4キロ増の78キロに増やした。6月下旬に練習を再開。8月の全日本大学準硬式野球選手権に照準を合わせていた。

 同部は出場59度、優勝6度という全国屈指の強豪。2年、3年と続けて2回戦で敗れていたとあってリベンジを期していたが、大会はコロナ禍で中止に。「学生最後の試合でやりたかったですけれど、しょうがない部分もあります」と悔しがったが、次の目標へ気持ちを切り替えている。

 「プロに挑戦してみたい」。就職活動はせず、退路を断ってドラフト会議(10月26日)での指名を待つ。8月からは硬式野球部の練習に参加できるようになり、硬球の感覚を取り戻していくつもりだ。

 準硬式出身者がドラフトで指名されれば、2017年に楽天の6位指名を受けた帝京大の左腕・鶴田圭祐以来8人目(育成含む)となるが、1軍で活躍した選手は少ない。それだけに、大曲へかかる期待は大きくなる。

 好きな選手はソフトバンクの千賀。「ストレートが速いですし、見ていて気持ちがいいです」。準硬式球はリリースの際、縫い目に指がかかりづらいことから球速は硬球より4、5キロ落ちるといわれる。硬球なら「154・7キロ」は160キロ近い計算。プロで鍛えれば、千賀を追い越すことも夢ではない。

 無名の右腕は、その可能性を十分に秘めている。(記者コラム・秋本 正己)

 ◇大曲 錬(おおまがり・れん)1998年5月21日、福岡県柳川市生まれ。22歳。昭代小3年の時に野球を始め、昭代中ではフレッシュリーグの佐賀藤本ベースボールクラブでプレー。西日本短大付では控えの投手、内野手で甲子園出場はなし。福岡大で準硬式野球部に入部し、3年秋はMVP、最多勝利投手、最多奪三振、ベストナインを受賞した。179センチ、78キロ。右投右打。球種はストレート、スライダー、カーブ、スプリット、チェンジアップ。

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

野球

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請