【王手報知】長嶋茂雄さんはどんな将棋を指すのか―。中原誠十六世名人との激闘譜を43年ぶりに再録

スポーツ報知
報知新聞特別対局で盤を挟む長嶋茂雄監督(右)と中原誠名人(いずれも当時=1976年12月)

 藤井聡太棋聖(18)の誕生を伝えた今月17日付スポーツ報知では、将棋ファンとして知られる巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(84)=報知新聞社客員=の祝福メッセージが掲載され、話題を集めた。今回、1977年1月3日付から本紙に連載されたミスターと中原誠十六世名人(72)の二枚落ち対局の棋譜を43年ぶりに再掲載。ジャイアンツファンであり、中原十六世名人と名人戦で戦った経験を持つ高橋道雄九段(60)による詳細な解説で激闘譜を追体験する。(北野 新太)

▲名誉三段 長嶋 茂雄

△名  人 中原  誠

(二枚落ち)

      △6二銀

▲5六歩  △5四歩

▲6八銀  △5三銀

▲9六歩  △9四歩

▲5七銀  △5二金左

▲7六歩  △6四歩

▲5八飛  △6三金

▲4八玉  △4二玉

▲3八玉  △3二玉

▲2八玉  △4二銀上

▲3八金  △4四歩

▲4八銀上 △4三銀

▲6六銀  △7四歩

▲5九飛  △3四歩

▲1六歩  △1四歩

▲5五歩  △同 歩

▲同 銀  △5四歩

▲6六銀  △7二金

▲5八飛  △7三桂

▲7七桂  △4五歩

▲7九角  △4四銀右

▲5七銀上 △3三桂

▲5六銀  △3五歩

▲5五歩  △6二金寄

▲5九飛  △5三金上

▲5四歩  △同 銀

▲5五歩  △4三銀

▲7五歩  △同 歩

▲同 銀  △7六歩

▲7八歩  △7七歩成

▲同 歩  △6五歩

▲7六歩  △2四歩

▲8八角  △2五歩

▲6六歩  △同 歩

▲同 銀  △6五歩

▲7五銀  △7四歩

▲8六銀  △8四歩

▲9五歩  △8五歩

▲7七銀  △9五歩

▲6六歩  △同 歩

▲同 銀  △6五歩

▲同銀右  △同 桂

▲同 銀  △6四歩

▲5六桂  △6五歩

▲4四桂  △同 銀

▲5四銀  △3六歩

▲5三銀成 △同 銀

▲5四金  △5二銀

▲6三金  △同 銀

▲3四金  △4二銀打

▲5四歩  △同銀右

▲5五歩  △6三銀

▲9七角  △5二歩

▲3六歩  △9六歩

▲8八角  △4三銀打

▲2四金  △4四桂

▲3七桂  △3六桂

▲3九玉  △3四金

▲同 金  △同 銀

▲5六飛  △4四桂

▲5九飛  △9七歩成

▲同 香  △同香成

▲同 角  △5六香

▲5七香  △2八金

▲4九玉  △3八金

▲同 玉  △4八金

▲2九玉  △2六歩

▲同 歩  △2七歩

▲1八金  △5七香不成

▲同 飛  △2八香

まで139手で中原名人の勝ち

 巨人・大鵬・卵焼き。将棋を始める前から巨人ファンだった私にとって、長嶋さんは憧れの人。「巨人軍は永久に不滅です」の言葉を受け、今もずーっとジャイアンツファンです。中原先生も私にとっては巨人のような先生。修業時代から勉強させていただいた存在です。心して解説させていただきます。

 ◆12手目▲5八飛=従来の駒落ち定跡にこだわることなく、得意の中飛車でいく。心意気が素晴らしいです。

 ◆22手目▲4八銀上=升田幸三実力制第四代名人の将棋を彷彿(ほうふつ)とさせる陣形。野球と将棋、分野は違えど才能がきらめくお二人には何か通じるところがあるのかも…。

 ◆24手目▲6六銀=歩越しの銀は扱いが難しいです。ここは▲5五歩△同歩▲同角として、次に真っすぐ▲5六銀と立つのがとてもいい形でオススメです。

 ◆44手目▲5六銀=相手の4筋の位取りに対し、力強く右銀を持ち上げていって、中央をガッチリと押さえた秀逸な構想です。

 ◆46手目▲5五歩=攻め込む前にまずは足元を固めたい。ここは▲5九金~▲4八金左と玉形を強化した後に、▲5五歩と合わせて、以下ガンガン攻めれば、二枚落ち中飛車戦の名局が誕生していた可能性大でした。惜しい!

 ◆54手目▲7五歩=ここでも▲5八金~▲4八金左と守備を固めておきたいです。

 ◆57手目△7六歩=これは痛い! 桂使いの名手と恐れられた中原名人に桂を渡す形になってしまいました。

 ◆58手目▲7八歩=上手にと金を作られては将棋が終わってしまいます。気を取り直してのいい辛抱で勝負はまだまだ。

 ◆64手目▲8八角=角は右方向に使うのかとみれば、さっと左に▲8八角。大局がよく見えています。

 ◆72手目▲8六銀=この撤退は無念! ここは銀取りに構わず、▲6四歩と打ち返して攻めたいです。

 ◆82手目▲6五同銀右=銀を引かずに、今度こその進撃。駒損もいとわね強気の攻撃姿勢が素晴らしい。

 ◆86手目▲5六桂=ここが本局最大の勝負どころ! 先に▲5四歩と突き出せば勝ちが望めていたと思います。対して△同銀は▲同銀と手順に銀が進めるし、△5二金と引けば、そこで▲5六桂が絶好打になります。

 ◆95手目△5二銀=ここからの中原名人の受けが実に強靱(きょうじん)! プロから見ても驚くほどの手堅い受けで本局が通常のお好み対局ではなく、勝負の一局であることがうかがい知れます。

 ◆113手目△3六桂=この王手で参った!

 139手もの大変な熱戦でした。勝敗を超えて、この長手数を見事に戦い切った長嶋さんの集中力に感銘を受けました。早いイニングからの守備固めがあれば、積極果敢な攻めがさらに生きたと思います。

 最も印象に残るのは64手目▲8八角。盤面を広く見ることによるバランス感覚がないと指せない手です。選手として、さらには監督としてフィールドを見渡していた長嶋さんの視野を垣間見た思いで、感激いたしました。これからも将棋を愛し続けていただけたら、棋士として大変うれしく思います。(将棋棋士・九段)

 ◆高橋 道雄(たかはし・みちお)1960年4月23日、東京都北区生まれ。60歳。故・佐瀬勇次名誉九段門下。80年、四段(棋士)昇段。83年王位戦で内藤國雄を破り、史上最低段(当時)の五段で初タイトルを奪取。獲得タイトルは王位3、棋王1、十段1の通算5期。矢倉を主力とする重厚な棋風の居飛車党だが、横歩取りの空中戦にも秀でる。52歳まで順位戦A級に在籍し、現在も若手の壁になり続けている。棋界随一のサブカルフリークとしても知られる。

 中原誠十六世名人の回想「あの対局のことはよく覚えていますよ。長嶋さんに抱いていた印象から、勘で指してこられるのかな…と思っていましたけど、よく考え、慎重に駒を進めておられました。常に理詰めだったので『おや?』と思いましたよ」

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