野球界では、捕手は「女房役」と呼ばれることがある。投手を支え、励まし、時には厳しくリードしながら試合を組み立てていくという意味から評される。17日のロッテ戦(札幌D)で、今季開幕投手を務めた有原航平投手(27)が、5試合目にして初勝利を挙げた。まさに「女房役」と呼ぶにふさわしい活躍を見せたのが、石川亮捕手(24)だった。
昨季中盤まで、有原とのバッテリーを託されて8月までに10勝を挙げた。しかし8月中旬以降その機会はなく、石川亮は2軍での調整を続けることとなった。なぜ、出場機会がなくなったのか。その理由をファームで分析していたという。「(昨季のシーズン)後半、『なんで有原さんと組めなくなったのか』という原因が自分の中では分かっていた。それは自分の中で分かっていましたし、外されて当然だなという気持ちだった」。
昨季は8月以降、1軍での出場機会はなかった。今季を迎えても練習試合、オープン戦で有原とのバッテリーを組む機会はなかった。それでも、準備だけは怠らなかった。「いつかチャンスがくると思って。その時に自分がどれだけできるか、どれだけ準備しているかだけだと思っていた」。ようやく訪れたチャンスは10日のオリックス戦(京セラD)。勝ち星は付かなかったが、巧みなリードで7回無失点の好投に導いた。
そこから1週間たって迎えたこの日。有原は序盤から制球に苦しむ場面が見られ、初回には2本の安打で先取点を奪われていた。幸先が良いとは言えない立ち上がり。だが、そういったケースも石川亮の中では想定していたのだろう。ベンチに戻ると、有原にこう声をかけたという。「きょうはこういう苦しい試合になると思うので覚悟していきましょう」。言葉によるサポートも効果を発揮したのか、2回以降も崩れることなく6回を今季最多127球で投げきった。「(これまでの)準備がきょうはたまたま、いい方向にいってくれた」と喜んだ。
打撃面でも2安打1打点とエースを援護。栗山監督は、「亮のリードは本当にさえている。去年あれだけ嫌な思いをした中で、何がなんでもという必死さ、ひたむきさがこういう苦しいときには一番必要」と評価した。しかし石川亮に満足した様子はなかった。「捕手というポジションは勝たないと意味がない。現時点では安心とかはしていない。やっと始まったかなという感じはしています」。準備を尽くして女房役に徹する。それがチームのためになると信じて。(日本ハム担当・小島 和之)
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