メジャー記者は“命がけ”…球団や機構への訴訟放棄する「賠償責任免責同意書」にサインして取材

賠償責任免責同意書
賠償責任免責同意書

 夏季キャンプの開始から5日目を迎えた米大リーグ。米大リーグ機構のガイダンスに従って、各球団は感染を徹底的に予防するべく、球場内の環境整備に細心の注意を払っている。

  • 記者席のモニターにはブルペンの様子が映し出される
  • 記者席のモニターにはブルペンの様子が映し出される

 選手たちへの感染を防ぐため、取材メディアにもキャンプ開始前に詳細なオンライン・ブリーフィングが行われた。今季は監督会見や選手の囲み取材は全球団オンライン・ビデオ会見だ。移動をすれば感染リスクが高まるので、記者がチームに帯同しなくても取材できるように球団スタッフが撮影した練習の映像が日々シェアされたり、ライブ・ストリーミングで打撃練習が見られる設定がされたりと、様々な工夫がなされている。

  • 駐車場入り口の“検問所”
  • 駐車場入り口の“検問所”

 それでも現場にいかねば取材ができないこともある。たとえばシアトル・マリナーズの場合、球場にいかないとブルペンカメラの映像が見られない。記者はシアトル在住なので、日本人投手が投げる日は感染リスクを心配しながらも自家用車で球場へ行っている。

 球場に行く前にまず自宅で検温。球場内の食堂も売店も開いていないので、水筒と弁当も持参する。ガラス瓶に入った飲み物は持ち込めない。

 スタッフ用の球場駐車場の前には検問所のようなテントがある。車に乗ったまま、マスクを着用して窓を開けると、職員がこちらの名前と所属先を確認して素早く検温する。安全な数字が確認されると、チェックポイントを通過したという腕章が渡され、隣接する立体駐車場の最上階に駐車するように指示される。

 車を停めて、屋外の渡り廊下を歩いていくと「TIER3」というグループ専用の入口がある。このグループは球場内でアクセスできる場所が非常に制限されているグループで、メディアも「TIER3」だ(選手やコーチはTIER1、一部の球団スタッフはTIER2)。選手たちは地下の専用駐車場からクラブハウスへ繋がる専用通路を使うため、他グループとの接触は一切ない。

 入口に設置された空港のような手荷物検査とX線検査を通り、隣接された部屋でRelease of Liability(賠償責任免責同意書)という書類にサインもする。これは球場に来るリスクを個々が理解していることや、もし新型コロナウイルスに感染しても機構や球団を訴えないことなどに同意する書類で、サインしなければ入館できないため、「取材者も命がけ」ということを認識させられる。

 顔写真入りの入館証を受け取ったら(今季は1日ごとに記者入館証を申請しなければならない)、テープを貼られた動線に沿ってプレス席へ。もちろん球場内のドアというドア、窓という窓はすべて全開だ。普段は関係者がひしめくプレス席だが、左右前後のスペースが6フィート(約2メートル)以上離された各社の指定席が用意されている。他人との接触をさけるため、室内はすべて一方通行で、自席を立って他の記者や職員のところに話をしにいくことも禁止されている。

 通常ならば記者はフィールドに降りて、選手の練習を間近で見る。試合の前後には選手のロッカールームで選手やコーチらと話もできる。しかし、今季はプレスボックスの自分の席とトイレ以外、どこにも移動できない。カメラマンが動ける場所は記者のそれとは異なるので、同じメディアであってもカメラマンとも会えない。

 記者席からモニターを通して見る練習、ビデオ画面越しのインタビュー…。アメリカで長引くコロナ禍は終息するどころか、感染者が日々増え続けている。この恐ろしく距離感のある取材方法が、今後の「ニューノーマル」になってしまうのだろうか。(秋野 未知メジャー通信員)

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 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

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