嵐の『ニノ』と同姓同名の「はとこ」だった球児に出会えた夏…一人ひとりに必ず存在する「ドラマ」 特別な夏、今年はどんな物語が

嵐の二宮和也(かずなり)とはとこの二宮和也(かずや)右翼手は7回、勝ち越しホームを踏んだ(カメラ・相川 和寛)
嵐の二宮和也(かずなり)とはとこの二宮和也(かずや)右翼手は7回、勝ち越しホームを踏んだ(カメラ・相川 和寛)

 2011年7月18日。入社1年目だった私は高校野球の取材のため、神奈川県内の野球場にいた。その日は台風6号の接近に伴い、薄曇りの空とジメジメとした空気が球場を覆っていた。まさに嵐の到来を予感させる中で「ニノ」に出会った。

 前日、私は上司から「横浜創学館に『二宮和也(かずや)』という選手がいる。嵐の『ニノ』と名前が一緒というだけで、それ以外は特になにも情報はない」とだけ言われ、取材を託された。

 「どんな選手なんだろう」「イケメンなのかな」そんなことを考えながら球場に到着。試合を観戦しながらまずは周辺取材から始めた。スタンドで応援するクラスメートを見つけ、あれこれと質問。「カラオケの採点機能で90点以上を連発するほど歌がうまい」「小さい頃はダンスをやっていた」。“アイドル要素”の情報はつかんだ。ただ、「なんか弱いなぁ…」というのが私の本音だった。お礼を言って立ち去ろうとした時、一人がおもむろに口を開いた。

 「そういえば、嵐のニノと親戚とか言ってましたよ」

 私は「えっ」と立ち止まり、振り返った。聞き返すと「教室でよく『俺はニノと親せきなんだ』と言ってました。まぁ誰も信じてませんけどね」。人気アイドルグループ嵐の二宮和也(かずなり)と同姓同名で、しかも親戚―。もちろん、私も信じることはできなかった。中高生くらいの年齢だと有名人と名前が似ているだけで、兄弟だとか親戚だとか言い張るのはよくあることだからだ。

 もらった情報を頭の片隅にしまい、今度は母親の取材に向かった。ダンスの話を聞くと、5歳の頃に何度かテレビ番組に出演した実力を持っていることが分かった。そして、名前のことを尋ねてみた。「さっき、二宮君の友達に取材したら、学校で嵐の二宮和也さんと親戚って言ってるみたいですね」。もちろん質問に深い意味はなく、名前の由来を聞こうとしただけだった。しかし、返ってきた答えに驚きを隠せなかった。

 「実は本当に親戚で、父方のはとこなんですよ」

 思ってもみなかった情報に心臓の鼓動がどんどん速くなっていくのを感じた。「詳しくは父親に聞いてみてください」と言われ、バックネット裏にいた父親のもとへ向かった。話を聞いてみると、二宮の父方の祖父が兄弟で、はとこにあたるという。名前の漢字が同じなのは、父・和栄さんの1文字をもらったから。アイドルが「かずなり」で高校球児が「かずや」。読み方は違えどアイドルと同姓同名のはとこという奇跡に巡り合うことができた。

 その試合で二宮は8回に勝ち越しのホームを踏むなど2安打2得点と活躍し勝利に貢献。試合後に取材すると「名前のおかげで注目してもらえる。いい名前をもらいました」とはにかんだ。歌とダンスがうまく、ジャニーズ入りの条件はそろっていたが、「顔がイケメンじゃないので」と、照れくさそうに笑った顔が印象的だった。

 その後、横浜創学館は準決勝で敗退。高校球児「ニノ」の挑戦は終わりを告げた。

 北海道支局勤務だった頃を含めて約5年間、高校野球の取材に携わり、様々な選手やチームに出会った。「ニノ」が最も印象に残った選手だったが、そのほかにも超スローカーブで甲子園を沸かせた投手や亡き父の思いを背負ってマウンドに上がった投手―。変わった話題では、体重が50キロ台だったため、インターネット掲示板の「2ちゃんねる」に「もやし」と書かれ、その悔しさをばねに14キロ増量し、最後の夏にサヨナラ打を放った選手がいた。また、スタメンに4人も眼鏡をかけた選手が並び、全員が活躍して7年ぶりに1勝を挙げたチームもいた。

 高校野球の取材をしていて、いつも思うことがある。強いチームだろうと弱いチームだろうと、一人ひとりに必ず“ドラマ”が存在するということ。世界的に流行している新型コロナウイルスの影響で甲子園につながらない今年の夏だって変わらないはずだ。

 現在、各都道府県では「代替大会」という形で試合が開催されている。高校球児にとって例年とは違う“特別な夏”―。どんな“ドラマ”が誕生するのか、注目していきたい。(記者コラム・相川 和寛)

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