敷居が高い純文学でも親近感…ドリヤス工場さんが文豪たちの裏話を漫画で紹介した「文豪春秋」

文豪春秋
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あなたは元ネタがいくつわかる?「文豪春秋」に登場するタイトル(答えは本文の下に)
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 芥川賞作品を数々生み出してきた文芸誌「文学界」に2017~19年まで連載された漫画「文豪春秋」(文芸春秋、935円)が、単行本として発売された。テレビ番組などでも話題になった「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」シリーズを描いた漫画家・ドリヤス工場さんが、文豪たちの“知られざる顔”を紹介。「純文学はハードルが高くて…」という人も、この漫画で興味を持った作家の作品を、思わず手に取ってみたくなるはずだ。(高柳 哲人)

 檀一雄は家庭的な料理好き、石川啄木は女好きで借金の天才、泉鏡花は極度の潔癖症―。「文豪春秋」には、文豪たちの熱烈なファン以外はほとんど知らないような、意外な一面が次々と登場する。

 「元々、作家の面白い話を紹介する漫画にしようという企画だったのですが、『文学界』の連載ですので、読者はある程度作家に関する知識を持っている人たち。ということで、単なるプロフィル紹介ではなく、もうちょっと踏み込んで裏話的なものを描いてみようということで始まりました」

 1話5ページの漫画は、本書を出版している文芸春秋の本社建物内を舞台に、同社の創業者でもある作家・菊池寛のブロンズ像が、女性社員に文豪たちのエピソードを紹介する形式。その設定は、像が置かれている同社のサロンでの軽い会話から生まれたという。

 「元々は不思議な文壇バーを舞台にしようと考えていたのですが、もうちょっと話に幅を持たせたいと考え、文芸春秋の社内ということになりました。一方で不思議さも残したいと思っていた時に像が目に入って『アレ(ブロンズ像)にしゃべらせたらどう?』ということになり、『それはいいな』と。菊池寛という人は当時の文学界である意味中心的な人物。その中に生きて、当時を知っている人に語らせようと」

 同時に、聞き役の女性社員を「腐女子(ふじょし、男性同士の恋愛を扱った漫画やアニメなどの作品を好む女性)」臭のする現代的なオタクキャラにしたことにも、意味があった。

 「いわゆる『文学少女』ではつまらないと思ったからです。単なるマニアではなく、それでいて全く文学に興味がない訳ではない。最近のアニメなどでは、文学モノが一つのジャンルとして流行しているということもあるので、それはそれでいいのではと思いました。また、作家の話だとどうしても単調になりやすい。だから、全く異なるキャラクターを入れて『世間話→解説→オチ』というパターンを作ったんです」

 漫画の内容は、かなりマニアックなものにまで及ぶ。ドリヤスさんはさぞ文学に造詣の深い、かつての文学青年だった…と思いきや「そんなことはないですよ」と笑った。

 「漫画の中に出てくる作家の作品は読んでいましたが、詳しいわけではありません。読者の方と、知識の前提はそれほど変わらないと思います。だから、自分が知って『面白い』と思ったエピソードを漫画にしていったという感覚ですね。あとは、特定の作家に思い入れが無かったのも良かったと思います。もし好きな作家がいると、ひいき目になってしまいますから」

 ところで、最初に本書の表紙を見た人の多くは、こう思うのではないだろうか。「あれ、水木しげるってこんな漫画もあったんだ」と。確かに、ドリヤスさんが描くのは「ゲゲゲの鬼太郎」で知られる水木しげるさん(2015年死去、享年93)のキャラクターに似ている。ただ、ドリヤスさんは水木さんの下でアシスタントなどとして修業した経験は一切ない。

 「アマチュアの時から、このタッチでやって来ました。水木先生のキャラクターには独特の空気感がある。絵柄として親しみを持てるし、すっとぼけている感じでありながら、作品の中では鋭い視点で、結構シビアなことを言っていたりするんですが、そこが好きなんです」

 とはいえ、熱狂的な水木ファンからは批判などはないのだろうか。

 「今もありますね。でも、私以外にも他の漫画家さんのタッチをまねて描いているという人もいますし。私の絵や作品を面白がってくれる人はいますし、何より私自身が水木先生を好きで尊敬しているからこそ、やっていることですから。失礼なことには絶対にならないようにと、自分の中で線引きしています」

 ◆ドリヤス工場(どりやすこうじょう)本名非公表。東京都出身。同人活動を行いながら、2005年から漫画家として活動。人気漫画やアニメのパロディー作品を数多く手掛ける。「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」シリーズは3作計50万部を突破するベストセラーに。現在、ウェブ漫画サイト「トーチweb」でシリーズ第4弾「評判すぎる―」を連載中。他の主な作品に「オモテナシ生徒会」「異世界もう帰りたい」など。

 ◆タイトルの答え 〈1〉火宅の人〈2〉桜の森の満開の下〈3〉痴人の愛〈4〉一握の砂〈5〉樅の木は残った〈6〉あ・うん〈7〉高野聖〈8〉夜明け前〈9〉みだれ髪〈10〉恩讐の彼方に

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