地元凱旋の藤井聡太七段にエール 幼少期の恩師・文本さん「負けたら涙が枯れるまで泣いてました」

教室で将棋を指す藤井聡太少年
教室で将棋を指す藤井聡太少年
文本力雄さん
文本力雄さん

 将棋の藤井聡太七段(17)が木村一基王位(47)に挑戦する第61期王位戦7番勝負第1局は1日、愛知県豊橋市で2日制対局の1日目を終えた。同県瀬戸市在住の藤井七段にとって、タイトル戦挑戦者としての地元凱旋を果たした開幕局。2日の決着に向けて県内の期待も高まる中、幼い頃の藤井七段に指導した「ふみもと将棋教室」(瀬戸市)の文本力雄さん(65)は教え子の晴れ姿を万感の思いで見つめている。

 

 幼稚園児の頃から藤井を知る文本さんは、微かな変化を感じ取っていた。「(オンラインで行われた)前夜祭の様子を見ていても、タイトル戦を愛知で指すことがとってもうれしそうな様子でしたね」。地元での大舞台に挑戦者として登場し、故郷に錦を飾った姿に思わず頬を緩ませる。

 「女の子みたいで、ぷっくりしてて、かわいい」5歳の男の子が教室にやって来たのは12年前のこと。「ピンクのほっぺたで、ニコニコしてて。今、おでこが見えない髪形をしていますけど、いかにも前頭葉が発達してそうな、まるっとしたおでこなんです。いつも元気に『こんにちは~!』って入ってきましたよ。本当に将棋が好きで好きでたまらない子でした。将棋を指して疲れた様子なんて見せたことないですよ」。タイトル挑戦者になった12年後の今、超過密日程による心身の疲労を懸念する声が上がっているが「いやいや、たくさん将棋を指せてうれしくてしょうがないだけだと思いますよ。しかも相手はものすごく強い棋士ばかり。充実感しかないと思います」と笑う。

 6畳間に所狭しと最大8人が集った教室。藤井は週4回の頻度を皆勤賞で通い、定跡の勉強、詰将棋、そして対局することに夢中だった。5歳からの最初の1年で20級から4級へと16階級もクリアする教室新記録を樹立。小学1年で21手詰めの詰将棋をスラスラ解いていた。「こんな子、見たことないってすぐに思いました。読む力、記憶力、集中力。全部すごいんです」。詰将棋のプリントで渡すと、すぐに全問正解で戻ってきて「先生! 他に問題はないんですか!?」と瞳と輝かせた。

 1泊2日の将棋合宿が楽しみで、必ず言うのは「今度は2泊3日でお願いします!」。トランプの「大富豪」だって超得意。「明日があるさ」の替え歌を歌っても、プロレス遊びも真剣だった。

 将棋が大好きだからこそ、負ける度に泣いた。「うめき声を出しながら、涙が枯れるまで泣いてました。いつも誰かが『ソータが泣いてる!』って言うと『気が済むまで泣かせてあげて』って。で、泣きやむとケロッとしてるんです」

 確信した才能は、棋士になれるかどうかというレベルではなかった。「将来、名人になる子だと思うと周りに言うと、みんなせせら笑っていました。でも、なれる子だと思ったんです」

 ある時、藤井が「名人になりたいです」と夢を語った時、あえて「そんなの、100人いたら100人が言うよ。面白くないよ」と伝えた。数か月後、天才少年として地元のラジオ番組に出演した藤井は、目標を「名人を超えたいです」と言い換えた。「なる」のではなく「超える」。小さな子供が導き出した答えだった。

 そんな藤井でも、なかなか勝てなかった4学年上の先輩がいた。「小林和貴君という子なんですけど。コテンパンに負けたりしていた。ずっと聡太が目標にしてて、聡太を育てた子なんです」。17歳で迎えた2020年度王位戦7番勝負。「カズキ」という名前の人に再び挑むのは、藤井聡太に与えられた宿命だったのかもしれない。(北野 新太)

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