【五輪の直】アーチェリー・山本博、57歳現役の秘訣は「目標」と「目的」の捉え方

アーチェリー・山本博
アーチェリー・山本博

 プロ野球が3か月遅れで開幕するなど、スポーツ界も少しずつ日常を取り戻そうと動き始めた。ここに至るまで多くのアスリートが長期間、練習もできず、先が見えない焦りや不安と闘っていた。競技生活46年を迎えたアーチェリー男子で2004年アテネ五輪銀メダルの山本博(57)=日体大教=にとっても当然、経験したことのない時間だ。だが、その受け止め方に、大ベテランの心の強さが見えた。

 6月14日、横浜市の記録会で今季初戦を迎えたが、当初は13試合目の予定だった。カレンダーに中止の×印をつける度に気持ちが沈んだ。練習も1か月以上できず、右肩を手術した4年前と比べても精神的なダメージは大きかったが、苦しい時間を競技への情熱を再確認する機会に変えた。

 5月中旬、大学で講義の準備と並行し、限られた時間の中で練習を始めた。この数十年、学生の指導などで常に複数人で過ごした練習場で一人、弓を引く。全体練習後、黙々と居残り練習に取り組んだ学生時代の記憶がよみがえった。「こうやってスコアに一喜一憂して、自分にコーチングしながらやっていた。若かりし頃に戻ったな」。試合前日は入念に荷造りし、寝付けないほど興奮。初心に帰り、「僕が引退しない理由が分かった」と実感した。

 五輪に5度出場した山本先生だが、6度は代表を逃している。東京五輪も出場はかなわなかったが、すぐに24年パリ五輪への挑戦を表明した。コロナ禍も含め、挫折や困難に直面しても前を向けるのはなぜか。その一つの理由が「目標」と「目的」の捉え方だという。

 以前、五輪で勝つことを目的とした時期があった。だが、出場を逃した瞬間に「何も行動できなくなってしまった。目的を失ったから」と反省した。今は「勝つことが目標なら、目的は何か。アーチェリーが好きで、上手になることがもっと好き。上手になることは五輪でなくてもできる」。先行きが不透明で、目標の設定が難しい現在の状況でも、目的が定まっていれば前に進める。山本先生の言葉はスポーツにも仕事にも通じると感じさせられた。

 ◆林 直史(はやし・なおふみ)1984年8月22日、愛知県生まれ。35歳。明大から2007年入社。プロ野球、サッカーなどを経て17年から五輪競技担当。18年平昌五輪を取材。柔道、卓球、スピードスケートなどを担当。

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