コロナに負けるな! さだまさし「合唱は絶対に消えない」―コーラス専用マスクも開発進む

ステージでも歌える「合唱用マスク」を開発中の東京混声合唱団メンバー(東京混声合唱団提供写真)
ステージでも歌える「合唱用マスク」を開発中の東京混声合唱団メンバー(東京混声合唱団提供写真)

 激動の2020年が半分過ぎた。新型コロナウイルスの影響は想像以上に広範囲に及んだが、学生の部活動で言えば、最も注目されたのは高校野球の春夏の甲子園大会中止。それでも、8月にはセンバツ出場32校による「甲子園高校野球交流試合」が開催され、今月からは各都道府県で独自の代替地区大会が始まる。

 「…うらやましい!」と思わずにいられない。記者の中学3年の娘が全国大会を目指していたのは「合唱」。コロナ感染防止で避けるべき「密」の要素は野球よりも多い。騒動が本格化するころ、コーラスに打ち込む小中高生のひのき舞台「全日本合唱コンクール」「Nコン」に向け、レッスンを重ねていたが、緊急事態宣言発令(4月7日)で練習はストップ。2大大会も5月中に中止が決まった。部活の最上級生でパートリーダーを任されていた娘は、中学最後の年に取り組んだ課題曲・自由曲をコンクールで披露することはなくなった。

 現在は3年生引退公演開催を目標に、先月11日から練習を再開したが、狭い教室を窓を全開にして部員が1メートルほど間隔を取って歌っているという。互いの口の動きをチェックするため、向かい合って合唱する練習は飛沫の観点からできず、教室の壁に歌声をぶつけているとか。別の学校では、背中合わせに円になり、360度に声を発する練習もあるとか。マスクも着用する時もあるが「言葉がはっきり聞こえへんし、ハーモニーが感じられへん」(娘)と、外して練習することも少なくないらしい。

 新1年生の入部見学は、つい最近あったばかり。大会のない現状で、いったい何人が入部してくれるのか、父兄も心配だ。

 全日本合唱連盟の梅田昌和事務局長によると、いわゆる「ママさんコーラス」など、公民館などを借りて練習している合唱団も「合唱には貸せない」と断られるケースが多いそうで、合唱が危機的状況にあることは間違いない。

 同連盟では先月29日に「合唱活動における感染拡大のガイドライン」を発表した。内容は多岐に渡るが、ポイントをまとめると、合唱利用施設では、舞台上の収容定員をおおむね50%以下の人数に。窓の開放が可能、もしくは機械換気で必要換気量が確保できること。練習時は団員の距離は前後2メートル以上、左右1メートル以上を確保し、マスクの着用を推奨する…などなど。制限は多いが、娘の部活動とさほど変わらないようだ。

 ガイドライン発表前に、数団体に電話取材した。アマチュアの合唱団とセッションしている大阪フィルハーモニー交響楽団では、合唱団の練習が再開できず、団員募集も見送っている状態だが「あのマスクがあれば、なんとかなるのかも…」と教えてくれた。東京混声合唱団が、プロの“使命感”から開発している「合唱用マスク」だ。

 歌う際には息を吸い込む必要があり口元が密閉された通常のマスクは使えず、独自で開発を進めている。同合唱団の事務局長・村上満志さんは「ある時期から合唱は危険行為のように言われ、マスクしかないかなと。通常のマスクだと唇が触れるので、6月始めから団員の意見も取り入れ、試作品を作りました。大変歌いやすく、息苦しくもない」と説明。提供をいただいた写真を見ると、ジョギングで使う「バフ」に似た感じだが「音がちゃんと聞こえるか、音響分析してもらっている」と説明。他団体から注目されているように「市販する予定はありますか」との問い合わせもあるという。ガイドラインによると、飛沫のリスクのほとんどは正面側で、横へのリスクはかなり低いとのことで、有効な手段のようだ。

 「アマチュアの方も(動向を)見てくださるという意識はある。今、合唱ができなくて困っている人たちのお手伝いになれば」と村上事務局長。今月31日に東京芸術劇場コンサートホールで観客を入れて開催予定の「コン・コン・コンサート2020」ではマスク着用で演奏。昨年までの「Nコン」の中高生の課題曲を中心に構成し、ネットで無料配信も行う。今後の合唱のあり方を提示するステージになりそうで、全国の合唱団が勇気づけられそうだ。

 先日、自曲が合唱でも歌われているシンガー・ソングライターのさだまさし(68)にインタビューする機会に恵まれた。さだの長男・佐田大陸(35)が所属する音楽ユニット3人組「TSUKEMEN」は、各地の公演で合唱サークルとの共演もしている。

 さだは「合唱は密になりますからね。つらいよねえ…」と慮りながら「合唱は消えないと思います。絶対に消えない。道具がいらない。声があれば歌えるんですから」と“合唱は永遠”を力説。練習方法も「ノンビブラートで伸びやかな発声をする練習は一人でもできます。今はスマートフォンもありますから、自分で“合唱”すればいい。自分で多重録音して、コーラスを作っていくと、ここで乱れているのはなぜか、声が寄れているとか、ビブラートに逃げたとかが分かってくると、美しい歌い方とっていうのはどういうことなのか。自分の歌を重ねることでも勉強できますから。それをなさるといい」と教えてくれた。ガイドラインでも、発声の理論や詩の解釈・分析、他の合唱団の録音・映像鑑賞などに加え、インタネットを活用した「新しい練習形態」も推奨している。

 記者が担当している宝塚歌劇は17日に公演が再開されるが、コーラスも歌劇の魅力のひとつ。オーケストラピットの生演奏が見送られたように、コーラスも演出上で抑えめになるかもしれないが、来年に予定されている雪組、月組のトップコンビのサヨナラ公演でトップを送り出す全員斉唱は、やはり期待したくなる場面だ。「いつか元通りに」―事態の収束とコーラス界の踏ん張りを祈りたい。(記者コラム・筒井 政也)

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