富川悠太アナの「報ステ」週2のみ出演は“懲罰”なのか…テレ朝幹部の返答に見えたキャスターとしての未来

新型コロナウイルスに感染したものの復帰。現在、「報道ステーション」の木曜と金曜のキャスターを務める富川悠太アナウンサー
新型コロナウイルスに感染したものの復帰。現在、「報道ステーション」の木曜と金曜のキャスターを務める富川悠太アナウンサー

 ずっと胸につかえていた聞きたかったことが、やっと聞けた。すっきりした。

 6月30日、東京・六本木のテレビ朝日で行われた亀山慶二社長・COO(61)の定例会見。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、4、5月と2か月にわたって開催を自粛。3月31日以来3か月ぶりの記者を招いての会見となった。

  • 新型コロナ対策の一環として、放送、制作現場の2班態勢を導入したテレビ朝日
  • 新型コロナ対策の一環として、放送、制作現場の2班態勢を導入したテレビ朝日

 同局は4月に看板ニュース番組「報道ステーション」(月~金曜・後9時54分)キャスターの富川悠太アナウンサー(43)始め制作スタッフ5人の感染が発覚。同月17、19日には本社の全館消毒を行い、以降も3密を避け、スタッフは原則、自宅作業。制作スタッフと報道スタッフを分けるなどの対策が取られていた。

 緊急事態宣言の解除を受け、原則として各社記者1人限定で開催された会見だけに、この日の同局の受け入れ態勢も慎重そのもの。受け付けやマイクの受け渡し役の広報部員もほとんどがフェイスシールドを着用。記者にも検温、消毒を徹底した上、会見場で前列に並ぶ亀山社長以下5人の幹部も大きなアクリル板の向こうから質問に答える“厳戒会見”となった。

 富川アナに関する質問に亀山社長が直接答える“騒動”後初の機会となったため、当然のように「社内で『報道ステーション』のスタッフなど5人の感染者が出ましたが?」という質問が出た。

 亀山社長は「感染が疑われる症状が出てからの富川アナの出演に関しては重く受け止めています。出演者の体調(管理)など至らない点があったと思っています。テレビ局としては放送対応を優先しました。会見も開きませんでしたが、書面で説明させていただきました」と率直に謝罪した。

 「富川アナ」という名前を亀山社長が口にした瞬間、私の胸にも、どうしても聞きたい質問がせり上がってきた。

 富川アナは4月11日にコロナ感染が発覚。数日前から発熱やたんが絡む症状があったものの、平熱に戻ったため、4月9日までは番組に出演していた。キャスターとして連日、感染への注意を呼びかけていた立場だっただけに視聴者から多くの批判を浴びる形となってしまった。

 一部週刊誌などで親族に関するイレギュラーな報道まで乱れ飛ぶ中、富川アナは2か月の自粛生活を経て、6月4日の放送で2か月ぶりに番組に復帰した。実に56日ぶりの出演だったが、その表情は硬く、スタジオの雰囲気も重苦しかった。

 番組中盤に「私自身の感染について、感染拡大を防ぐことができなかったことについて、お伝えしてまいります」と粛々とコメント。説明の時間が設けられ、陽性が判明するまでの間、いつ、どこで何をしていたのか、社内での様子やプライベートの行動も含めて、こと細かに説明がなされた。

 さらに感染発覚後に入院先の病院で同アナが「自撮りリポート」をする映像も放送。最後に3つの反省点を大きく掲げたパネルを横に「視聴者の皆さまからは多くのお叱りの言葉をいただきました。真摯に受け止めています」と謝罪し、深く頭を下げた。説明と謝罪の時間は実に15分間に及んだ。

 そして、復帰後の富川アナの“立ち位置”も明確に変わった。メインキャスターとして月曜から木曜まで出演していたが、月曜から水曜はフリーの徳永有美アナ(44)と小木逸平アナ(46)が担当。木曜と金曜が富川アナと森川夕貴アナ(26)という布陣に変更された。

 キャスターとしての出演が週2日となった同アナは、2016年4月のメインキャスター就任前にこなしていた現場で取材するフィールドキャスターも生き生きとこなしているようにも見える。

 しかし、私には初代メインキャスターの古舘伊知郎氏(65)の後を継ぎ、“局の顔”になりつつあった同アナのキャスターとしての出演日の削減と1か月前の15分間の謝罪劇が、どうしても心に引っかかっていたから聞いてみた。

 「富川アナはあくまで病気に罹患(りかん)しただけ。帯でキャスターをしていた人が、あたかも悪いかのように出演日が減ったりするのは、どうなのか?」―。

 同局の報道の責任者としてマイクを持った篠塚浩常務は「まず、富川は帯の出演ではなく、月~木曜のキャスターを務めていました」と私の誤りを指摘した上で「今回、こういう形にしているのには、3点ありまして…」と話し始めた。

 「富川が長期の入院をしていたという体調面が一つ。もう一つは(局全体で)合わせて5名の感染者を出してしまったことです。もう、こういうことがないようにと出演者に関して2班態勢を敷きたいというのが二つ目。3点目ですが、そもそもは感染の予防を訴えていたキャスターが(感染ということに)なってしまったという点からの富川本人の希望もあって、もう1回、ニュースの初心からと。彼の原点ですね。12年間、『報道ステーション』のリポーターをやっていたので、初心に戻り、そこから見つめてみたいということでリポーターから起用してみたいと。この3点からこういう形にさせていただいています」と丁寧に説明してくれた。

 そう、確かに感染が疑われた後も同局に出勤。出演を続けた富川アナには大きな落ち度がある。一度はキャスター失格の烙印を押されても仕方ないとも思う。

 それでも、どんな現場にも飛び込み、取材に飛び回っていたフィールドキャスターという原点に返って、一からやり直そうとする、その姿勢に私は心から共感する。なぜなら、往年の大ヒット映画のセリフではないが、事件は常に現場で起きているから。私自身の経験からも報じるためには、そして、熱い記事を書くためには、現場がすべてだ。現場の空気を吸い、当事者の声を聞かないことには何も始まらないのは事実だから。

 現場で育った富川アナが現場からやり直し、どんな熱いキャスターとなって帰ってくるのか。新型コロナ余波の中、すっかりギスギスした世の中で、そんなやり直しと再生の物語があってもいいのではないかと、私は思う。(記者コラム・中村 健吾)

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