【2002年6月30日】ロベルト・カルロスからの誘い 日韓W杯決勝・ブラジル優勝の夜 

優勝して喜ぶブラジル代表のリバウド(左)とロナウド
優勝して喜ぶブラジル代表のリバウド(左)とロナウド

 日韓W杯決勝でブラジルがドイツを破って優勝した夜、全ての作業を終えた午前2時頃、編集局でささやかな打ち上げが催された。

 4月に入社したばかりの新人記者だった私も恐る恐る缶ビールに口をつけ、W杯取材班の末席に加わって走り回った約2か月間を思い返していた。ベッカムヘアに大五郎ヘア…、スタジアムのスタンド取材で「代表漏れした中村俊輔は必要だったか否か 100人アンケート」とかやったなあ。7割以上は「必要」でしたよ、トルシエ監督…。

 最終版の新聞が刷り上がり、ぼちぼち帰宅か…というタイミングで突然、デスクから指示を受けた。「ブラジルの選手たちが千駄ヶ谷のブラジル料理屋でドンチャン騒ぎしてるみたいだから、見てきてよ」

 先輩記者とともにタクシーを飛ばして現場に急行すると、いるわいるわのセレソン祭が展開されていた。店先に立っていると、ロナウドやリバウド、ロナウジーニョ、カフー…ら、さっきまで決勝のピッチで躍動していた世界最強イレブンが、夜風に当たろうと、次々に外へ出て来る。店内の熱気が高まっているのが、容易に察しが付いた。

 母国の誰かに国際電話で優勝の喜びを伝えているのか、携帯電話(まだスマートフォンは存在していなかった)で超ハイテンションにしゃべりまくっていたのはロベルト・カルロス。我々の姿を発見するや、ポルトガル語で何事かをシャウトし、店内に招き入れるようなジェスチャーをしてくれた。表情と声から推察すると「おい、お前ら、なんてシケた顔してやがんだ! 店に入れよ! 踊りまくろうぜ! オレが許す!」みたいな意味だったと思われる。

 ためらいがちに、そ~っとドアの隙間から店内の様子をのぞき込むと、まさに「リオのカーニバル緊急増刊号」的なカオスが展開されていた。

 数時間前にドイツの守護神オリバー・カーンから2ゴールを奪い、優勝と得点王をかっさらった大五郎ヘアのロナウド。流れるサルサのリズムに合わせながら、ブラジル人とおぼしき美女たちと肩を組み、歌い、踊りまくっていた。その後、日本代表監督に就任するジーコもいて、ワッショイワッショイ!と盛り上がっている。

 日本人の関係者にひととおり取材を終えた後、一緒に踊る勇気は持ち合わせていなかったが、先輩からの悪魔のささやきには胸を躍らせた。「サインもらっちゃう?」。異存はない。刷り上がった新聞を持ってきていた我々が「ココにお願いできたら…」と指を指してロベカルに手渡すと、我らスポーツ報知は瞬く間に店内を回覧していった。

  • 優勝当夜のセレソンのサインが躍る日韓W杯決勝紙面
  • 優勝当夜のセレソンのサインが躍る日韓W杯決勝紙面

 数分後に戻ってきたロベカルが世界一のスマイルを浮かべながら差し出した新聞の1面と最終面は、セレソンのサインで埋め尽くされていた。ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ、カフー、これ誰のかな? これも読めないぞ…。これはロベカルだ…。ああ、神よ…。

 18年後、あの新聞は今も我が家の物置の奥に眠っている。あのブラジル料理店はもうない。(北野 新太)

優勝して喜ぶブラジル代表のリバウド(左)とロナウド
優勝当夜のセレソンのサインが躍る日韓W杯決勝紙面
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