藤井聡太七段の強さを里見香奈女流名人が見た。変わらない終盤の鋭さと変わった序中盤の手厚さ

渡辺明棋聖(左)と感想戦で対局を振り返る藤井聡太七段(代表撮影・日本将棋連盟)
渡辺明棋聖(左)と感想戦で対局を振り返る藤井聡太七段(代表撮影・日本将棋連盟)
藤井将棋の強さを語った里見香奈女流名人
藤井将棋の強さを語った里見香奈女流名人
2018年の棋聖戦予選で藤井七段と対戦した里見香奈女流名人
2018年の棋聖戦予選で藤井七段と対戦した里見香奈女流名人

 一気にタイトル奪取に王手をかけた将棋の藤井聡太七段(17)の棋聖戦第2局の棋譜を里見香奈女流名人(28)=清麗、女流王位、倉敷藤花=が分析。過去、棋士養成機関「奨励会」や公式戦で対戦経験がある女流第一人者は、藤井七段の強さを「鋭い将棋」から「手厚い将棋」への変化に見ている。

 驚いた組み立てがありました。中盤の攻防で藤井先生が指した△3一銀は、攻めの要を最下段に据えて自玉の受けに使う一手。相手に攻めさせる意外な手なので、読み切っていないと怖くて指せません。相手が渡辺先生でも常に自分のペースで指していたのが印象に残りました。

 また、もう少し前の△6五桂の局面で、中盤ながら持ち時間の残り2時間17分のうち58分を使って指されたことに今の藤井先生の特徴を感じます。その後も小刻みに時間を使って、かなり早い段階で残り十数分になっていましたが、それから全くミスがなかったように思います。

 最近の藤井先生は序中盤から惜しみなく時間を使っておられます。現代将棋には、序盤の定跡形はどんどん飛ばして指して、終盤に時間を余しておこうという考えがあります。持ち時間が少なくなった状態で終盤を迎えるのは、間違えてしまう怖さを抱えます。でも、藤井先生は怖さなんて全く感じさせないまま終盤を正確に指し続けている。読み切っていれば、(一分将棋に突入して)秒を読まれても迷いなく踏み込んでいるように見えます。そういう先生はちょっと他にはいないように感じます。

 デビューされた後、29連勝の史上最多記録を樹立された頃は終盤のキレ味が鋭く、一発で仕留めるような将棋を指されていた印象でした。ところが、今は絶対に間違えないために手厚く指す将棋に移行している印象があります。

 私が一昨年の棋聖戦1次予選で藤井先生に教わった(注・上位者と対戦することを下位者は「教わる」と表現する)時も、持ち時間各1時間の将棋だったのですが、藤井先生は中盤で一分将棋に入っておられました。でも…ずっと最善手を続けて、負かされてしまいました。「鋭さ」に「手厚さ」を兼ね備えているのが今の藤井先生だと思います。

 落ち着いた立ち居振る舞いにも驚きます。私が初めてタイトル戦に出させていただいた時(2008年度・倉敷藤花戦)は16歳でしたけど、ただ「将棋を指したい」「タイトルを取りたい」というだけで何も考えていませんでしたから。だから、今の藤井先生の姿はちょっと考えられません。

 ◆里見 香奈(さとみ・かな)1992年3月2日、島根県出雲市生まれ。28歳。森鶏二九段門下。6歳で将棋を始め、2004年に女流棋士に。08年の倉敷藤花戦で初タイトル。タイトル獲得通算タイトル40期は歴代2位。11年から棋士養成機関「奨励会」に在籍して女性初の三段となるが、18年に年齢制限で退会。今月17日に女流王位を連覇。異名は「出雲のイナズマ」。

渡辺明棋聖(左)と感想戦で対局を振り返る藤井聡太七段(代表撮影・日本将棋連盟)
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