藤井聡太七段、17歳11か月最年少タイトルに王手 AI超えの完璧手で渡辺3冠に開幕連勝

スポーツ報知
感想戦で激闘を振り返る藤井七段

◆第91期将棋・棋聖戦(第2局、28日・東京・将棋会館)

 後手の挑戦者・藤井聡太七段(17)が90手で渡辺明棋聖(36)=棋王、王将=に2連勝し、史上最年少でのタイトル獲得に王手をかけた。今月9局目の過密日程、不慣れな和服での初タイトル戦、「殺害予告電話」発覚など逆風要素が重なるなか、AIを超える完璧な指し手を続け、昨年度の最優秀棋士賞受賞棋士に完勝した。5番勝負での開幕2連勝者のタイトル獲得率は84・8%。第3局(7月9日)に勝てば、屋敷伸之九段の18歳6か月を更新する17歳11か月のタイトルホルダーとなる。

 漆黒の羽織を脱いで濃紺の着物姿になった藤井はグイッと盤上に覆いかぶさる。いつもより深い前傾姿勢は新しい戦闘服の美しさを際立たせた。最年少タイトルに王手をかけた勝利後、襟を直して臨んだ取材では「ここまでうまく指せているので、次戦も気負わずに臨みたいです」と静かに言った。

 いったい誰が、どんな将棋を指せば藤井に勝てるのか。単純な疑問が浮かぶ完勝譜だった。先手の渡辺は羽生善治九段(49)らと数々の名局を生んだ「矢倉」に組む。第1局で藤井が選んだ戦いに再び持ち込み、自らの土俵に誘う展開になるかと思われたが、藤井の大胆な構想が光り輝く。守備駒の要を進撃させる△5四金。「積極的に動いて踏み込んでいきました」。AIの新常識ともいえる選択で中央を制圧し、渡辺の銀を後退させてペースを握った。中盤で持ち時間を惜しみなく投入するスタイルを本局でも踏襲。攻撃の要を受けに使う△3一銀は当初、AIが疑問手と断じたが、指し進めると「最善」と評価を変えた絶妙手だった。終盤では渡辺のミスに乗じて差を広げた。不利といわれる後手番で王手すら許さずに投了に追い込んだ。

 盤外での不快な出来事にも動じなかった。24日、地元の愛知県瀬戸市役所に藤井への殺害予告があった影響で将棋会館の玄関に警備員が配され、階段についたてが設置されるなどの対応が取られた。普通の10代なら動揺してもおかしくないが、17歳の指し手や様子に影響は見受けられなかった。

 準備期間のない第1局では回避した和服に袖を通し、晴れ舞台を飾った。師匠の杉本昌隆八段(51)が京都の呉服店であつらえ、贈った逸品。まだ着慣れないはずだが、着手する際の所作は経験を重ねた棋士のように自然だった。「和服は長時間(の将棋)では初めてで、どんな感じか分からないところはあったんですけど、実際に着てみると思ったより快適というか…」。まさかの「快適」。将棋に関することの全てに弱点がないのかもしれない。

 今から10年前。同じように黒い和服を着て戦い、大号泣したことがある。小2で出場した2010年の「テーブルマークこども大会」東海大会決勝。黒の羽織姿の藤井は、相手の角の利きを見落とす初歩的なミスをして惨敗。局後の表彰式では関係者の慰めにも耳を貸さず泣き続けた。当時のことを聞いた時、藤井は言った。「挫折というのはおこがましいですけど、今思うといい経験でした」

 あの涙を糧にした当時7歳の少年の前に、頂点が見えてきた。「5番勝負は5局で一つの勝負。次も今までと変わらない気持ちで臨めたら」。来月19日に18歳になる棋士は、将棋史の節目の前にも立っている。(北野 新太)

 ◆棋聖戦(きせいせん)1962年度に創設された将棋8大タイトル戦のひとつ。棋聖は将棋や囲碁に秀でた才能を持つ人を指す尊称。それまでのタイトル戦は全て2日制だったのに対し、将棋界初の1日制タイトル戦として誕生した。若手が初タイトルを奪取するケースが多く、67年度に故・山田道美九段が故・大山康晴十五世名人を撃破。96年度には7冠を独占していた羽生善治九段の牙城を三浦弘行九段が崩した。5期獲得すると与えられる「永世棋聖」は大山康晴、中原誠、米長邦雄。資格保持者は羽生善治、佐藤康光。

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