永田裕志、テンコジの第三世代が新日本最強トーナメントで見せたジレンマといきがり…金曜8時のプロレスコラム

場外でどつき合う永田裕志(左)と鈴木みのる(新日本プロレス提供)
場外でどつき合う永田裕志(左)と鈴木みのる(新日本プロレス提供)

 新日本プロレスの史上最多32選手参加シングル最強決定トーナメント「NEW JAPAN CUP2020」が、会場非公表、無観客試合ながら熱戦を繰り広げている。前週のこのコラムで永田裕志と鈴木みのるの52歳対決を「永田裕志と鈴木みのる、東京ドームを超えた無観客打撃音合戦」と書いた所、大きな反響を頂いた。永田本人がリツイートして拡散してくれたことは何よりも励みになった。ということで、今週もその続報をお届けしたい。

 17日の永田VS鈴木の1回戦は、お互いにエルボー、張り手の応酬でともに自分の年齢以上の殴打を繰り広げた末、永田が20分35秒、バックドロップホールドで鈴木を仕留め、オカダ・カズチカ(32)との2回戦へ駒を進めた。2人による最後の戦いのつもりで書いたが、5日後の22日に、両雄が8人タッグマッチで激突した。

 永田と鈴木は、場外で同じくエルボー合戦を繰り広げたが、テレビ桟敷の観衆の目となるテレビカメラは、リング上のエル・デスペラードと辻陽太を追い続けた(10分33秒、デスペラードがピンチェ・ロコからの体固めで勝利)。バチンという音は聞こえていたが、17日のシングルマッチのような永田と鈴木の攻防は、視聴者にはすべて伝わらなかった。試合後に鈴木が映し出された時には、口から血が出ており、ファンから見えない所でも両雄がぶちかまし合ったことがうかがえた。

 大会終了後に新日本プロレス広報宣伝部から送られてきた提供写真を見て救われた気がした。場外での両雄の取っ組み合いが、しっかりと収められていたのだ(写真参照)。バックステージで鈴木は引き続きノーコメント。永田のコメントはこうだ。

 「今日はてっきり、『NEW JAPAN CUP』2回戦の前哨戦かなと思ったら、鈴木軍と。まぁいいじゃない。鈴木がまっすぐ俺に突っかかってきましたよ。完全にヤツの目に俺がとまってるなと。17日の試合で、全てが変わった。アイツの目線が俺に、一本に集中してる。これは、ある意味喜びでもありますけどね」

 永田は天山広吉(49)、小島聡(49)、中西学氏(53)とともに新日本プロレスの「第三世代」と呼ばれてきた。創始者のアントニオ猪木は別格として、藤波辰爾、長州力の「レジェンド」世代、武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の「闘魂三銃士」世代に次ぐ、第三の世代というわけだ。新型コロナウイルスの感染拡大前だった今年2月22日の東京・後楽園ホール大会で中西氏が引退したことで、その一角が崩れた。

 53大会を中止にして、110日ぶりの試合再開となった「NEW JAPAN CUP2020」。外国人選手が一部しか参加できない状況下で、永田、天山、小島にそろって出番が回ってきたのだった。22日の試合前に、新日本プロレス・菅林直樹会長がリングに上がり、今年4月からBS朝日で毎週金曜午後8時から1時間枠で放送されている「ワールドプロレスリング・リターンズ」で、7月3日の「NEW JAPAN CUP」準決勝2試合が生中継されることが発表された。

 ゴールデンタイムである「金曜夜8時」の生中継は1986年9月以来、34年ぶりとなる。「金曜夜8時」枠は、藤波・長州のレジェンド世代まで。闘魂三銃士は若手時代で、第三世代は入門すらしていなかった。今年の「NEW JAPAN CUP」その「金曜夜8時」切符をかけたトーナメントでもあったのだ。

 永田が2回戦進出を決めた後、天山、小島のテンコジは、23日に1回戦に出場した。しかしながら、天山はYOSHI‐HASHI(37)に、17分35秒、バタフライロックで敗れ、小島は“キング・オブ・ダークネス”EVIL(33)に20分08秒、EVILからの片エビ固めで屈し、そろって1回戦で敗退した。

 小島は長いコメントを一気にまくしたてた。第三世代の現在地を的確に語っているので、抜粋ながら長文で紹介しよう。

 「負けたらダメなんだ。俺のキャリアだったらもう、負けていくと、どんどんどんどん、忘れ去られていくだけなんだ。俺みたいな、キャリアの長いベテランレスラーは、負ければ負けるだけ、どんどんどんどん、実戦から遠のいていく。だから絶対に、勝たなきゃいけなかった。どんどんどんどん、負けていくことで、需要がなくなっていく。いい試合して『次も頑張ってくれ』っていう、そういうレスラーじゃもうないんだ」

 「だから、絶対に今日は勝たなきゃいけなかった。とても、とても悔しい。毎回、負けたらもう、目の前真っ暗だよ。次どうしようって、俺みたいなキャリアの人間は、明日どうすりゃいいんだって、そういう風になる。だけど、また体が動くんであれば、プロレスができるんであれば、またそれを乗り越えて、違う道を模索したいと思う。ただ、プロレスを続けていくことだけは、とても幸せに思ってるから。この自分のやりたいこと、ずーっと、コロナウイルスでできなかったプロレスを、今精いっぱい、自分のやれる試合を、やっていこうと思います」

 この日は中西氏が会場に駆けつけ、解説席で同世代の激闘を見届けた。天山は「やっぱり中西という偉大な第三世代の一人が抜けて、永田、小島、天山、残ったもんが中西の分まで面白いとこ見せなアカン、勢い見せなアカン。まあ彼の引退がね、一つの刺激じゃないけど俺らもっともっと奮起せなアカンなって思ってますから。また来年の『NEW JAPAN CUP』エントリーされたら行きまっせ。はい。期待して下さい」と次を見据えた。

 そして永田は24日に20歳下のオカダとの2回戦に挑んだが、20分14秒、変型コブラクラッチで敗れ、準々決勝進出はならなかった。「クソッ! あー、負けた! やられたベイベー!」と叫んだ。第三世代のジレンマといきがり。52歳でその両方を感じられることを同世代としてうらやましく思う。(酒井 隆之)

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