野球を止めない。スポーツを、青春を止めない…対外試合解禁 亜大が踏み出した大いなる一歩

フェースシールドを着用してグラウンド整備を行う亜大の控え部員たち
フェースシールドを着用してグラウンド整備を行う亜大の控え部員たち
試合前に新型コロナウイルスの抗体検査を受けた亜大・青山選手
試合前に新型コロナウイルスの抗体検査を受けた亜大・青山選手
取材する報道陣にもフェースシールドが配布された
取材する報道陣にもフェースシールドが配布された

 ネット裏からフェースシールド越しに白球の行方を見つめる。しばらく耳にしていなかった、懐かしいナマの音だ。バットとボールがぶつかる「野球の声」に、自然と私の心は躍った。

 6月14日、東京・日の出町の亜大グラウンド。亜大が約3か月ぶりの対外試合に臨んだ。社会人の名門・NTT東日本との親善試合。両チームのベンチから響く野太い声には、野球をやれる喜びがあふれていた。

 大いなる一歩に思えた。

 新型コロナウイルスという見えない敵によって、首都圏のアマチュア球界では対外試合の実施が困難になった。今後も感染のリスクは決してゼロにはならない。それでも、学生たちにとってスポーツに打ち込める時間は限られている。

 青春は短い。

 安全対策へと十分に配慮した上で、選手たちが思う存分、グラウンドでプレーできないものだろうか。

 そこで、生田勉監督が動いた。

 この日の感染防止策はこうだ。

 球場入りすると、最先端機器「AI搭載非接触型熱感知システム」で体温を測定。マスク着用も念押しされる。全選手や関係者、報道陣にも医師による抗体検査が実施され、陽性者がいないことが確認された。審判はマスク着用。グラウンドを整備する部員もフェースシールド着用が義務づけられた。集結したプロのスカウトも、フェースシールド越しに逸材たちの「いま」をチェックした。

 これらは決して最適解ではない。ウイルスと共存する中で一定の制約を課しながら、それでも球音を響かせるための「実験」であり、「たたき台」である。

 試合は亜大が1-6で敗れた。らしくないエラーもあった。当然だ。3か月、対外試合から遠ざかっていたのだ。むしろ「実戦でのミス」は今後に向けて最高の課題になる。コロナ禍で実戦の機会を失われ、ミスができない、エラーができないアマ選手たちの無念さを思う。

 試合を終え、キャプテンの矢野雅哉内野手は素直な感情を吐露した。

 「できたことに感謝です。うれしい思いがありました。思い切り声を出して、これまでため込んでいた思いを出せたと思います」

 談話をメモしながら、考えた。野球だけじゃない。この思いを、現在活動自粛を余儀なくされている学生アスリートに何とか味わってもらえないものか。

 いや。アスリートだけではなく、音楽、演劇、芸術…といった表現活動に青春を燃やす若い人々に、感じてもらえないだろうか。

 生田監督は言った。

 「経験をしたことがないことなので、正解がないと思う。いかに皆さんで協力して、リスクを下げるかが今後の課題です。何とか学生が安心してできるために、いろんな工夫をするのが今からの課題だと思うんです」

 あらゆる事態を想定し、恐れる。怖がる。その上で、現実に即した最善手を打つ。それは野球というスポーツの本質でもある。

 野球を止めない。スポーツを止めない。文化を止めない。そして、青春を止めない。

 謙虚な思いで現状と向き合いながら、それでも前に進もうとした亜大の勇気ある一歩に、拍手を送りたい。若者が奏でる球音は人々に笑顔をもたらし、元気にする力がある。(デジタル編集デスク・加藤 弘士)

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