◆第27回函館スプリントS・G3(6月21日、函館・芝1200メートル、良)
函館スプリントS・G3が21日、函館競馬場で行われ、58キロを背負った1番人気のダイアトニックが正攻法の競馬で重賞2勝目を飾った。鞍上の武豊騎手(51)=栗東・フリー=は、4年前に亡くなった父・邦彦さんの故郷で、父の日に重賞Vをささげた。
“特別な場所”で、天国の父に最高のプレゼントを届けた。武豊はターフの魔術師と言われた父邦彦さんの出身地で、父の日に重賞制覇を成し遂げた。「(父の日を)忘れてました。レース前に言われなくて良かった」と照れ笑いを浮かべながら、「そうかぁ。函館で父の日に勝てたのは良かったね」と柔和な笑みで勝利の余韻に浸っていた。
迷いはなかった。ゲートが開くとポンと前に出た。大外から勢い良くきたダイメイフジにハナを譲ったが、2番手をがっちりとキープ。直線では、激しく手が動く他馬を尻目に、軽く促した程度でグイグイと加速。逃げ馬をラスト約100メートルでかわすと、あっという間に2馬身差をつけた。
同レースを初めて制した鞍上は、「断然の1番人気だったので結果を出せてホッとした。スタートが良くてハナを切ってもいいくらいの気持ちでいって、良いポジションが取れました。かなり高いスプリント能力を秘めている」と絶賛した。
狂った歯車が再びかみ合い出した。2走前の阪急杯が斜行により2位入線も3着降着、前走の高松宮記念は逆に直線で不利を受けて3着止まり。悔しさを味わった春だったが、負けた阪急杯から従来とは違う先行策で1200メートル仕様にモデルチェンジしたことが、この日につながった。8年前に2着に敗れた父ロードカナロアの雪辱も晴らし、安田隆調教師は「いろんなうっぷんを晴らしてくれたね。父に似てきたよ」と笑った。
今後はキーンランドC(8月30日、札幌)を経てG1のスプリンターズS(10月4日、中山)に向かう予定だ。「秋は大きいところを狙っていきたい」と安田隆師。卓越したスピードを誇る偉大な父のDNAを武器に、スプリント王を目指す。(松末 守司)
◆ダイアトニック 父ロードカナロア、母トゥハーモニー(父サンデーサイレンス)。栗東・安田隆行厩舎所属の牡5歳。北海道浦河町・酒井牧場の生産。通算16戦7勝。総収得賞金は、2億5588万2000円。主な勝ち鞍は、19年スワンS・G2。馬主は(有)シルクレーシング。