ついにプレーボール!? それでもMLBを悩ます内憂外患 

 悲観、楽観の情報が入り乱れる日々とも数日以内で決別できそうだ。双方の歩み寄りがやっと具体的に明らかになり、選手会側がMLB側の提示した60試合開催に対して70試合を主張しているものの、その隔たりは10試合のところまできた。あとは、落としどころ。実際、両者は7月19日開幕の他、今季、来季限定のナ・リーグDH制採用といったルール上の変更やポストシーズンを10チームから16チームに拡大する制度変更、ユニホームに企業の広告ロゴマークを入れることを決めるなどビジネス上の合意にも達している。選手会側はコミッショナーから提示された最終の60試合案でとうとう希望通りの「日割り100パーセント」にこぎつけ、あとは試合数での妥協だ。

 流れからいえば10試合というのは絶対的に譲れないラインではない。どのような落としどころになるにしても、7月19日開幕に間に合わせるにはギリギリの時間だ。キャンプ期間は3週間。さすがに、もう待ったなしだ。

 これで決裂するようなことがあれば、MLBの将来は深い闇に包まれることになるだろう。オーナーの中にはシーズン中止を主張する人物が6人から8人いるといわれている。悲しいことだ。野球というスポーツがアメリカ社会における重要な大衆文化であることの認識が明らかに欠如しているということなのだろう。企業の社会的貢献の意味を問われ、新しい企業のあり方を模索している昨今、あまりにも時代に逆行する拝金主義的姿勢。彼らには球団を経営する資格はない。

 5月12日から正式に開始した労使協議は数日以内の合意に基づいて終了、いよいよプレーボールとなる。しかし、労使問題がひとまず片付いたからといっても、この先には課題が山積している。何よりもまず、新型コロナウイルスの脅威にどう対応していくかということだ。アメリカでは23州で感染者が増加、特にフロリダ州では18日、1日最多となる3207人を記録した。またフランチャイズのあるテキサス、アリゾナでも急増して医療機関がひっ迫した状況に追い込まれているという。

 すでにMLBは対策マニュアルを作成しているが、40人ロスター入りの選手や投手コーチに感染者が出ている。また、第2波に備えて「9月中にスケジュールを終えるのが好ましい」と、国立感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が懸念を表明していることからも、より有効な対策が求められている。

 新型コロナが最大の外患であるなら、内憂は効率化を旗印に始まったマイナーリーグとドラフトの“改革”だ。MLBを強固なものにしてきたピラミッド型の構造を選手、スタッフの大量整理することから始まっているが、果たしてスムーズに運ぶのか。目先の効率化を求めるあまり、結果的に組織を弱体化させてしまう危険性を指摘しておきたい。

 他にも、数年来進めている試合時間短縮、いわゆる時短を目指すルール変更。成果を上げているとはいえない現状で、より有効な手段を模索する必要がある。そして最大ともいえる課題、来季終了後に失効する労使協定の改定。そう、やるべきことがまさに山ほどあるのだ。それもこれも、ファン離れが深刻な状況になりつつあるからだ。球団経営の土台になる観客動員はこの4年間減少を続け、昨年はピークの2007年に比べて1試合平均で約4500人も落ち込んだ。「ニューヨークの野球ファンや選手、関係者たちからも愛された有名なスポーツバーが店じまいした。痛恨の出来事だ」

 先日こんなメールを送ってきたのはニューヨーク・タイムズ紙の名物「スポーツ・オブ・ザ・タイム」で長年健筆を振るってきたコラムニストのジョージ・ベッシ―氏。コロナ禍によって引き起こされる悲劇はどこまで続いていくのだろう。

 2020年のプレーボールが、無事にゲームセットを迎えられますように!(スポーツジャーナリスト・出村 義和)

出村 義和
 (でむら・よしかず)1971年、ドジャースタジアムでMLB初観戦。ベースボールマガジン社でアメリカ総局勤務、週刊ベースボール編集長などを務める。独立後、ニューヨークをフランチャイズに19年間MLBを中心に多岐にわたるジャンルで取材、執筆を行う。帰国後、JスポーツでMLB中継の解説者も務める。

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