【2016年6月18日】倒れるまで走った神奈川大の山藤篤司

神奈川大・山藤篤司
神奈川大・山藤篤司

 例年であれば6月下旬に全日本大学駅伝関東選考会が開催される。各校8人が2人ずつ4組に分かれ、1万メートルの合計タイムで出場権を争う(出場枠は年度によって異なる)。駅伝シーズンに先駆けて行われる初夏の“ガチンコ勝負”を取材することを毎年、楽しみにしていたが、6月20日に開催予定だった今年の全日本選考会は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった(代替の選考方法は調整中)。

 全日本選考会の1万メートルは、同じトラックレースでも記録会とは全く異なる。選手には駅伝と同等のプレッシャーがかかり、速さより強さが求められる。全日本選考会の緊張と興奮がない今、強く記憶に残る4年前の全日本選考会を紹介したい。

 2016年6月18日、さいたま市浦和駒場運動公園陸上競技場で第48回全日本大学駅伝関東選考会が開催された。前年の本戦上位6校のシード校を除き、持ちタイムで選出された20校が参加。9つの出場枠を争った。

 計4組のうち第3組が終了した時点で神奈川大は通過圏内の総合6位だった。各校の主力が集結する最終組にはエースの鈴木健吾(当時3年、現富士通)と準エースの山藤篤司(当時2年、現トヨタ自動車)が出走。2人は総合6位を守ることなく、積極果敢に留学生ランナーに食らいつき、8000メートルの時点で推定トップに浮上した。しかし、残り1周で山藤が過呼吸で倒れ、途中棄権。神奈川大はほぼ手中にしていた出場権を手放した。

 レース後、私はすぐに神奈川大陣営に走った。過呼吸に陥った山藤が大事に至らなかったことは幸いだった。大後栄治監督のコメントは印象的だった。

 「山藤を責めることはできない。あの積極性こそ、最近の神奈川大に欠けているものです。山藤の走りを見て、みんな感じることがあったと思う。チームも山藤も必ず強くなりますよ」

 大後監督の予言は当たった。翌2017年、神奈川大は全日本選考会をトップ通過し、本戦でも東海大や青学大などの強豪に競り勝ち、20年ぶりの優勝を果たした。1区4位と好走し、神奈川大に絶好の流れを引き寄せた山藤は「去年の4年生の先輩を思いながら走った」という言葉を残した。

 ちなみに山藤は愛知高3年時も倒れるまで走った経験を持つ。愛知県チームとして出場した全国都道府県対抗男子駅伝1区(7キロ)で低体温症と脱水症状を併発。気力で走り続けたが、あと一歩で中継ラインに到達するところで限界に達し、タスキは手から放り投げたような状態で離れた。結局、タスキを投げ渡したと判定され、愛知県チームは失格となった。

 「倒れるまで走ります」というセリフは取材現場でよく聞くが、本当に倒れるまで走る選手はめったにいない。倒れるまで走ることは生命の危険が伴うこともあるので、是非が問われるし、私も安易に称賛するつもりはないが、4年前のあの日、あの時の山藤のガッツは素直に称賛したい。(記者コラム・竹内 達朗)

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