【五輪の恵】土性沙羅は「ドーン」吉田沙保里さん「スパーン」

土性沙羅
土性沙羅

 土性沙羅は、吉田沙保里さんと同じ「一志ジュニア」(三重)で小学1年からレスリングを始めた。タックルを授けてくれたのは、14年3月に亡くなった吉田さんの父・栄勝さん(享年61)だった。足の踏み込む位置、手の角度などミリ単位の誤差をどなられながら、ものにした武器だ。「自分はドーン(笑い)。沙保里さんはスパーン」。4年前、音で例えてくれたことがある。

 16年リオデジャネイロ五輪69キロ級金メダリストは、18年4月に左肩の手術に踏み切った。リハビリを経てマットに戻ったものの、恐怖心を拭うことは難しかった。初動がどうしても遅れた。以前のように思い切ってタックルに飛び込めずに、もどかしい日々を過ごしてきた。「まだ違う」「何かが違う」。理想の一撃との感覚のずれを埋める作業は今も続いている。

 昨年11月には左膝を痛めた。「人生を懸けるつもりで挑んだ」という3月のプレーオフを制し、東京五輪68キロ級代表を決めた。「(レスリングの状態は)半分くらい。リオの時は本当にレスリング人生で一番調子が良かった。東京五輪でそれくらいに戻せるようにやっていきたい」。4か月後に迫っていた連覇挑戦の舞台は、2週後に1年の延期が決まった。痛めている左膝を完治させ、レスリングを磨く時間はできた。

 母・祐子さんいわく「子供の頃から家の中で絵を描くことが好きな子だった」。シャイな性格は今も変わらない。取材で多くの人に囲まれた後、「うまくしゃべることができなかった」と肩を落とすこともある。マットに上がると途端に戦士の顔になるから面白い。昨年の世界選手権は3位決定戦で敗れた。試合後の土性の表情をよく覚えている。感情を押し殺し、一点を見つめて言った。「弱い自分が情けない」。はい上がろうとする者の強さがあった。1年後の決勝戦で「ドーン」と一発、会心のタックルを決めてほしい。

 ◆高木 恵(たかぎ・めぐみ)北海道・士別市出身。1998年報知新聞社入社。紙面レイアウト担当、ゴルフ担当を経て、2015年から五輪競技を担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を取材。

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