【1998年6月14日】チケット問題とアルゼンチンの歓喜 W杯の重みを知った日本初陣

日本・アルゼンチン戦で、必死にボールを追いかける城彰二(中央、右は中田英寿)
日本・アルゼンチン戦で、必死にボールを追いかける城彰二(中央、右は中田英寿)

 1998年フランス大会で日本はW杯初出場を果たした。新たな歴史となる初戦の相手はアルゼンチン。サッカー記者5年目だった私は現場でW杯を取材することは、この一戦が初めてだった。

 フランスW杯開幕を前に、深刻なチケット不足問題が発生した。海外の一部業者の不正が明るみになり、社会問題にまで発展。現地まで足を運びながらチケットがないというサポーターも続出してしまった。

 日本―アルゼンチン戦の試合前、私は試合会場のトゥールーズ・スタジアム周辺取材を担当した。トゥールーズ・スタジアムはガロンヌ川の大きな中州に建つ。チケットがなければ、その中州に渡る橋を通行することは許されず、スタジアムに近寄ることさえできなかった。チケットはないけど、一縷の望みを持ってスタジアムに駆けつけたサポーターは、日本人もアルゼンチン人も100人以上もいた。橋のたもとのゲートで悲嘆するサポーターを取材することはつらい仕事だった。私の財布の中にはメディアチケットがあっただけに、なおさら、取材に応じてくれたサポーターに対し、申し訳ない気持ちが強かった。

 キックオフ直前、ぎりぎりまで周辺取材した私は、橋を全力で走り、スタジアムに向かった。

 日本は開幕直前にエースだったFW三浦知良が代表メンバーから外れ、主将のDF井原正巳は右膝じん帯損傷のケガから復帰したばかり。不安の残る初陣だった。しかも、W杯初出場の日本に対し、相手のアルゼンチンはW杯出場12回目(当時)、優勝2回を誇る南米の超強豪国。正直に言えば、私は日本の惨敗を覚悟していた。

 結果は、0―1で日本の敗戦だった。

 GK川口能活や井原らDF陣の大健闘は称賛に値するが、アルゼンチンの堅実な試合運びが強く印象に残った。

 前半29分。アルゼンチンのエース、ガブリエル・バティストゥータが川口の動きを冷静に見極め、右足でゴール左に流し込んだ。その後、アルゼンチンはリスクを冒して攻めることはなく、日本につけいる隙を全く与えなかった。0―1は惜敗でもあるが、完敗でもあった。

 アルゼンチンの選手は勝利が決まった瞬間、絶叫し、体全体で喜びを表した。アルゼンチンにとっても、W杯で1勝することは特別であることを思い知った。たとえ、相手がW杯初出場国だとしても。

 チケットが手に入らず、落胆するサポーター。

 1勝に歓喜するアルゼンチン代表。

 試合の前と後で見た対照的な哀楽。「これがW杯か…」と実感する一日だった。(記者コラム・竹内 達朗)

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