地味すぎるメジャーリーガー・平野佳寿が初の著書に思いを込めた「こつこつ努力」の素晴らしさ

アリゾナの公園で地道に自主練習を続けるマリナーズ・平野佳寿(本人提供)
アリゾナの公園で地道に自主練習を続けるマリナーズ・平野佳寿(本人提供)
平野佳寿著「地味を笑うな」
平野佳寿著「地味を笑うな」

 米大リーグ・マリナーズに所属する平野佳寿投手(36)が、初の著書「地味を笑うな」(ワニブックス社、1540円)で「誇るべき地味論」を展開している。否定的にとらえられがちな「地味」は、平野の野球人生にとって欠かせない言葉。「地味すぎるメジャーリーガー」の誕生までをつづるとともに、地味でも努力することの素晴らしさを伝えている。(長田 亨)

 特別に注目されてきたわけでも、強烈な個性を持っているわけでもない。平野はそれらを自覚し、堂々と胸を張った。

 「決して派手な野球人生を歩んできたわけでもないので…(笑い)。地味を積み重ねて、ここまでやってきました。地味という言葉を聞けば、あまりいい印象を持たれないかもしれません。でも、僕の中では肯定的。地味に、地道にやり続けてきたことは、大きな自信になっていますから」

 ど派手な表紙カバーとは対照的な生き方。自身初の著書にも思いを込めた。

 「信じてやり続けることは大事で、いつ花咲くか分かりません。それが30歳でも40歳でも、50歳でもいい。どの分野でも同じだと思います。派手じゃなくても、地道に頑張っている人はたくさんいる。こうやって本を書かせていただくのも、生涯に1回あるかないか。少しでも、そういう人たちの役にも立つことができれば…と願っています」

 日本のプロ野球では、オリックスひと筋でプレーした。同じ関西を本拠地とするのは、人気球団の阪神だった。頭角を現したのはリリーフとして。抑えて当たり前、打たれた時に注目されるポジションだった。

 「体調や勝ち負けで、気分のいい日、悪い日があります。いろいろあっても怠らず、自分が決めたことをやってきました。正直、僕自身が打たれてチームが負ければ、何もせずに帰りたくなります。そこをグッとこらえて、投げた後のケアを最後までやる。ここまで来られたのはやっぱり、地味な積み重ねなんです」

 補欠からスタートした鳥羽高時代を「勘違いしていました…」と苦笑いで振り返った。京産大では通算36勝、404奪三振など、次々とリーグ記録を塗り替えた。転機は2年の春。地道の出発点でもあった。

 「2年生になって、1試合目でボコボコに打たれました。それはもう、ひどい内容で。(勝村法彦)監督に初めて怒られたんです。『1年間、何をやってたんや!』と。そこで変わりました。やってやろう!って。さすがに当時は腹が立ちましたけど…(笑い)」

 1年時は「直球しか投げるな」と指示されていた。実際に直球だけで相手を抑えると、謙虚さを失っていった。投手として、人間として大事なものに気づかせてくれたのが勝村監督。感謝は忘れることがない。

 「僕が天狗になることを見越して、監督は『打たれてくれ』と思っていたようです。あの時、みんなの前で怒られて、野球に取り組む姿勢を見直しました。おごってはいけないんだ、と。時間をかけたのが、自分自身で自分の体を知るということです。真っすぐに立って、正しい歩き方を勉強したり。バランスよく、体幹を鍛えることもそうです。先輩の練習を参考にさせてもらうようになったのも、あの頃からですね」

 現実から目を背けず、真摯(しんし)に向き合ってきた。プロ入り当初のポジションは先発。1年目から7勝、8勝、0勝、3勝と苦しいシーズンが続いた。

 「プロに入ってからは、岡田(彰布)監督の存在が大きかったです。5年目の2010年に、リリーフとしての僕を見いだしていただいた。そこから1試合も先発はしていません。先発をクビになり、中継ぎでいくしかないと。腐らず、しがみついてメジャーまで行けた過程も、この本に書かせていただきました」

 17年オフに海外FA権を行使し、メジャー挑戦を決断した。大リーグを本気で意識したのは、同年3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)だった。地味な男らしく、追加招集での初出場だった。

 「本当に最後の最後で選ばれたし、そこまで僕の需要はないだろうな…と思っていました。最初はボールが滑るし、決め球のフォークも扱えなかった。それがある試合で、たまたまこねられた黄色っぽいボールが来て。『これならいける』と手応えをつかんで、メジャーへの思いも芽生えました。米国に来ても、自分を信じてやり続けることが一番にあります」

 海を渡ったのはエンゼルス・大谷翔平と同じタイミングだった。二刀流の陰に隠れ、メジャー1年目から75試合に登板した。地味に、地道にコツコツと。新型コロナウイルスの影響でまだ開幕は見えないが、信じた道を歩み続けている。

 「大学から地道にやってきたことを、少し進化させて今があります。自分がやると決めたことは、最後までやり抜く。地味って、素晴らしいことですから…」

 ◆平野 佳寿(ひらの・よしひさ)1984年3月8日、京都府生まれ。36歳。鳥羽高でセンバツ2回出場。京産大を経て2005年大学・社会人ドラフト希望枠でオリックス入団。プロ入りから4年間は先発で計18勝36敗。10年に救援転向し、11年に最優秀中継ぎ、14年に最優秀救援のタイトルを獲得。日本通算549試合で48勝69敗、156セーブ、139ホールド、防御率3・10。17年オフに海外FA権を行使し、Dバックス入団。20年、マリナーズ移籍。メジャー通算137試合で9勝8敗4セーブ、47ホールド、防御率3・47。186センチ、84キロ。既婚。

アリゾナの公園で地道に自主練習を続けるマリナーズ・平野佳寿(本人提供)
平野佳寿著「地味を笑うな」
すべての写真を見る 2枚

社会

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請