【箱根への道】留学生に新時代“韓流ランナー”金泳勲が関東学院大を復活に導く

関東学院大で箱根駅伝出場を目指す韓国人留学生の金泳勲(右は中川禎毅監督)
関東学院大で箱根駅伝出場を目指す韓国人留学生の金泳勲(右は中川禎毅監督)

 2004年を最後に箱根駅伝から遠ざかっている関東学院大に、期待の留学生が加わった。韓国出身の金泳勲だ。3年前、長崎・鎮西学院高に入学と同時に来日。五輪マラソンランナーを父に持つ金は、箱根駅伝にかける強い思い、さらに、その先の夢を明かした。ケニアをはじめ東アフリカ出身の留学生が大多数を占める大学駅伝界で、“韓流ランナー”の挑戦が注目される。

 隣国から「箱根への道」を駆けるため、やって来た。「4年の間で必ず箱根駅伝を走りたい」。今春、関東学院大に入学した韓国人留学生の金は、きっぱりと話した。

 これまで関東学院大は箱根駅伝に6回出場したが、現在のところ2004年が最後の晴れ舞台。近年は予選会で苦戦が続くチームにとって、金は期待のルーキーだ。「ガッツがあって真面目。長距離適性もある」と中川禎毅監督(44)は期待を寄せる。

 父・在龍さん(54)は韓国マラソン黄金期を担った名選手。黄永祚氏(50)が金メダルを獲得した1992年バルセロナ五輪男子マラソンに出場し、10位だった。93年のボストン・マラソンでは2位の実績を持つ。偉大な父の影響で走り始めた金はソウルの中学を卒業後、「最近ではマラソン・長距離は日本の方が強いし、試合も多い」という理由で単身、海を渡り、長崎・鎮西学院高に入学した。「高校入学当初は全く日本語が話せなかったから苦労しました。3年生になって、ようやくチームメートやクラスメートと不自由なく会話できるようになった」と笑顔を見せながら上達した日本語で話した。

 日本での高校3年間で、仲間とタスキをつなぐ駅伝の魅力にとりつかれた。「韓国にも駅伝はありますが、盛んではありません。鎮西学院では全国高校駅伝を走りたかったけど、走れなかった。大学では日本中の誰もが知っている箱根駅伝を走りたいのです」と言葉に力を込めて話す。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、2月29日に高校を卒業後、韓国に帰国せず、横浜市内にある関東学院大の選手寮に入った。チーム練習が自粛されるなど新生活は制限を受ける中で始まったが、金はあくまで前向きだ。

 「部活動ができることは当たり前なことではなくなりました。しかし、できることはたくさんある。どうしたら、もっと速く走れるか考えながら距離を踏んだり、足りない筋力を補強したり練習を行っています。大会がなくなりましたが、私の大きな夢に近づくため、自分を応援してくださる人々のため、モチベーションを保っています」

 尊敬する父・在龍さんの言葉は大きな力となっている。「高校で日本の生活に慣れ、本当の勝負は大学から始まる。努力と我慢を重ね、強い選手になってほしい」とアドバイスを受けたという。「究極の目標はマラソンで韓国代表として五輪に出場することです」と、父に続いて大舞台に立つことを夢見る。

  • 積極的に補強トレーニングに励む金泳勲
  • 積極的に補強トレーニングに励む金泳勲

 もうひとつ大きな目標がある。国際文化学部比較文化学科で学び、ますます日本語が上達している金は「将来、日本と韓国のスポーツ界の懸け橋になりたい」と充実した表情で話す。

 大学駅伝チームに所属する留学生は、ほとんどが「長距離王国」といわれるケニアの出身だ。18年度の拓大の主将を務めたワークナー・デレセ(現ひらまつ病院)らエチオピア出身選手を含めて東アフリカ勢が中心。5000メートル13分台半ば、1万メートル27分台の自己ベストを持つケニア人留学生が多くいる中で、金は5000メートル14分53秒79、1万メートルは持ちタイムなし。競技力ではケニア勢に差をつけられていることは事実。だが、心意気は決して負けていない。(竹内 達朗)

 ◆金 泳勲(キム・ヨンフン)2001年10月19日、韓国・ソウル生まれ。18歳。中学時代に陸上競技を始める。17年に長崎・鎮西学院高入学。3年時の長崎県高校駅伝で6区3位。チームは2位で全国大会出場ならず。今春、関東学院大国際文化学部に入学。5000メートルの自己ベストは14分53秒79。父の在龍さんは現在、韓国電力監督。177センチ、58キロ。

 ◆箱根駅伝に出場した留学生 戦前、1932年ロス五輪マラソン6位の金恩培(早大)、36年ベルリン五輪マラソン銅メダルの南昇竜(明大)ら朝鮮半島出身の選手は多かった。89年大会でケニア人留学生のジョセフ・オツオリ、ケネディ・イセナ(ともに山梨学院大)がアフリカ出身選手として初めて出場。今年の大会では5人のケニア人留学生が箱根路を駆けた。金の入学に尽力した関東学院大の上野敬裕ゼネラルマネジャー(47)は「現状、留学生のほとんどがケニア出身ですが、アジアからも留学生を迎え、箱根駅伝のグローバル化に寄与したいと考えています」と話す。

 ◆箱根駅伝の留学生に関するルール 各校、登録された14人の中から12人がハーフマラソンを一斉スタートし、上位10人の合計タイムで競う予選会では登録2人まで、出場1人まで。16人が登録され、10区間で競う本戦も登録2人まで、出場1人まで。予選会で敗退した大学の選手で編成され、本戦にオープン参加する関東学生連合チームには選出されない。

関東学院大で箱根駅伝出場を目指す韓国人留学生の金泳勲(右は中川禎毅監督)
積極的に補強トレーニングに励む金泳勲
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