青木篤志さんバイク事故死から1年、プロレス界再編が始まろうとしている…金曜8時のプロレスコラム

昨年6月18日、後楽園ホールでの青木篤志さん追悼セレモニーでは、青い紙テープが舞う中、盟友・佐藤光留が遺影を掲げた
昨年6月18日、後楽園ホールでの青木篤志さん追悼セレモニーでは、青い紙テープが舞う中、盟友・佐藤光留が遺影を掲げた

 全日本プロレスの青木篤志さんが、昨年6月3日にバイク事故のため、現役世界ジュニアヘビー級王者として41歳で亡くなってから1年がたった。昨年8月11日に東京・後楽園ホールで開催された追悼興行には、超満員札止めとなる1813人の観衆が黙とうをささげたが、1年目の命日となった3日は、新型コロナウイルスによる東京アラートの渦中で、イベントは自粛。レスラー仲間は私的に墓参するしかなかった。

 全日本プロレス公式サイトでは、トップページに「In Memory 青木篤志 Atushi Aoki 1977~2019」と遺影を飾って追悼した。動画配信サービス「全日本プロレスTV」では、「全日本プロレス 水曜スペシャル」を配信。無観客試合の定期配信日の水曜日がくしくも6月3日となり、メインイベントは「6月3日特別試合」として諏訪魔、佐藤光留組VS石川修司、岡田佑介組のタッグマッチ30分1本勝負が配信された(14分16秒、諏訪魔がバックドロップからの体固めで、岡田に勝利)。

 青木さんは、昨年5月20日の後楽園ホール大会で岩本煌史を破り、第51代世界ジュニアヘビー級王者になったが、その2週間後の6月3日午後10時半ごろ、東京・北の丸公園の首都高トンネル内でバイクとともに倒れているのを発見され、搬送先の病院で死亡が確認された。

 6月18日の後楽園大会で、全試合終了後に追悼セレモニーが行われ、1374人(満員)を前に10カウントゴング、そして「世界ジュニアヘビー級チャンピオン、青木篤志!」のコールとともに無数の青い紙テープがリングに投げ込まれた。8月11日の追悼興行では同じようなシーンが展開された。

 今年も予定されていた「2020 DYNAMITE SERIES」で同様のシーンを取材できると思っていたが、シリーズ全戦が中止になった。毎年5月には初代三冠ヘビー級王者・ジャンボ鶴田さん(2000年5月13日没、享年49歳)のメモリアルマッチが全日本で、毎年6月には初代GHCヘビー級王者・三沢光晴さん(2009年6月13日没、享年46歳)のメモリアルナイトがプロレスリング・ノアで開催されてきたが、今年はそれもないのだ。

 青木さんは、プロレスリング・ノアでデビューし、全日本プロレスに移籍。両団体をつなぐ架け橋のような存在だった。昨年の追悼興行のメインイベントは、全日本のエース、宮原健斗とノアの象徴、丸藤正道が青木さんが育てた青柳優馬と組んで、全日本の世界タッグ王者コンビ、諏訪魔、石川修司組に、青木さんとノアに同期入門(2005年)した谷口周平のトリオと対戦。セミファイナルでは、全日本の元社長・秋山準とノアの生え抜き第1号の杉浦貴がタッグを結成し、全日本の野村直矢、ノアの熊野準と混成世代対決を行った。

 鶴田さんと三沢さんの追悼試合は、全日本とノアできっちり住み分けができていたが、青木さんは両団体を一つにできる存在だった。だから、昨年は「バイク事故で亡くなった青木篤志さんを追悼して生まれる夢のオールスター戦」というタイトルでコラムを書いたが、その夢はコロナ禍で露と消えた。「6月3日特別試合」は全日本内タッグマッチだった。

 だが、1年たって、プロレス界再編は急速に動いている。コロナ禍による興行中止で、動画配信サービスの成否が団体の存続に影響しそうだからだ。業界の盟主、新日本プロレスの動画配信サービス「新日本プロレスワールド」(月額999円)は2014年12月にスタートし、テレビ朝日が所蔵する名勝負アーカイブとライブ配信で成功モデルを作った。

 これに対抗できるコンテンツが、2017年1月開始の動画配信サービス「DDT UNIVERSE(ユニバース)」だった。DDTプロレスリングの高木三四郎社長(50)はこのコンテンツを武器に、インターネットテレビ「AbemaTV」を擁するサイバーエージェント(藤田晋社長)にDDTを身売り。そのサイバーエージェントは、今年1月29日にプロレスリング・ノアを買収した。高木社長はノアの社長も兼務し、5月12日に「DDTユニバース」をノアも中継する「WRESTLE UNIVERSE(レッスル・ユニバース)に改称した(月額900円)。

 このコンテンツのビッグマッチは「AbemaTV」でも放送される。DDTには、有刺鉄線電流爆破デスマッチを商標登録した元参院議員の大仁田厚(62)や総合格闘技の元ONE世界ライト級王者・青木真也(37)も参戦しており、「レッスル・ユニバース」はおもちゃ箱のようなにぎやかさだ。

 全日本は独自に「全日本プロレスTV」(月額900円)を2018年3月から配信しており、青木さんの追悼を意味する「6月3日特別試合」を配信した。その一方で、全日本の元社長でGMも退任した秋山準が今年5月にDDTに参戦し、同時にゲストコーチに就任した。

 秋山は「全日本プロレスから受け継がれたものを、DDTにすべて教えたい」と意気込み、高木社長は「ダメ元でオファーしたらOKでした。もう1回プロレスを見つめ直す時期。興行再開したときに、遅れを取ってはいけない」とコメントした。高木&秋山の同学年50歳コンビの肘タッチによって、全日本の秋山が「レッスル・ユニバース」にも登場しているのだ。

 青木篤志さんが亡くなって1年。青木さんが近づけた古巣のノアと全日本は、ノアの身売りで遠ざかったように見えていたが、師匠・秋山によってまたも接点ができた。秋山は青木さんの命日の3日、ツイッターで「あの時と俺の状況は変わったよ」「今を見てお前なら何て言う?」とつぶいやいた。1年でこれだけの動きがあったプロレス界の再編は、コロナ明けのリングでさらに激動のドラマを見せてくれそうだ。(酒井 隆之)

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