感情の極み、有森裕子…カメラマンがファインダー越しに見た92年バルセロナ五輪

2位でゴールインし夢の銀メダルとなった有森裕子。ゴールの瞬間大きくバンザイし、体全体で喜びを表す(カメラ・関口 俊明)
2位でゴールインし夢の銀メダルとなった有森裕子。ゴールの瞬間大きくバンザイし、体全体で喜びを表す(カメラ・関口 俊明)

 スポーツ報知のカメラマンが、五輪の現場で撮影した瞬間を振り返ります。ファインダーを通して被写体と直接向き合ったからこそ見えた五輪史に残る名場面や、選手が見せた、ふとした表情。毎月1大会を紹介する企画の第1回は、女子マラソンで有森裕子が銀メダルを獲得する活躍を見せた1992年バルセロナ五輪。

 ゴールの瞬間に感情が爆発した有森の声は、望遠レンズを通して確かに心に響いてきた。両腕を大きく広げた後、あふれ出る涙を抑えるように両手で顔を覆った。感動で高まった鼓動の回数と同じくらい、シャッターを切った。あの時の衝撃は決して忘れられない。

 「夢じゃないか、夢じゃないかと思いながら走った。金じゃなかったけどメダルが取れた」。優勝したバレンチナ・エゴロワ(EUN=旧ソ連などの統一選手団)から約60メートル遅れ、2時間32分49秒の2位でゴール。日本の女子陸上選手では、1928年アムステルダム大会800メートル銀メダリスト・人見絹枝さん以来、64年ぶりの五輪メダル獲得だった。全てのものから解放されたような最高の笑顔で、競技場内をウィニングラン。優勝したエゴロワとも抱き合い、熱烈なキスを3度もする喜びようだった。

 レース翌日、午前5時半頃に目が覚めたという有森は会見で「朝起きて、(前日は)夢だったのかなぁというのが正直な気分でした。でもウソじゃないんだと実感できてうれしかった」と話し、改めてメダルの重みを感じた。大会前、松野明美(ニコニコドー)との代表選考問題が大騒ぎになったこともあり、プレッシャーは計り知れないものがあったのだろう。

 スタジアムを埋め尽くした約6万人の大観衆の前で見せた偉業。カメラのファインダーの中に見た有森は銀メダルに輝いた喜びよりも、支えてくれた多くの人に「ありがとう」と伝えているように見えた。感謝のゴールだったに違いない。(写真部・関口 俊明)

 ◆バルセロナ大会めも 柔道では男子71キロ級の古賀稔彦と78キロ級の吉田秀彦がそろって金メダル。日本選手団の金メダルは競泳・岩崎と合わせて3個。この大会から正式種目となった柔道女子は48キロ級で当時16歳の田村亮子が銀メダル。陸上では400メートルで高野進が五輪短距離の日本勢として60年ぶりの決勝進出となる8位入賞。また、プロ選手の参加が全面解禁され、バスケットボール男子の米国がNBA選手によるドリームチームで金メダルを獲得した。

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