【五輪の深層】企業とアスリートの新ロールモデルを作ろう…ソウルから支え続け32年の組織委参与・上治丈太郎氏

ロンドン、リオと2大会連続で銅メダルを獲得した競泳・星はミズノに所属
ロンドン、リオと2大会連続で銅メダルを獲得した競泳・星はミズノに所属

 新型コロナウイルスのパンデミックで世界経済への影響が明らかに出始めている。日本経済も、今年1月から3月期は予想をはるかに超える最悪の業績で、各企業の決算でも大幅な下方修正や、来期に対しても見通せない状況が続いている。

 もともと、日本の企業スポーツは戦後、重厚長大といわれる基幹産業の福利厚生として盛んになった。スポーツによるメセナ活動(企業が資金提供して文化活動などを支援すること)や地域社会への貢献といった形で、地域のスポーツや各競技団体に対するサポートを行ってきた。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊や2008年のリーマンショックにより、名門といわれたチームが休止や廃部に追い込まれた。企業は業績が落ちると、真っ先に経費削減に着手するが、アスリートや実業団チームへの支出も対象となる。

 当然、支援のない選手の競技生活は厳しくなり、満足な成績が残せなくなる。92年バルセロナ、96年アトランタ五輪では、いずれも金メダルは3個。そのうち柔道が5人おり、所属先は日本を代表する企業である新日本製鉄、旭化成、三井住友海上、そして大学だった。ちなみに残り1つは競泳で14歳の中学生・岩崎恭子さんである。

 リーマンショック以降は、08年1月にオープンした味の素トレセン(NTC)のおかげもあり、金メダルの数は伸びた。08年北京では9個、12年ロンドンでは7個、16年リオでは12個をつかみ取った。

 とはいえ、企業やスポンサーなどからこの先、どんな支援が得られるか現時点では見通せない。ここ10年ほど、アスリートはスポーツが醸成する付加価値で、企業のイメージや認知度の向上に大きく貢献してきた。スポーツメーカーの場合、自社商品を使用したアスリートの活躍は商品の優秀性を証明し、市場での購買動機にも寄与する。トップ選手はスポーツメーカー以外でも同様に貢献しているが、企業の業績次第で扱いの優先順位も左右される。

 私自身、最も危惧するのは近い将来にある24年のパリ五輪、26年ミラノ冬季五輪で代表になれる可能性のあるアスリートが就職し、所属企業で活動支援が受けられるかどうかである。未来が見通せずに競技生活を諦める事態は何としても避けたい。

 幸いJOCには、選手の引退後の受け入れ先斡旋(あっせん)を支援するアスナビ制度があり、オリンピアンはスポーツで人生設計ができる時代である。酷な言い方になるかもしれないが、だからこそ東京五輪に懸けるアスリートたちは今はコロナと日々闘っている医療従事者や企業などから何をしてもらえるかではなく、自立した心を持ち、自分自身で何ができるかを問うてほしい。子供たちの夢の実現を助けたり、終息に向け、何をしてあげられるかを考えるよい機会としてほしい。

 コロナの第2、3波を予測しながら新しい生活様式を考え、スポーツ界を取り巻く将来のロールモデルを共に構築したい。

スポーツ

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請