【1969年6月15日】天敵・王貞治封じに登場した衝撃の“背面投げ”…元祖は1955年の日米野球で披露したヤンキース左腕

王に背面投げ 小川健太郎(カメラ・報知写真部)
王に背面投げ 小川健太郎(カメラ・報知写真部)

 後楽園球場で行われた巨人・中日戦、中日・小川健太郎投手が巨人・王貞治選手に投げた投球に、ファンや記者席はあっけにとられた。3回、ワインドアップから背中越しから投げる“背面投げ”だ。

 小川は6回にも同様な球を投げたが、ともにボールになった。当時の報知新聞評論家の青田昇さんは「王に対して投げた2球は、我々が現役時代に遊びでやっていた背中からヒョイと投げるトスである。もちろん、投手がゲームで投げるところを見たのは生まれて初めて。記者席の長老に聞いても、例が無いそうだ」と書いた。

 小川が王にだけ投げたのは理由がある。前年に3本塁打を含む17打数10安打と打ち込まれたため、少しでもタイミングを外そうと思ってのボールだった。結果はその打席で2度とも打ち取っている。不正投球ではないかと、NPBは7月20日に記録審判委員会を開いたが、不正投球には当たらないとの見解が出された。小川は王に対し、同年その後も2度“背面投げ”を行ったが、すべてボールだった。

 青田さんが書いたように、当時は空前絶後とされていたが、実は1955年11月10日、ヤンキースの左腕トミー・バーンが佐藤孝夫(国鉄)に対して投げている。本紙の試合経過では「背中にまわして反対側から投げたり(後略)」と、背面投げの事実を記している。当時マスクをかぶっていたヨギ・ベラ捕手が2004年に来日した際に確認すると「そうだ。日本でも、翌年キャンプでも投げた」と答えてくれた。

 バーンは56年3月25日、ドジャースとのオープン戦で野球殿堂入りのピー・ウィー・リース内野手に投げたこともある。その投球は、日本で最初に投げたことから「Kimono Ball」と名付けられネットにも掲載されている。しかしオープン戦での投球後、当時の米大リーグ審判団から正式に「不正投球だ」との見解が示され、2度と投げることはなかった。日本の審判団の見解も、その米国の見解を知っていたのかどうかは、当時の関係者がほとんどいないだけに闇の中である。(蛭間 豊章)=ベースボール・アナリスト=

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