【2015年6月2日】巨人・田口麗斗が19歳8か月で球団史上最年少の交流戦勝利 悪夢乗り越えたどり着いた思い出の“友情リレー”

球団史上最年少の交流戦勝利を挙げ、仲良く肩を組んでポーズを取る田口とメンドーサ
球団史上最年少の交流戦勝利を挙げ、仲良く肩を組んでポーズを取る田口とメンドーサ

 ◆2015年6月2日 巨人2―1オリックス(東京D)

 どんな選手にも駆け出しの時代がある。今から5年前。「田口麗斗」という後に日本代表に選ばれる左腕のそんな時代を目撃した。

 当時プロ2年目の19歳。背番号は監督やコーチより大きい「90」だった。広島新庄高から13年ドラフト3位で巨人の門をたたき、1年目は2軍で7試合に登板。2勝0敗、防御率1・75の数字を残した。同期入団の平良拳太郎(現DeNA)とともに、将来を嘱望される投手の1人だった。

 初めて会ったのは15年1月。ジャイアンツ球場であいさつをした。朝早いこともあってか、少し不機嫌そうだった記憶がある。普段は口数の多い明るい性格だが、振り返ると、モードに入った時の雰囲気はその時から一流のものを持っていたように思う。

 2年目の春季キャンプは2軍スタート。2月13日には1軍の紅白戦に招集されたが、ここで“悪夢”が待っていた。1回8安打7失点。ベスト体重よりも約10キロ重い84キロでは力を出せるはずがなかった。「僕の野球人生が終わったのかもしれない」。心を入れ替えた。眠い目をこすり、午前5時半から宿舎周辺を散歩する姿も見受けられた。食事制限も取り入れ、77キロまで体重を落とすと、次第に球のキレは戻っていった。

 4月11日のヤクルト戦(東京D)。田口にプロ初登板初先発のチャンスが訪れた。同じ9月14日生まれで、敬愛する矢沢永吉のキャロル時代の名曲「ファンキー・モンキー・ベイビー」に乗ってマウンドに上がった男は7回5安打1失点の好投でプロ初勝利。決勝打となる初安打初打点のおまけつきで憧れのお立ち台に立った。「はじめまして。2年目の田口です」。ドラフト制後の球団の左投手では、今村に並ぶ19歳6か月での最年少勝利。ホームの大歓声を浴びた。

 しかし、そこから3試合結果が出ず、2軍に降格。ただ、腐ることはなかった。「どうすれば自分は必要とされる投手になれるのか」。自分自身と向き合い続けた。再びチャンスが巡ってきたのは6月2日。エース・菅野智之が首痛のため登板を回避し、代役として田口が選ばれた。

 後悔しないように思い切り腕を振った。初回から1死一、二塁のピンチを招いたが、4番・カラバイヨを高めの直球で3球三振。3回1死一、二塁でも敵の主砲のバットをへし折った。5回3安打無失点。プロ2勝目は巨人の10代投手初めての交流戦勝利(19歳8か月)となり、球団史に名を刻んだ。「やっぱりここ(東京D)が僕の場所だと思いました」と満面の笑みを浮かべた表情は、今でも印象に強く残っている。

 この試合はもう一つの意味でも特別なものとなった。田口の後を受けて6回から登板したのはキューバ人右腕・メンドーサだった。来日初登板となったが、2回無安打無失点の完全デビューを果たし、田口の勝利を見事にアシストした。実はこの2人、ともにジャイアンツ寮に暮らしていた大の仲良し。平良を合わせて“3兄弟”と呼ばれるほどの関係だった。

 メンドーサは慣れない日本の生活に苦しんでいた。窮地を救ってくれたのが、田口と平良の存在だった。特に田口は「こっちに来い」、「出ていけ、お前」などと日本語を教えてくれた。2014年にはある約束をしていた。「一緒に、1軍のマウンドに立とう」。夢の“友情リレー”が実現した大事な試合。2人にとっては、記録以上に記憶に残る試合となったはずだ。

 あの夜から5年。田口の背番号は「28」に変わり、立場も大きく変わった。昨季はリリーフとして自己最多の55試合に登板し、貴重な経験を積んだ。今季は先発に復帰。ローテーション投手として開幕を迎えることが濃厚だ。代名詞はスライダーだが、現巨人担当によると、フォーク、カットボールと球種も増えたという。16年オフには高校の2学年後輩と結婚。今年1月には父親となり、精神面でも大人に成長したと聞いている。

 選手が羽ばたいていく姿を見られることは、記者のだいご味の一つだと思う。担当を離れてしばらく経つが、今でも気になる選手の1人。今後も飛躍していくであろう左腕の背中をひそかに見届けていきたい。(15年巨人担当・中村 晃大)

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