日本卓球界の歴史が動いた瞬間だった。2017年6月3日。世界選手権個人戦(ドイツ・デュッセルドルフ)混合ダブルスで、当時23歳の吉村真晴(名古屋ダイハツ)、同じく24歳の石川佳純(全農)ペアが金メダルに輝いた。日本勢の同種目の優勝は1969年大会の長谷川信彦、今野安子以来、48年ぶり。全種目を通じても、79年の男子シングルス・小野誠治以来38年ぶりの偉業だった。
準決勝、決勝はいずれもフルゲームの逆転勝ちだった。方博(中国)、ソルヤ(ドイツ)組を破って勝ち上がった決勝では陳建安、鄭怡静(台湾)と対戦。石川のサーブ、レシーブから攻撃を組み立て、吉村の強烈なフォアハンドで得点を重ねた。勝利の瞬間、2人は駆け寄り、歓喜のハグ。うれし涙を浮かべる石川の頭を、1歳下の吉村が優しくポンポンとたたく姿が感動を呼んだ。
優勝インタビューでは石川が「アンビリーバボーです」と話し、吉村は「アイムソーハッピー!」と応じた。息の合ったコンビネーションを見せた2人は、結成から6年での世界一。石川は「小さい頃から仲のいい友達。何でも話せて励まし合える、とてもいいパートナー」と信頼を寄せる。吉村も「石川さんが隣でずっと『大丈夫、大丈夫』とずっと励ましてくれた。それが救いになって、最後まで自分も何とかしてやろうって気持ちで戦えた」と語った。
世界一から6日後。国際オリンピック委員会(IOC)の臨時理事会で、東京五輪の新種目に混合ダブルスの採用が決まった。2人は19年の世界選手権でも銀メダルを獲得。3大会連続決勝進出の快挙を成し遂げた。「五輪でもまた石川さんと組めるように頑張りたい」。そう決意し、奮闘してきた吉村の東京五輪代表入りはかなわなかった。だが、この金メダルが混合ダブルスへの注目度、日本卓球界への期待を大きく高めたことは間違いない。(卓球担当・林直史)
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