舞台を映画化「めぐみへの誓い」、拉致問題解決起爆剤に「国連本部でも上映できたら」

横田めぐみさんの情報提供を求める滋さん役の原田大二郎と早紀江さん役の石村とも子
横田めぐみさんの情報提供を求める滋さん役の原田大二郎と早紀江さん役の石村とも子

 北朝鮮による拉致事件を題材にした映画「めぐみへの誓い」(今夏公開予定)の監督、脚本を務める野伏翔監督(68)がこのほど、電話取材に応じた。2010年から全国で上演された舞台を映画化。クラウドファンディングで製作費を募り、3600人から4859万9211円の支援金が寄せられた。拉致問題解決に向けた起爆剤として捉え、一般公開後のネット配信や海外配給も視野に入れている。(有野 博幸)

  • 中学時代の横田めぐみさんを演じる坂上梨々愛
  • 中学時代の横田めぐみさんを演じる坂上梨々愛

 舞台では大きな会場でも観客数は1000人ほど。野伏監督は18年から「もっと多くの方々に見てもらって、拉致事件について幅広く伝えたい」と映画化に向けて動き出した。

 北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)と全国各地でチラシを配り、昨年7月から3か月間のクラウドファンディングを実施して資金を集めた。「一般の会社員の方々が、なけなしのお金を寄付してくれて、『頑張って映画化を実現してください』とメッセージもくださって、感動で涙が出ました」。3600人の支援者の思いも背負って撮影に臨んだ。

  • 笑顔の原田と石村
  • 笑顔の原田と石村

 撮影は3月7~30日の約3週間。「部活帰りのめぐみさんが拉致される場面、嵐の中、船で日本海を渡る場面もリアルに描きます」。拉致被害者で2002年に帰国した曽我ひとみさん、地村保志さんらの証言も盛り込み、「向こうでの洗脳教育もすさまじいものがある。映画だからと言ってオーバーに描くことはありません。現実はもっと恐怖があったと思います」と思いを巡らせる。

 3月中に撮影を終えたため、新型コロナウイルスの影響を受けずに製作を進めている。「ギリギリでしたね。撮影はみんなでワイワイやりますから、4月の緊急事態宣言発令後だったら、延期になっていたかもしれない。そういう意味では恵まれてますね」。現在は編集作業の真っ最中。「外出自粛のおかげで、作業に集中できています」と前向きに捉えている。

 めぐみさんの両親も映画の完成を熱望している。「滋さんは舞台を何度も見てくれて、稽古場にも顔を出してくれた。一緒にお酒を飲みながら語り合ったこともあった」。ここ数年は体調を崩しており、「あまりにも進展がないので、気の毒でかわいそう。5~6年前は『絶対に解決させる』と燃えてましたけど、元気がなくなってしまいましたね。だからこそ、この映画をきっかけに状況を前進させたい」と意気込んでいる。

 原田大二郎(76)が滋さん役を熱演する。「原田さんは人としての優しさを表現させたら天下一品。滋さんの空気感をうまく出せています」。大鶴義丹(52)は「僕にも娘がいるからつらい」と言いながら拉致の実行犯を演じきったという。「多くの人に残酷さを知ってもらうことが大切です。遠慮せず、しっかりと表現しないと、見てくれた方々の心を動かすことはできません」

 実際に北朝鮮で生活していた脱北者の夫婦から取材した情報も映画に取り入れた。「金日成バッジが階級によって違うことを知りました。公開銃殺を見せられて、脱北を決意したそうです。公開銃殺は子供が一番前に座らされて家族が殺される場面も見せられるんです。そんな生の声を出演者の皆さんにも聞いてもらって、演技に生かしてもらいました」

 映画の魅力は拉致事件を知ってもらうための啓発だけではない。「親子の愛情、人間が持っている意志の強さが込められています」。編集作業の途中だが、出来栄えには「自信ありますよ。確実に感動があります。今までにない斬新さもあります」と胸を張る。横田めぐみさんだけでなく、800人以上いるといわれる特定失踪者についても劇中で紹介している。

 撮影現場では「奇跡を起こそう」を合言葉に士気を高め合った。「拉致被害者の親世代も高齢になっており、残された時間には限りがあります」と危機感を持っている。「世界中の人に見てほしい。国連本部でも上映できたらいいですね。難しいかもしれませんが、働きかけていきたいです」と力を込めた。この映画を拉致問題解決に向けた起爆剤にする。

 ◆野伏 翔(のぶし・しょう)1952年1月23日、茨城県生まれ。68歳。大学卒業後、文学座演劇研究所を経て82年に劇団夜想会を設立。100公演以上の舞台演出を手掛け、2010年に舞台「めぐみへの誓い」を初演。主な映画作品は「MUSASHI」(96年)など。

 ◆めぐみへの誓い 1977年11月15日、当時13歳の中学1年生・横田めぐみさんらが北朝鮮の工作員によって拉致された。この事件を拉致被害者や脱北者の証言に基づいて描く。めぐみさんを坂上梨々愛と菜月、めぐみさんの父・滋さんを原田大二郎、母・早紀江さんを石村とも子が演じる。大鶴義丹、仁支川峰子、小松政夫、安座間美優、小林麗菜らも出演する。7月に支援者向けの上映会を実施予定で、その後に劇場公開を予定している。

横田めぐみさんの情報提供を求める滋さん役の原田大二郎と早紀江さん役の石村とも子
中学時代の横田めぐみさんを演じる坂上梨々愛
笑顔の原田と石村
すべての写真を見る 3枚

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請