J2磐田の本拠地ヤマハスタジアムで27日、リモート応援システムの実地試験が行われた。スポンサーであるヤマハが開発したスマートフォンアプリを使い、ボタンを押したり、声を吹き込んだりするだけで、離れた場所からスタジアムに声援を届けられる世界初の試み。無観客試合になるリーグ戦再開試合で実現しそうだ。プロ野球の数球団からも問い合わせがある新応援システムを、山田豊記者が現地で「見た」。
磐田と清水の静岡ダービーという設定で、観客のいないヤマハに両チームのチャント(応援歌)が交錯した。スマホに入れたアプリ(無料)から「歓声」「拍手」「ブーイング」などを押すと、スピーカーから交互に流れた。自らの声を吹き込んで、流すこともできる。
チャントは「コールリーダー」と呼ばれる応援リーダーがアプリを操作。試合展開に合わせ的確に歌を変えるため、応援も楽しくなり、選手の後押しになるだろう。さらに「ガヤ音」と呼ばれるスタジアム特有のザワザワした効果音も流すことができ、「より高い臨場感を再現した」とヤマハ関係者。スタンドには誰もいなかったが、目を閉じれば多くのサポーターといる気がして、胸がドキドキしてしまった。
3月28日に行われた磐田―清水の練習試合(アイスタ)は新型コロナウイルスの影響で無観客試合だった。第1試合は清水がMF金子翔太の試合終了間際のループ弾で3―2。ベンチからの拍手と選手やスタッフの声が聞こえるだけ。鮮やかな逆転勝ちにもかかわらず、盛り上がりに欠けたのは否めなかった。リモート応援はエンターテインメント性を格段に高めてくれそうだ。
音量はホーム7割、アウェー3割と調節し、“ホームアドバンテージ”も演出予定。磐田関係者は「再開前の練習試合でテストする見込み。Jリーグの許可を得られれば、再開初戦で世界初のリモート応援を実現したい」。無観客で開幕するプロ野球の数球団からも問い合わせがあるという。クラブにとって初期費用(非公表)も多くはかからず、導入のハードルは高くない。新たな応援の形が生まれそうだ。(静岡支局・山田 豊)
◆磐田のリモート応援システム ヤマハが入院中の子どもなど会場に行けない人に向けて開発していた。アプリの名称は「リモートチアラー パワード バイ サウンドユーディー」でスマホ、iPadなどに取り込めばすぐ使える。会場のどのスピーカーから音を出すかも選択可能。会場も新たに設備を設けなくても、既存のスピーカーで対応できる。13日には約5万人収容のエコパでも試験を行い、十分な臨場感を得られることを確認した。
◆海外リーグの無観客試合 現在稼働している海外主要リーグは、全て無観客で試合を行っている。韓国Kリーグの全北は、臨場感を出すために録音した応援音声をスタジアムで再生。無人のスタンドにはクラブの横断幕やスポンサーの巨大な幕を掲げた。FCソウルは座席に人形を並べたが、ラブドールが交じっていたとしてリーグから罰金処分を受けた。ドイツのブンデスリーガは録音音声の再生禁止を全クラブに通達している。同国1部ボルシアMGはサポーターの写真を貼り付けた段ボール1万3000個をスタンドに設置した。