大宮のDF畑尾大翔(29)が、クラブの垣根を越え、医療機関へのチャリティー企画を行っている。このほどスポーツ報知のオンライン取材で、企画への思いなどを語った。
畑尾は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によるJリーグ中断期間を使い、かつて所属した甲府の、MF新井涼平、MF橋爪勇樹(ともに29)と「プロスポーツ選手として、トレーニング動画や何かにチャレンジするもの以外でも(ファン、サポーターたちに)貢献したい」「こういう時だからこそ、時間を取って、より具体的なサッカーの話を子どもとしたい」という考えから「Jリーガー×サッカー少年少女」と題し、テレビ会議アプリ「Zoom」を用いてサッカーをしている少年少女、保護者、指導者らと非公開で交流を始めた。
そこから「Jリーガーとサポーターの座談会」と対象を拡大。そして無料で開催していたものを「より価値のあるものにするために」と有料にし、新型コロナウイルスと最前線で闘う医療機関に全額寄付をする「Jリーガー×charity(チャリティー)」へと発展させた。
その根底には医療従事者への感謝の気持ちがある。畑尾は、早大時代の2012年2月に胸の痛みを感じた。最初は病名が分からなかったが、同12月に慢性肺血栓塞栓症と診断された。その後、5年生として大学に籍を残していたが、13年9月に手術を受けるまで、ドクターストップもあり、ジョギングなどの運動も満足にできなかった。
それでも闘病中も「絶対にサッカー選手になってやる、なれる」という思いを貫いた。手術後はコンディションを上げていき、14年3月には甲府の練習に参加。7月から正式に加入し、念願のプロとなった。今でも、年1回の定期健診を受けている。そういった経緯から「僕自身、医療従事者にお世話になって今がある。恩返しができたらいいなと思いました」と企画の意図を説明。さらにニュースなどで、新型コロナウイルスに立ち向かっている医療従事者やその家族への偏見や差別があることも知り「すごく大変な中で働いてくれているのにもかかわらず、そういう目で見られてしまうのは残念。サッカー選手としてそこに対して働きかけることで、影響を与えられるかなという部分もありました」と続けた。
今企画には大宮、甲府だけでなく、畑尾の考えに賛同した大分、湘南などの選手たちも協力している。自ら企画運営を行っている畑尾は、クラブの垣根を越えることについて「感謝しています。大宮の選手だけでなく、ほかのクラブの選手を交えた方が拡散力が上がります。サッカーファミリーとして選手同士の横のつながりも大事」と話す。また、それぞれのクラブのサポーター同士が交流できる場にもなっている。
参加希望者は、回(各回、先着約15名)を選び、入金(1000円~)し、「Zoom」のIDとパスワードを受け取る。各回、畑尾とほか2人の選手が登場。回によっては別途、券を購入することで交流後に、選手と一緒にヨガやトレーニングを行うこともできる。募金(100円~)のみも可能だ。諸経費を除き、全額医療機関(日本赤十字社または日本医師会)に寄付する予定となっている。
18日にスタートし、ここまで6回実施。「リーグ戦再開間際やリーグ戦中は難しいと思うので」と現在、6月7日までは開催する意向を示している。問い合わせは畑尾の公式ツイッター(@taicho_H03)、開催スケジュールなどの詳細は公式ブログ(https://ameblo.jp/hiroto‐hatao/)、申し込みはインターネットビジネスの企画・開発・運営を行う「MOSH」のサービスを利用したhttps://mosh.jp/j‐charity/homeまで。
サッカーだけでなく「好きな女性のしぐさは」といった話まで内容は幅広く、参加者からは「選手の素直な話を聞くことができてとても良かったです」といった感想が寄せられている。毎回盛況で「正直、こんなに参加してもらえるとは思っていませんでした」と畑尾。今後はチャリティーオークションやオフシーズンでの開催も検討中だという。
Jリーグは再開へ向けて動いている。畑尾は「ピッチでどれだけチームのために戦えるかが本当の恩返しにもなるだろうし、プロサッカー選手としては本来の意味になると思うので、それはこれからも追求していきたいと思います」と力を込めた。(古川 浩司)
◆畑尾 大翔(はたお・ひろと)1990年9月16日、東京都生まれ。29歳。F東京U―18、早大を経て、14年7月甲府入団。18年名古屋に加入。同7月に大宮へ期限付き移籍し、同12月に完全移籍となった。J1通算52試合1得点、J2通算38試合2得点。183センチ、79キロ。