三田友梨佳アナがフジテレビを救った夜…心に響いた木村花さんの死への責任感あふれる言葉

自らの言葉で語ったフジテレビの三田友梨佳アナウンサー
自らの言葉で語ったフジテレビの三田友梨佳アナウンサー
23日に急死した木村花さん。将来を嘱望される女子プロレス界のスターだった
23日に急死した木村花さん。将来を嘱望される女子プロレス界のスターだった

 1人の女性アナウンサーの言葉に怒りが渦巻いていた胸の内を、そっとなでられたような気がした。

 25日深夜に放送されたフジテレビ系ニュース番組「Live News α」。23日に急死した女子プロレスラー・木村花さん(22)のニュースを報じたキャスターの三田友梨佳アナウンサー(33)が、大きな目でカメラを見つめて語りかけた。

 「テレビに出る人にも心があります。ですが、SNSだけに全ての原因があるとはいえないと思います。私自身、テレビをつくる身として、どうしたら防げたのか、どれだけつらい思いをされていたのか、番組とはどうあるべきなのか、しっかり考えていきたいと思います。心よりお悔やみ申し上げます」―。

 用意された原稿を読むのではなく、一度も目をそらさず、最後に深々と頭を下げた、その姿。そこには同局を代表して、言葉を紡ぎ出そうとする覚悟があった。

 真剣そのものの、その言葉を聞くまで私の胸には、フジへの疑問が渦巻いていた。なぜなら、22歳の将来性にあふれた女子レスラーの死には同局の責任が大きいと考えていたから。

 23日午前3時半ごろ、東京・江東区の自宅マンションのベッドで心肺停止状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された木村さんは、近い将来の米トップ団体・WWE移籍も期待される大器だった。

 リング外でもNetflix(ネットフリックス)で先行配信され、昨年6月からはフジテレビオンデマンド(FOD)でも配信スタート、同年7月からはフジ系地上波でも放送されている恋愛リアリティー番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019―2020」(テラスハウス)に昨年9月から出演。キュートなルックスと歯に衣(きぬ)着せぬ発言で人気者になっていた。

 「テラスハウス」は東京のシェアハウスを舞台に男女6人の共同生活を描く番組。木村さんもネットフリックスの世界配信のおかげでプロレスの枠を超えた人気者となっていたが、3月31日に配信、地上波では今月18日深夜に放送されたばかりの第38話で事件は起こった。

 木村さんが「夢の舞台」と表現した今年1月4日の新日本プロレス東京ドーム大会で着用。「命と同じぐらい大事なもの」と言う10万円以上するコスチュームを入れていた洗濯機を男子メンバーが誤って操作。色あせ、縮んでしまったため、着られなくなる「コスチューム事件」が発生したのだ。

 この放送回で、木村さんは男性メンバーを強い言葉で叱責(しっせき)。かぶっていた帽子を手で払うなどの言動にSNS上での批判が殺到した。私も当該の放送回を見直したが、男性メンバーとの言い争いの中、木村さんが「一生懸命、死にものぐるいで骨まで折って、働いているヤツをなめんなって感じ」、「なんで黙っているんだよ。ふざけんなよ」などの強い言葉を放っていたのは事実だ。

 一方で涙ぐみながら「あのコスチュームで夢にも思ってなかった東京ドームのリングにも上がったし、タイトルマッチにも挑戦したし…」と、本音をむき出しにした女子レスラーに、ネットが牙をむいた。

 放送後、木村さんのSNSには1日100件以上の罵詈(ばり)雑言の書き込みが殺到した。木村さんは23日未明に「愛しているよ」と愛猫と一緒の写真を投稿。画像の上には「愛してる、楽しく長生きしてね。ごめんね」と文字を乗せ、更新したストーリーズにも愛猫との別カットの写真に「さようなら。」という文字をかぶせていた。

 この書き込みにファンからの心配の声が集まった直後に木村さんは急死。遺書が残されていたことは報じられているが、まだ、不透明な部分も残されているだけに現時点での彼女の死への無責任な分析は避ける。

 しかし、私は木村さんの発言に多くの批判が集まっていた問題の第38話を地上波でも放送した上、番組の公式YouTubeでも「コスチューム事件」を取り上げた動画をアップ。火に油を注いだ形のフジの姿勢には、大きな問題があったと思う。

 木村さんが番組中でもリング上と同じヒール(悪役)を演じさせられたのではないかという疑問まで浮上。実際、番組の公式ツイッターには番組の打ち切りを求める声や木村さんの名誉のため、いわゆる“やらせ”に似た演出上の問題がなかったかの公表を求めるコメントが集まっている。

 「あえて木村さんをたたかせたと思われても仕方がない演出では?」、「木村さんの死は番組の責任ではないが、原因ではある。編集に問題があると思う」、「編集の仕方を考えるべきだった」など、視聴者の多くは作り手側に問題があったと見ているのだ。

 さらに言えば、誰が見ても番組のせいで、一気にヒールとなってしまった彼女の個人SNSが炎上する可能性も番組側が十分、考慮し、監視されるべきだったと思うし、米国では自殺者も相次いでいるリアリティー番組出演者への配慮に決定的に欠けていたのは事実だと思う。

 だからこそ、事件後のフジの報道に注目していたのだが、その内容は肩すかしに近いものだった。23、24日の夕方のニュース番組「FNN Live News it!」では報じず、24日夜の「Mr.サンデー」でも、この件に触れなかった。

 25日になって、やっと朝の「めざましテレビ」で木村さんの死を報道。VTRで所属団体・スターダムや番組としての「テラスハウス」の発表コメントを紹介。「木村さんのSNSなどには番組出演や番組内の発言をめぐり、誹謗中傷する内容の多くの投稿が―。その中には番組降板を求めるものや彼女の存在自体を否定するような内容まであったと言います」と、初めて誹謗(ひぼう)中傷の中身にも触れた。

 続く「とくダネ!」でも番組後半の午前9時半ごろからの約5分間、「めざましテレビ」とほぼ同内容のVTRで木村さんの訃報を伝えた。その後、スタジオで伊藤利尋アナウンサー(47)が「木村花さんの突然の訃報に接し、言葉を失っております。ご親族の皆様へ謹んでお悔やみ申しあげるとともに、ご冥福を心よりお祈り申し上げます」と言う同局の公式コメントを代読。次の話題に移った。だが、スタジオでの出演者らによるこの件に関するトークの場面はなかった。

 昼の「バイキング」でもMCの坂上忍(52)が「僕の個人的な感想ですけど、度を越したような誹謗中傷をやるような人たちって、申し訳ないですけど、その程度の人たちとしか思っていないので。ただ、こういうことが起きますと、今後はそれだけじゃすまないと。明らかに言葉の暴力ですから、何かしらの形で匿名逃れはできなくなっていっていただきたいし、何かしらの形で罰せられるような世の中にならなきゃいけないと、僕は思っています」と怒りをあらわにした。

 しかし、同局自体の番組制作面での反省、問題点の提示、何より木村さんの死への温かみのある言葉が電波に乗ることはなかった。もちろん、突然の死の直後で情報も不足しているという事情も重々、承知しているが、長時間に渡って、この件を報じる他局との“温度差”を感じてしまったのも事実だ。

 だからこそ、私は怒りまで覚えていたのだが、1日の終わりに見た三田アナの真剣そのものの表情がすべてを救ってくれた。用意された原稿を読むのではなく、あくまで自分の生の言葉で、自分の正直な思いを口にした姿は潔かった。

 そこには「SNSだけに全ての原因があるとはいえないと思います」と言う冷静な分析と自局の番組作りへの冷静な反省、「どれだけつらい思いをされていたのか」と言う木村さんへの思いやり、「番組とはどうあるべきなのか、しっかり考えていきたい」と言う、これからの番組作りへの決意まで全てが盛り込まれていた。

 思えば、昨年3月6日、東京・台場のヒルトン東京お台場で行われた同局の番組改編発表会見で「Live News α」のメインキャスター就任が発表された際も三田アナは「これまで私は8年間、情報番組を中心に担当してきました。報道番組のキャスターというのは新たな分野でのスタートとなりますし、身が引き締まる思いです」と思いを自分の言葉で語っていた。

 さらに「どんな分野でも私のアナウンサーとしての信念には変わりがありません。これまで通り、自分の言葉に責任を持って(視聴者の)気持ちに寄り添いながら、心のある番組を作っていけたらなと思っています」と、真剣そのものの表情で続けていたのも覚えている。

 キャスター就任時の決意表明通り、「自分の言葉に責任を持って」木村さんの死に対する自局の責任を、きちんと口にした三田アナ。フジの、そして、番組打ち切りもうわさされる「テラスハウス」と言う番組の木村さんの死への責任は、SNS上で彼女を追い詰めた人たち同様、今後も問われていくと思う。しかし、この夜に限っては、フジテレビは三田アナに救われた。私は、そう思う。(記者コラム・中村 健吾)

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