日テレ系演芸番組「笑点」(日曜・後5時半)のピンクの着物でおなじみの三遊亭好楽(73)は弟子10人、孫弟子4人の一門を率いている。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国での落語会が中止となる中、どのように過ごしているのか。密閉、密集、密接の3密を避けながら、好楽はアナログな方法で弟子との密な交流を継続していた。
先代の林家正蔵に入門したのが1966年。50年以上、噺家(はなしか)をやっていますが、これだけ落語をやらない時間が続くのは記憶にありませんね。これまでは週末はほとんど地方に行き、年間200日は落語をしていましたが、この3月は2日だけで、4月、5月は全部中止です。
ウチに閉じこもっていますが、意外に稽古はしませんね。試験前の勉強みたいに一夜漬けだったり、忙しい時の方が稽古しますね。何も予定がないのでやる気が出ませんよ。
アタシは銭湯が大好きなので、定休日以外は毎日行っています。番台のおばちゃんもビニールのすだれみたいのかぶって、おつりも手渡しでなく置いています。常連さんと話もしますが、声が大きいので『お静かに…』なんて注意されて…。
弟子が10人、孫弟子が4人、息子の王楽とアタシを入れて一門は16人です。面白く遊ぼうと、考えついたのが川柳です。テーマを与えて、優秀賞に5000円、最優秀賞に1万円の賞金を出します。競馬資金のお小遣いの中から出していますよ。昔の名人も川柳をやっていたし、落語にも生きてきます。1番弟子・好太郎、2番弟子・兼好はうまい。下の弟子にはダジャレはダメなんだよと教えています。
アタシはメールもやらないので、受けるのは電話。メモを取って会話をしながら近況を聞いています。3密はダメですが、密にコミュニケーションを取っています。電話だったらコロナもうつらないですからね。前座には365日同じ時間に電話することを義務づけていました。一日も欠かさず電話がきたのは好の助だけ。電話で話すことで弟子の意外な一面も見えてくるし、川柳を報告した後に『稽古お願いします』って言ってくる弟子も。ぽん太や孫弟子は熱心に来ますね。
第1回のテーマは「コロナ」で最優秀賞は孫弟子・兼太郎の「外いけず 落語も出来ず 落ち着かず」です。3回目は「引っ越し」がテーマ。10番目の弟子のスウェーデン人のじゅうべえの「海越えて 遠すぎるのよ 母しかる」。彼は8月に二ツ目に昇進して「好青年(こうせいねん)」を名乗らせます。ウケるだろうと、ずっと前から考えていました。
緊急事態宣言が解除されましたが、日常に戻るのはまだ先になりそうです。「笑点」も自宅からのリモート大喜利になりました。慣れずにさまよっているおじさんたちを見て笑ってください。スタッフの苦肉の策ですが、何とか発信しようとするスタッフの気持ちが伝わってくるし、お客さまが待っているから、続けなければいけません。サボっちゃいけないと思います。
◆三遊亭 好楽(さんゆうてい・こうらく)本名・家入信夫(いえいり・のぶお)1946年8月6日、東京都出身。73歳。京華商高卒。66年4月に8代目・林家正蔵(後の彦六)に入門し、九蔵。71年11月に二ツ目昇進。79年、「笑点」メンバーに。81年9月、真打ち昇進。83年、彦六の死に伴い5代目・三遊亭円楽門下に移り、好楽を名乗る。83年に「笑点」卒業も88年に復帰。自宅1階に寄席・池之端しのぶ亭を持つ。
◆三遊亭好楽一門
(1)★好太郎〈☆らっ好〉
(2)★兼好〈☆兼太郎〉〈☆好二郎〉〈●しゅりけん〉
(3)★好の助
(4)☆好吉
(5)☆鯛好
(6)☆とむ
(7)☆ぽん太
(8)☆好好
(9)●西村→6月昇進予定・☆好志朗
(10)●じゅうべえ→8月昇進予定・☆好青年
※★王楽(好楽の長男、5代目・円楽に入門し弟弟子)
【注】数字は入門順、★=真打ち、☆=二ツ目、●=前座、かっこ内は孫弟子
【好楽一門川柳 優秀作品】★は最優秀作品、括弧内は作者
▼第1回 お題「コロナ」
★外いけず 落語も出来ず 落ち着かず(兼太郎)
☆仕事ない コロナ去っても 仕事ない(好の助)
☆初めてだ 家ひきこもり おこられず(好好)
☆三密は 三井 三菱 三遊亭(好太郎)
☆センバツで 優勝したよな 岩手県(兼好)
☆トヨタかな コロナ発売 した奴は(好楽)
☆手ぬぐいが マスクに変わる 寄席囃子(好太郎)
☆両国に 3密にならない 場所がある(西村)
☆コロナより もっと怖い ウチの妻(鯛好)
▼第2回 お題「打ち上げ」
★前日の 氷みたいな 朝の妻(とむ)
☆高座より たくさんしゃべる 酒の席(ぽん太) ☆落語より 打ち上げの方に 力入れ(鯛好)
☆打ち上げは 必ず 知らない奴がいる(好楽)
☆すいません 高座の上より 通る声(らっ好)
☆軽くいく 軽く終わった ためしなし(らっ好)
☆打ち上げは 我が一門の お家芸(好好)
☆会よりも 打ち上げ人数 増えてます(好の助)
☆なぜ出ない その面白さ 高座には(兼好)
☆打ち上げで とんで行くのは 我がきおく(好二郎)
▼第3回 お題「引っ越し」
★海越えて 遠すぎるのよ 母しかる(じゅうべえ)
☆噺家の 引っ越し夜逃げと 間違われ(兼太郎)
☆噺家です 大家の顔が くもり出す(しゅりけん)
☆きまずいが 町内会長 同級生(好の助)
☆引っ越しで 十分ごとに 休けいし(好吉)
☆いつかいる いったがあかずのダンボ―ル(ぽん太)
☆背くらべ 柱の傷は 引っ越し屋(兼好)
☆富士見坂 引っ越しをしたら 富士見えず(鯛好)
☆大家から せいせいするなと うらみ節(らっ好)
☆家賃より 割れたガラスが 高い家(好太郎)
☆引っ越しの そばより マスクが喜ばれ(好太郎)
▼第4回 お題「小言」
★下からも 言われる時は たまにある(好好)
☆しくじって 小言の数だけ ネタになり(兼太郎)
☆俺じゃなきゃ しくじっているよと いう小言(好の助)
☆理不尽だ こんな小言は 小麦食え(じゅうべえ)
☆あれ今日は おこられないと 不安なる(とむ)
☆よくおこる 師匠我が家では たいこもち(好二郎)
☆話してる うちに気がつく 小言だな(しゅりけん)
☆今になり 母の小言が 身にしみる(鯛好)
☆いかれども ステテコ一丁 情けなく(好吉)
☆気にしてない その前おきは 気にしてる(ぽん太)
☆言われても 聞いちゃいけない もう帰れ(西村)
☆バカ野郎 怒鳴ってもらえる うちが花(好太郎)