浦和DF槙野智章「ワクワク」で立ち向かった“規格外”フッキとの激闘…担当記者が見ていた

浦和DF槙野智章
浦和DF槙野智章

◆19年ACL 準々決勝 浦和―上海上港

 しつこすぎるほどの密着マークが目に焼きついている。19年8月27日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝、敵地の第1戦・上海上港戦(2△2)。浦和DF槙野智章(33)の標的は、元ブラジル代表FWフッキ(33)だ。「試合は11対11だけど、彼との1対1だけを90分間意識した。すっぽんディフェンスです」と笑顔で振り返った。

 強さと速さを併せ持つフィジカルモンスターとACLでの直接対決は4度目。17年の対戦では味方3人がフッキに吹っ飛ばされ、FW武藤は「こんなトンデモないのと90分間やりあうなんて信じられない」と脱帽。試合前、大槻毅監督(47)から「大好物だろ。楽しんでこい」と背中を押され「孫悟空と同じで、強い相手はワクワクしてたまらない」とピッチに立った。

 強烈な左足が注目されがちだが、フッキは強い腕の力で相手を抑えて突破する技術も高い。「近づかないと自由を与えるし、近づきすぎて抜かれないようにさじ加減を意識した」。前半、絶妙な間合いのマークにいら立ったフッキのファウルを誘発。PKで2得点を許すも、累積警告で第2戦の出場停止に追い込んだ。「粘り強くいって彼をイライラさせる。ミッションを達成できた」。普段は底抜けに明るい男だが、激闘を終えたこの時は言葉に疲労感と達成感が入り交じった。

 17年はフッキと3度対決した。敵地の準決勝第1戦。前半15分、槙野はマークに付ききれず、ゴール正面約25メートルから左足ミドル弾を浴びた。「悔しいが、あの間合いと距離で打ってくると物差しができた」。教訓を胸に臨んだ第2戦はデュエル(球際の勝負)で勝ち、無得点に抑えて決勝進出。10年ぶりの優勝につなげた。

  • 17年10月18日、フッキを徹底マークする浦和・槙野(左)

    17年10月18日、フッキを徹底マークする浦和・槙野(左)

 相手分析には人一倍時間をかける。iPadには自身のプレー集、浦和の過去の映像がズラリ。フッキのフォルダもあり、対戦前は直近5試合のプレーを研究する。「90分間で1対1は20回くらい。どうボールを取った、取れなかったかを何度も見る。彼は規格外だから、最後は情報より感覚でやるのが大事になる」

 持論は「FWはオフサイドになるけど、DFはフライングしていい」。相手の動きを予測し、0・1秒でも速く動いて対応する。フッキやベルギー代表ルカクら世界屈指のFWとのマッチアップでたどり着いた境地だ。「自分に欠けていた部分を補うことができた一つのきっかけがフッキとの対決にある」と感謝する。

 試合後は必ずピッチで熱くハグし「彼、いい匂いがするんだよね(笑い)。次は僕がより攻撃的にいったら彼がどう対応するか楽しみ」。再戦は早くて来年以降。“孫悟空”が怪物を制圧する瞬間をこれからも見届けたい。(星野 浩司)

 ◆槙野 智章(まきの・ともあき)1987年5月11日、広島市生まれ。33歳。2006年、広島ユースからトップ昇格。10年からケルン(ドイツ1部)に所属し、12年1月に浦和移籍。16年ルヴァン杯、17年ACL、18年天皇杯と優勝に貢献。J1通算343試合41得点。各年代別代表にも選出され、07年にU―20W杯(カナダ)出場。10年1月6日のアジア杯予選・イエメン戦でA代表デビューし、18年ロシアW杯に出場。国際Aマッチ38試合4得点。18年に女優・高梨臨と結婚。182センチ、77キロ。

 ◆星野 浩司(ほしの・こうじ)1984年5月20日、茨城県生まれ。35歳。2008年に入社。社会、芸能担当を経て、19年からサッカー担当。主に浦和、湘南、五輪世代を取材。 

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17年10月18日、フッキを徹底マークする浦和・槙野(左)
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