無観客春場所で5場所ぶり負け越した炎鵬、人気力士だからこそ分かった精神的な弱さ…「大相撲報知場所」初日

無観客で行われた春場所で、取組前に土俵上で集中する炎鵬
無観客で行われた春場所で、取組前に土俵上で集中する炎鵬
春場所8日目、阿武咲戦の立ち合いではっそう跳びを見せた炎鵬
春場所8日目、阿武咲戦の立ち合いではっそう跳びを見せた炎鵬
春場所7日目、鶴竜(上)に押し倒しで敗れた炎鵬
春場所7日目、鶴竜(上)に押し倒しで敗れた炎鵬

 コロナ禍により、大相撲夏場所は延期案を経て、中止が決まった。日本相撲協会の苦渋の決断だが、力士らは下を向かずに無観客での東京開催を目指す7月場所(同19日初日)へ目標を切り替えた。スポーツ報知では本来なら夏場所初日だった10日から本場所と同じ全15日間、「大相撲報知場所」と題した連載で注目力士、角界の雑学などを取り上げる。「初日」は関取最軽量96キロの人気幕内・炎鵬(25)=宮城野=に電話で今の心境などを聞いた。(構成・大谷 翔太)

 夏場所の中止が、4日に決まった。新型コロナウイルス感染拡大は、力士が本場所の土俵に立つ機会も奪った。角界屈指の人気小兵力士・炎鵬は、この決断を冷静に受け止める。

 「仕方ないかなと思います。ただ早く決まってくれたので、そこはホッとした面はある。ギリギリまで待つのも、いろいろ気持ちの面でも影響が出てくるので」

 協会は、7月の名古屋場所について、東京での無観客開催を目指すと併せて発表した。

 「無観客は受け入れるしかないかなと。時間もあるし、前回の経験もあるので。ただやっぱり名古屋がなくなったという方が残念。1年に1回なので。その時しか会えない人もいる。そういうのがちょっと残念です」

 自己最高位の前頭4枚目で迎えた春場所は初の無観客。6勝9敗で5場所ぶりに負け越した。土俵に立てば、169センチの体に大声援を受ける炎鵬。歓声のない環境は、大きく影響した。

 「さみしかったのが一番。歓声もないし、会場の熱がない。自分は土俵に上がった時にスイッチが入って、時間がたつにつれてボルテージが上がっていくんですけど、それがなくて。どこかスイッチが入りきらないような」

 8日目の阿武咲(阿武松)戦立ち合いで、はっそう跳びを披露しても会場は静かなまま。本来、取組中の声援も力になっているという。

 「声援の瞬間に力出たりするんですよね、自分の場合。その声援で相手も力み、動揺、焦りが多少出る。こっちはすぐにその変化を感じられる。でも今回は相手はいつも通りで平常心。マッチしなかった。相撲を取るのがしんどかったです…」

 7日目には鶴竜(陸奥)への横綱初挑戦。あっけなく、押し倒しで敗れた。

 「あれはもう、完敗。何も覚えてないです。立ち合いで張られて、もろ手食らった瞬間に『重っ!』って。その一撃しか覚えてない。横綱の偉大さを感じました」

 苦しみ抜いた15日間。今改めて、こう振り返る。

 「自分一人の実力を知った場所でした。精神的な弱さ。今まで声援に後押しされてここまで来ている。今の自分の力は、これだけなんだと」

 無観客場所は、「1回でいい」と思っていたというが、7月にも行われる可能性がある。心境は複雑。ただ一方で、春の経験を経て期する思いもある。

 「リベンジにはなりますよね。同じ負け方をしないように。相手が驚くような、成長を見せたい。やるしかないので」

 誓う“リベンジ”。そのために、必要なものは―。

 「集中できる精神、そういう精神的な強さですかね。どんな環境、状況でも自分の力を出し切れるという、集中力だと思います」

 宮城野部屋では現在、感染予防のため他の力士らとは接触しない形で稽古を行っているという。相撲を取る稽古はできない。今は縄跳びで、心肺機能や瞬発力を鍛えている。満足な稽古ができない中、自分にできることは何か。5日のこどもの日には、全国の子どもたちへこうメッセージを送った。

 「今ここで何かをやっておくかどうかで、差がつくと思います。だからこそいろんなことにチャレンジしてほしい。今自分ができることをやっておくと、この先の自分にとって必ずいいことがあると思うので、頑張りましょう!」

 そして何より、大相撲の開催を心待ちにする、全国のファンへ。

 「7月は関心がどうなるかな、という感じもするけど、多くの方に見ていただきたいですね。テレビ越しでも、7月にまた元気な姿と相撲を見せられたら。皆さんを勇気づけられるような相撲を取れたらと思います」

 ◆炎鵬 晃(えんほう・あきら)本名・中村友哉。1994年10月18日、金沢市生まれ。25歳。5歳で相撲を始め中学時代は幕内・輝(高田川)と同級生。金沢学院大4年時に横綱・白鵬からスカウトを受け2017年春場所で宮城野部屋から初土俵。18年春場所で前相撲からは史上1位タイとなる所要6場所のスピード新十両。19年夏場所で新入幕。技能賞1。169センチ、96キロ。得意は左四つ、下手投げ。

 ■「みんな、元気ですかね」部屋関係者としか会わぬ日々

 宮城野部屋にある自室から取材に応じた炎鵬。コロナ禍での外出自粛生活に「キツイっすよ」と本音も漏らした。取材当日、首回りに湿疹ができたと明かし「多分、ストレスですね」と苦笑した。幸い、すぐ治まったという。

 在宅生活中には料理にも初挑戦し、パンケーキを作るなど何とか有意義なものにしようとしてきた。最近の時間の使い方では、「ネットフリックスをめっちゃ見ています。『ペーパーハウス』っていう海外ドラマですね」と明かした。部屋関係者としか顔を合わせない日々で「みんな、元気にしてるんですかね」と気にかけている。

 先が見えない生活の中、相撲に取り組む日々。「オンオフを切り替えて。時間はいっぱいあるので、コツコツやりたい」と前を向く。

無観客で行われた春場所で、取組前に土俵上で集中する炎鵬
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