清宮幸太郎の初アーチに思い出すドタバタ劇と、野球がある「当たり前」のすばらしさ―2018年5月9日

2回無死、清宮が右越えにプロ1号となるソロ本塁打を放つ(投手・ディクソン=2018年5月9日撮影)
2回無死、清宮が右越えにプロ1号となるソロ本塁打を放つ(投手・ディクソン=2018年5月9日撮影)

 「打った瞬間、という感じでした」

 まさにその言葉通りの、完璧な打球だった。18年5月9日のオリックス戦(京セラD)。7球団競合の末、日本ハムにドラフト1位で加入した清宮幸太郎内野手(当時18歳)は「5番・一塁」で先発出場していた。2回先頭。落ち着いた様子で打席で構えると、初球の131キロスライダーを狙い澄まして振り抜いた。乾いた打球音がバックネット裏の6階席にある記者席まで響き、白球はきれいな放物線を描いて右翼席へと消えた。怪物ルーキーのプロ1号は、推定飛距離130メートルのビッグアーチとなった。

 ゆっくりと歩き出す背番号21の一挙手一投足を追いながら、私の頭の中には「きょうは一面に違いない」という高揚感があったように思う。そこからの数時間はあっという間に過ぎていった。スタンドへ飛び込んだ打球を探すため、オリックスファンで埋まった右翼席へ移動。2回の攻撃が終わった後に急いで駆けつけたが、すでに関係者によってボールは回収されたおり、ダッシュで記者席へと戻る羽目に。すぐさま事前に取材していた荒木2軍監督(現2軍監督兼投手コーチ)の関連原稿の用意に取りかかった。

 試合が終わったのは午後9時半前。清宮の取材エリアには、多くのテレビカメラと記者が集まって熱気に包まれており、原稿の締め切り時間も迫っていた。確認してみると、囲み取材の音源の文字起こしを終えたのは9時45分頃。その後の数十分で原稿を出稿したが、体全体が熱くなるような感覚があったことは覚えている。その後も何度か差し替え原稿を送り、全てを終えた頃には日付は変わっていたと思う。

 実はこの日、ソフトバンクの内川が通算2000本安打を達成し、巨人は連敗をストップ。日本ハムでは中田が通算1000安打を記録していた。その中で、翌10日付の一面には「清宮1号 新伝説幕開け」の文字が大きく踊った。苦労した分、うれしさはいつも以上だった。

 やはり取材者として、野球の歴史が刻まれる瞬間に立ち会えることほど幸せなことはない。現在は新型コロナウイルスの影響を受けてプロ野球は開幕延期が続いており、正直言って私も野球ロスだ。今は我慢の時であることは間違いない。だが無事に開幕を迎えることができた時には、魂を熱く震わせてくれるドラマに出会う瞬間が多く生み出されていってほしい。2年前に味わった興奮の夜を思い出しながら、心からそう思う。(日本ハム担当・小島 和之)

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