新型コロナウイルス感染拡大で順延していた韓国Kリーグが8日、開幕した。無観客で行われた「全北―水原」の一戦は、1―0で全北が勝利した。Youtubeなどで世界に無料配信された一戦を視聴し、無観客再開が濃厚なJリーグのヒントを探った。
▽無人客席の有効活用
無人で物寂しいはずの座席に工夫がみられた。まず中継カメラが定点的に捉えるバックスタンドは「#C_U_SOON STAYSTRONG」(すぐに会えるはずだ。強い気持ちで踏ん張ろう)というクラブからのメッセージ。ゴール裏には片側にサポーター団体の横断幕、もう一方に巨大スポンサー広告が掲出された。
配信カメラの画角が捉える箇所には、ビジネスチャンスが隠れているのかもしれない。既存のスポンサーに露出機会を提供する場としても使用でき、新たにスポンサー枠を募ることもできる。5月16日の無観客再開が決まったドイツ1部ボルシアMGは、顔写真を座席に貼り付ける「カカシサポーター」設置の権利を1席約2000円で販売している。負のイメージしかない陸上トラックですら、捉え方によっては“金のなる木”かもしれない。
▽録音された応援歌を放送
場内のスピーカーから、録音された応援歌が流されていた。選手のモチベーションを上げ、視聴者の熱も上がるこの仕組みは、導入への難易度もそこまで高くなく、無観客試合時の一般的な形となりそうだ。過去の試合のものを代用してもいいし、新たに音声を募集してもいい。デジタルの力を借り、自宅の音声をそのまま会場に流すことも物理的には不可能ではないだろう。インターホンの音や小さな子供の泣き声がピッチに響いてしまうリスクがあるが。
普段応援を先導するコールリーダーや、「DJ」の専門家の協力を仰げば、より効果は増すかもしれない。選手のモチベーションを上げるという意味では、選手が残り時間確認のためチラ見を繰り返す大型ビジョンも有効に使いたいところ。
▽統一マスク
ベンチに入るスタッフ、選手は全員マスク着用が義務づけられていた。全北のマスクはクラブカラーの緑で統一されていた。現在多くのJリーグクラブがマスクを販売しているが、それを選手やスタッフも着用するとなれば、物販の売上につながる可能性はある。また現段階では暴論に近いが、マスクをユニホームの一部として考えると、スポンサー企業名露出の機会にもなり得る。仮にしばらく「ウィズコロナ」といわれる情勢が続くなら、「鎖骨スポンサー」の次が「マスクスポンサー」であっても不思議ではない。
* * *
5月16日にはドイツ・ブンデスリーガも無観客で再開する。Jリーグをはじめ、各国が参考にしてきた「プロ中のプロ」が編み出す運営方法には注目だ。模倣・共有できる取り組みはどんどん取り入れていきたい。当たり前が当たり前でなくなり、常識や慣習も変わってしまったこの時世。各クラブの「そう来たか…!」と思えるようなアイデアを待ちたい。(記者コラム「〇日後に再開するJリーグ」担当・岡島 智哉)