【箱根への道】9月入学になったら「メリット大きい」「条件は同じ」…青学大・原晋監督ら指導者に聞く

今年の箱根駅伝3区で従来の区間記録を破る区間3位と好走した駒大のスーパールーキー田沢廉(現2年)。9月入学制となれば各校ともに1年生の起用法が鍵となりそうだ
今年の箱根駅伝3区で従来の区間記録を破る区間3位と好走した駒大のスーパールーキー田沢廉(現2年)。9月入学制となれば各校ともに1年生の起用法が鍵となりそうだ

 新型コロナウイルス感染拡大による休校が長期化し、国内での「9月入学・新年度」の導入が議論されている。もし、実際に9月入学・新年度に移行した場合、大学駅伝界はどうなるのだろうか? 青学大の原晋監督(53)、東海大の両角速監督(53)ら、各校の指導者にチームの運営や強化に与える影響などを電話で取材した。(竹内 達朗、太田 涼)

 コロナ禍の休校が長びく中、当事者の高校生を中心に「9月入学・新年度」の声が上がり始めた。教育評論家の尾木直樹氏(73)らに加え、東京都の小池百合子知事(67)ら政治家も導入を訴えている。新年度の開始が春から秋に移行した場合、学校スポーツにも大きな影響を及ぼす。大学駅伝界も無関係ではない。

 今年の箱根駅伝で2年ぶり5度目の優勝を果たした青学大の原監督は「欧米諸国と同じ秋入学は国際基準に合っており、メリットの方が大きいと思う」と賛意を示す。昨年の箱根駅伝で初優勝した東海大の両角監督も「短い期間で調整しなければならないことは多いが、長い目でみれば、欧米諸国と同じ9月新年度は賛成」と話す。

 一方、学生3大駅伝最多タイの21勝を誇る駒大の大八木弘明監督(61)は「事前にしっかりと準備が必要な制度だし、すぐは難しいのでは」と慎重。近年、安定した成績を残す帝京大の中野孝行監督(56)も「現実的ではない。現場の混乱はもちろんだが、日本の文化として(4月入学を)残すことも大事」と提言した。

 9月新年度移行について、各監督の意見は分かれるが「決められた日程の中で強化を図るだけ。条件は同じなので」という基本的な考えは一致している。

 もし、秋入学・新年度が実現したら、新春の箱根駅伝はどうなるだろうか?

 学生3大駅伝の日程が現状と同じ場合、1年生は入学後、すぐに出雲駅伝(10月)を迎え、全区間20キロ超と長丁場の箱根駅伝にも4か月で臨むことになる。

 今年の箱根駅伝で3位と躍進した国学院大の前田康弘監督(42)は「1年生は4~6月に下地を作って夏合宿で鍛える。下地を作る期間がないと1年生は相当な力がなければ箱根駅伝は厳しい」と見通しを明かす。5年ぶりにシードに復活した古豪・明大の山本佑樹監督(43)も「シーズンに与える影響は大きい。特にルーキーの扱いは大変」と同様に話した。名門・早大を率いる相楽豊監督(40)は「1年目は無理に合わせないという作戦もあり得る」という見解を述べた。東海大の両角監督は「高校卒業間際になる4~8月にトラックシーズンがあることには変わりはないはずなので、その後、ロードの準備をすれば間に合う」と話した上で「ただ、それも力がある新人ということが前提」と付け加えた。

 今年の箱根駅伝ではオープン参加の関東学生連合を含め出場210選手中、1年生は29人(約14%)。9月入学となった場合、1年生の出場割合は減ることが濃厚。その中で活躍するスーパールーキーの出現は、大会の見どころとなるだろう。

 一方、4年生は最終学年度が始まり、わずか4か月で箱根駅伝という大舞台を終えることになる。残り8か月の学生生活でどのようにモチベーションを保てばいいのだろうか。「卒業後も競技を続ける選手は得意種目に絞って取り組み、箱根駅伝を区切りに競技から離れる選手は就職活動に集中すればいいのでは」と東京国際大の大志田秀次監督(57)は一案を示した。

 秋入学のメリットの一つとして、9月入学が主流の欧米諸国へ留学がしやすくなるという点がある。常に世界に目を向けている両角監督の視点は興味深い。「8月卒業・9月入学に移行した場合、学業でもスポーツでも優秀な高校生は欧米の大学を選択肢として考えるようになる。大迫傑(現マラソン日本記録保持者)のように高校時代から世界を見据えている選手は欧米の大学を選ぶこともある」と、長野・佐久長聖高の監督時代の教え子の大迫の名を挙げながら持論を展開した。留学しやすいということは“人材流出”の側面もある。「実際、日本の高校生ランナーは優秀だから、既にいくつかの米国の大学はチェックしている。(勧誘の)ライバルは国内の大学だけではなく、欧米の大学も加わる。危機感を持つ必要がある」とみる。

 原監督は「ライバルが世界に広がることはいいこと。成長につながる。日本の大学は全ての分野で、より魅力ある大学にならなければならない」と強調する。9月入学・新年度が導入された場合、大学駅伝界はさらに進化する可能性があり、そして、進化が求められるのだろう。

 ◆9月新年度・入学の主なメリットとデメリット

 【メリット】

 ▽教育 休校期間が長引き、遅れている今年度の学校生活をカバーできる。

 ▽国際化 9月新年度が主流の欧米諸国へ留学しやすくなる。欧米諸国の学生も日本に留学しやすくなり、国際化が進む。

 ▽受験 6~8月が受験シーズンとなり、インフルエンザ感染や降雪による交通トラブルを避けられる。

 【デメリット】

 ▽就職 4月入社が一般的となっているため、就職活動の時期を含め、企業側との調整が必要。また、就職して収入を得られる時期が5か月遅れる。その間の学費、生活費なども問題。

 ▽導入初年度の人数格差 誕生日による各学年の区切りを変更した場合、導入初年度の小学校1年生の人数は約1.5倍になる。

 ▽受験 猛暑期が受験シーズンとなる。冬と同じく体調不良の心配はある。

 ◆各国の学校新年度

 ▽1月 シンガポール

 ▽1月末~2月 オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル

 ▽3月 韓国

 ▽4月 日本、インド

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