NHK大河「いだてん」再放送 ピエール瀧のわずか70秒カットシーンまで代役で執念復元

2019年4月、保釈され湾岸署を出るピエール瀧
2019年4月、保釈され湾岸署を出るピエール瀧

 昨年NHKで放送された大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(全47話)の再放送が、同局BSプレミアムで4月6日からスタートした。出演中だった俳優でテクノユニット「電気グルーヴ」のピエール瀧(53)が逮捕されるという不祥事に見舞われた本作。再放送では、代役として起用された「大人計画」の三宅弘城(52)によって瀧の出演場面を全て撮り直し、復元された。

 昨年3月12日、瀧が麻薬取締法違反の疑いで逮捕されたという衝撃の一報がもたらされた。瀧は主演の歌舞伎俳優・中村勘九郎(38)演じるマラソン選手・金栗四三を支える足袋店「播磨屋」の店主・黒坂辛作役で、物語に欠かせない重要な役どころ。すでに出演回が放送されており、物語の中盤以降も出演を控えていた。

 瀧の逮捕直後、“寝耳に水”状態のNHKは対応に追われた。まず瀧の直近の出演シーンをカット。程なくして、代役に三宅が決まった。当時、撮影はすでに6月放送分に及んでいたが、異例の撮り直しを敢行した。

 あの騒動から1年1か月。この度の再放送は、瀧が出演し放送された序盤6話分も代役で撮り直された内容となった。タイトルバックの出演者名が「ピエール瀧」から「三宅弘城」に変更。瀧が出演していた当初のシーンと見比べると、役者が三宅に代わったこと以外は、セットや他の共演者の表情、台詞回しなど見事に再現されていた。瀧の痕跡はすっかりなくなっていた。

 瀧が出演した序盤6話分は第4~8、10話。ただ第10話だけは、他の5話分とは少々事情が違っていた。昨年、第10話の本放送は逮捕直前の日曜(3月10日)に放送されたが、逮捕直後の土曜(同16日)の再放送では出演場面がカットされたのだ。

 カットされたのは、日本人で初めてオリンピックに出場する金栗がスウェーデンのストックホルムから送った電報を黒坂が受け取る場面。わずか70秒ほどで、カットされても物語は成立しているように見えた。だから今回の再放送でもカットされたまま放送されるものだと思っていたが、しっかりと撮り直されていた。

 瀧が当初撮影した時点から相当の時間を経ての撮り直しは、出演者やスタッフらの日程調整、舞台セット、経費の面などから考えても、大きな負担を伴ったはずだ。それも豪華俳優陣を擁し、年間を通じて放送される大河ドラマとなれば尚のことだが、NHKは貫徹した。短いカットシーンにもこだわりを伺わせた。

 これまでも出演者が不祥事を起こすと、ドラマの再放送やソフト化が見送られるケースは少なくなかった。だが「いだてん」は撮り直すことで、そうした懸念を払拭できた。今年4月にようやくDVD化された。それを支えたのは多くの出演者、スタッフらの「いだてん」にかける熱い思いに他ならないだろう。

 社会現象になった朝ドラ「あまちゃん」(2013年)の制作統括を務めた訓覇(くるべ)圭氏と脚本家の宮藤官九郎氏(49)が再びタッグを組み、4年がかりで構想を練ってきたという本作。歴史が苦手という訓覇氏は、海外にも手を伸ばし、過去の資料を調べ尽くした。当初「オリンピックが好きな人が見ればいいというより、時代をオリンピックで見せていきたい」と意気込みを語っていた。

 異色ずくめの大河ドラマだった。中村と阿部サダヲ(50)のダブル主演による2部構成。33年ぶりに近現代史を描き、初回は序盤の総集編のような作りでスタートした。落語家・古今亭志ん生演じるビートたけし(73)は物語のナビゲート役。ストックホルムで約3週間の海外ロケも行った。

 異色ゆえか、視聴率は低迷し大河史上最低を記録したが、ネット上では称賛の声も見受けられた。放送終了後、NHKの木田幸紀放送総局長(当時)は「今までにない大河を目指し、最後までそれを追求してくれた」とねぎらった。

 今年3月には宮藤氏が、第12回伊丹十三賞を受賞。これまでに糸井重里氏(71)、タモリ(74)、リリー・フランキー(56)、是枝裕和監督(57)らが授与された賞で、「近現代を舞台にした異例の大河ドラマ『いだてん』のチャレンジングな脚本によりテレビドラマの可能性を広げた」と評価された。

 出演者の不祥事は、瀧だけにとどまらなかった。昨年10月には女子バレーボールの大松博文監督を演じたチュートリアル・徳井義実(45)の所得申告漏れが発覚し、再編集を余儀なくされた。それでも逆境に屈せず、作品の世界観を守り抜いた。復元された再放送に「いだてん」に携わった人々の執念を見た。

(記者コラム 江畑康二郎)

 ◆いだてん~東京オリムピック噺~ 勘九郎と、新聞記者で水泳の指導者である田畑政治を演じる阿部の主演リレー形式。熊本出身の金栗が、講道館柔道の創始者・嘉納治五郎(役所広司)が校長を務める東京高等師範学校に進学し、ストックホルム五輪に挑む。田畑は東京五輪実現のため、1964年の五輪招致に奔走。組織委員会事務総長として成功に導くために邁進する。

コラムでHo!とは?
 スポーツ報知のwebサイト限定コラムです。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

芸能

宝塚歌劇特集
NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請