「生産者救済」だけではない、ドライブスルー八百屋の意義とは

商品をトランクに積むスタッフ
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「ドライブスルー八百屋」で販売されている「もったいない野菜セット」
「ドライブスルー八百屋」で販売されている「もったいない野菜セット」

 新型コロナウイルスの感染拡大がやまない中、先月中旬に紙面で紹介した「ドライブスルー八百屋」が、当初の予想を上回る勢いで広がりを見せている。スタートは東京・大田区と千葉・野田市の2か所での営業だったものが、串カツチェーン「串カツ田中」とタッグ。さらに、その後は全国の生産者や地方の青果店などに輪が広がり、現在は北海道や静岡、福岡など全国に展開。今後も新たな拠点ができる予定という。

 念のために説明すると、「ドライブスルー八百屋」とは、ファストフードなどのドライブスルーと同様に、車を降りることなく商品を買うことができる仕組み。希望者は営業している場所に車で乗り付け、窓ごしに代金を支払う。その後、トランクを開けると、野菜や果物が入った段ボールを積み込んでくれるという流れだ。

 新型コロナにより外食産業が軒並み休業することで、廃棄するしか道の無かった野菜を、青果卸売会社が直接販売する―という取り組みは、一見すると「生産者救済」と感じられる。私自身も取材前はそう考えていたのだが、現場に行って、それは“部分点”しかもらえない正解だったことが分かった。

 考案した「フードサプライ」の代表取締役・竹川敦史さん(40)は「もちろん、生産者の方を支援したいのは間違いありません。ただ同時に、今休業している外食産業の人たちのためという思いも強いですね」と語る。卸売会社の同社は、通常時はスーパーや飲食店などが顧客だが、その数は全部で約4500店。もし、同社が今回の新型コロナの影響で事業規模を縮小したり閉業してしまうと、外食産業が再開された時に物流が滞りかねない。「だからこそ、僕たち卸売が踏ん張らないとダメなんです」と言葉に力を込めた。

 加えて、ドライブスルーの実施は、社員のためでもあるという。「少なくとも、これをやっていれば働くことができる。利益よりも『一大イベント』のつもりでやっているところはありますね。社員のモチベーションが上がっているので、その意味では成功ではないでしょうか」。確かに、働いている人たちの目は皆、生き生きと輝いているように見えた。

 「情けは人のためならず」ということわざがある。よく「他人に情けをかけることは、その人のためにならない」と誤用されるが、実際の意味は「他人に情けをかけると巡り巡って自分のためになる」という意味。生産者救済を「情け」というのは語弊があるかもしれない。ただ、今回の取り組みはまさに、このことわざ通りではないだろうか。(記者コラム・高柳 哲人)

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