ノーベル賞受賞、京大・本庶佑特別教授の名前でコロナ偽情報を拡散 「なぜ使われたのか…」否定声明発表

 2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した京大の本庶佑特別教授(78)が「新型コロナウイルスは中国で人工的につくられた」との見解を表明したとする偽情報が海外で拡散した。本庶氏は30日までに京大のホームページで偽情報と断定し、否定する声明を出した。関係者によると、本庶氏は「なぜ名前を使われたのか」と困惑しているという。

 社会問題化している偽情報(フェイクニュース)で、ノーベル賞受賞者の本庶氏の名前が使われていた。偽情報は、会員制交流サイト「フェイスブック」やツイッターなどを通じて英語やヒンディー語を含む複数言語で広がった。偽情報の中で本庶氏は「ウイルスは自然のものではない」と断言し「100%の自信がある」と発言。4月下旬、中国の研究所がウイルスを製造し「センセーション(物議)を引き起こした」と指摘し「私の言うことが誤りなら、政府はノーベル賞を取り下げることもできる」と記載された。

 偽の発言には、本庶氏が感染拡大の震源地となった中国・武漢の研究所に「4年間在籍した」との言及が含まれていたが、実際にはそのような経歴はない。新型コロナに関して、感染の有無を調べるPCR検査数を増やすべきだとの提言を行っているが、ウイルスの発生源についての見解は示してはいない。ファクトチェック(真偽検証)を行う各国の専門組織も「偽情報」の判定を下した。

 関係者によると、京大などが偽情報に気づいたのは23日。外部から「本庶氏の新型コロナウイルスについての見解がインターネット上で出回っているが、事実か」など、真偽についての問い合わせが複数あった。本庶氏らと大学側とで協議の上で、ホームページ上で声明を出すことを決めた。

 本庶氏は声明の中で、自身や大学の名前が「偽の告発と誤った情報を拡散するために使用されている」と指摘。ウイルスとの闘いで皆が協力すべき時に「根も葉もない主張がまかり通ることは、極めて危険で破滅的」と警鐘を鳴らし「人類が達成しうる最高の目標に、目を向け続けていこうではありませんか」と呼びかけた。

 本庶氏は18年、ノーベル医学生理学賞を受賞。体内で異物を攻撃する免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を突き止め、がんの免疫治療薬開発に道を開いたと評価された。免疫治療薬「オプジーボ」として実用化され、第4のがん治療として期待されている。

 ◆本庶特別教授の声明文

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、苦痛と経済的損失を受け、前例がないほど世界中が苦しんでいるさなかに、私と京都大学の名前が、偽の告発と誤った情報を拡散するために使用されていることに、私は非常に驚いています。

 現在は、私たち全員が、とりわけ科学研究の最前線で全力を尽くしている人々が、この共通の敵と戦うために協力すべき時です。私たちは、友愛なる人々の生命を守るために努力し、一瞬たりとも遅れを取ることは許されません。私たちのあらゆる努力を、病気を治療し、悲しみが今以上に広がることを防ぎ、新たなる時代への計画を立案することに傾注しなくてはならないのです。そうした時であるにもかかわらず、このように当該疾患の起源に関して根も葉もない主張がまかり通ることは、極めて危険で破滅的なことです。

 人類の幸福は、自然環境と調和して共生するという原理の上に立っています。本学は、このような人類全体の福祉のために力を尽くしています。私は、全身全霊をかけて本学の取り組みを支えることに、限りない喜びと誇りを感じています。私たち人類が達成しうる最高の目標に、目を向け続けていこうではありませんか。

 ◆本庶 佑(ほんじょ・たすく)1942年1月27日、京都市生まれ。78歳。山口県立宇部高、京都大医学部卒。米カーネギー研究所や米国立衛生研究所の研究員などを経て79年に37歳で大阪大教授に就任。84年に京都大教授となり、2017年、特別教授。静岡県立大や神戸市の先端医療振興財団の理事長を歴任。18年、ノーベル医学生理学賞。恩賜賞・日本学士院賞、ロベルト・コッホ賞など受賞。文化勲章、文化功労者。

社会

NEWS読売・報知 モバイルGIANTS ショップ報知 マガジン報知 バックナンバー申し込み 個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真販売 法人向け紙面・写真使用申請