現実がフィクションやパロディーを超えたコロナ禍、河崎実監督が知恵総動員させた新作バカ映画

「94歳の母の手作り」というカニ柄のシャツを着てポーズを決める河崎実監督(カメラ・矢口 亨)
「94歳の母の手作り」というカニ柄のシャツを着てポーズを決める河崎実監督(カメラ・矢口 亨)
「三大怪獣グルメ」に登場する(左から)イカラ、タッコラ、カニーラとチラシ(下)
「三大怪獣グルメ」に登場する(左から)イカラ、タッコラ、カニーラとチラシ(下)

 「B級映画の巨匠」として知られる河崎実監督(61)の最新作「三大怪獣グルメ」が5月23日に公開予定だ。“おバカ路線”を真剣に歩んできたが、コロナ禍で今作のキャンペーンは次々と中止に。映画館も上映自粛で封切り延期の可能性も否めない。暗いムードが漂う中、河崎監督はどうしているだろうか。話を聞いてみると、“創作観”が揺らぐ変化が起きているという。(内野 小百美)

 「コロナ禍による精神的疲れなのか。今まで経験したことのないめまいに襲われてね。この前、医者に行ったら突発性めまい症と言われたんです」。テンションの高い、いつもの監督とは様子が違う。公開延期の可能性もある中での取材。「今更ですが、何をするにも、やっぱり健康が一番大事だってことを痛感する日々でね」

  • 「三大怪獣グルメ」に出てくる「タッコラのグリルステーキ」という怪獣料理
  • 「三大怪獣グルメ」に出てくる「タッコラのグリルステーキ」という怪獣料理

 タコの「タッコラ」、イカの「イカラ」、カニの「カニーラ」という“三大”怪獣がぶつかり合う新作の話を聞く前に、最近のメンタルの変化を尋ねると、創作活動にも影響を及ぼしそうだという。時事も織り交ぜ、さまざまなおかしみをシュールに求めてきた監督にとって深刻だ。

 「こだわってやってきた“笑い”も、健全な社会でないと成立しません」。マスク問題や首相のステイホーム映像を見て「最近は現実がフィクションやパロディーを超えてしまった、と思えて。アベノマスクはパロディーでも考えつきませんよ。こうなると、作ってる方はもう手も足も出ない。マジで。僕たちは相当な試練に立たされてますよ」。

 さて新作の話へ。今作も奇想天外なストーリー。怪獣を倒した後に肉を食べてみたら“バカうま”であることが判明。怪獣料理の大ブームが起きる。さらに現れた怪獣を競技場に押し込み、酢を使った「酢砲(すほう)」なる液体でやっつける「海鮮丼作戦」がクライマックスとなるぶっ飛んだ展開だ。

 しかし、決してふざけてはいない。ゴジラやウルトラマンを世に出した特撮監督の円谷英二氏が、「座頭市」シリーズの脚本家・犬塚稔氏と戦前に企画した中に“大ダコもの”があったという。それは、日本を襲ってきた大ダコを軍が「酢鉄砲」で倒し、酢ダコにして食べるラストだった。が、当時の製作プロデューサーはタコでなく恐竜を希望。それで「ゴジラ」が誕生したという逸話が残る。もし、本当にタコ映画が実現していたなら怪獣映画史は、「全く違ったものになっていたかもしれませんね」。

 こよなく怪獣を愛し続けてきた河崎監督が、偉人への敬意を込めて撮ったものだ。しかし、本人はそんな背景にあまり執着せず、あくまで刹那的に見てもらえば本望という。

 「見た次の日、内容なんて忘れてくれて構わない。『そんなアホな』『くだらねぇ~』といっぱい突っ込んでもらってバカ笑いしてスカッとする。現実をひとときでも忘れてもらえれば、それで僕は十分なんですよ」

 以前の取材で、“おバカ映画”と「お」を付けると怒られた。「こっちは真剣に徹底したバカをやってる。『天才おバカボン』なんて言わないでしょ。バカ映画なんです」と。

 話は最初に戻る。コロナ禍により、あらゆる価値観が揺らぎ始めている。人も変わらざるを得ない。「それだけに、これまで以上に知恵を総動員ですよ。たとえ自転車操業だろうと作り続ける。その覚悟でやっていきますよ」。最後は自身を鼓舞するような口調になっていた。

 ◆河崎 実(かわさき・みのる)1958年8月15日、東京・原宿生まれ。61歳。明大在学中から8ミリ映画を製作。CMプロデューサーを経て84年フリーに。ビデオシネマ「地球防衛少女イコちゃん」(87年)で監督デビュー。2008年「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」はベネチア国際映画祭に出品。主な作品に「いかレスラー」「猫ラーメン大将」「ヅラ刑事(デカ)」「日本以外全部沈没」「地球防衛未亡人」「大怪獣モノ」など。次回作に動物不条理シリーズ「タヌキ社長」が控える。

 ◆三大怪獣グルメ イカ、タコ、カニの巨大怪獣が東京に出現。疑惑の人物として、元超理化学研究所員で実家の寿司店を手伝う男が浮かび上がる。政府が組織したシーフード怪獣攻撃部隊SMATは、この男を招いて動向を探る。独自の戦術を試みるも悪戦苦闘。最後の手段として「海鮮丼作戦」に挑む。久住昌之氏が監修。出演は植田圭輔、吉田綾乃クリスティー(乃木坂46)、安里(あさと)勇哉(32、TOKYO流星群)、横井翔二郎(29)ら。主題歌「おいしい怪獣」をキュウソネコカミが担当。

  • 「三大怪獣グルメ」のチラシ

    「三大怪獣グルメ」のチラシ

 ◆初主演の植田圭輔、独特な世界入れる喜び

  • 「三大怪獣グルメ」で怪獣と戦う攻撃部隊SMATのメンバーたち
  • 「三大怪獣グルメ」で怪獣と戦う攻撃部隊SMATのメンバーたち

 主演は“2・5次元俳優”としても注目の植田圭輔(30)。今作が映画初主演となるが「台本を読んだとき頭の中に?が浮かんだが、監督の独特過ぎる世界に入れる喜びを感じた」と話している。ヒロインを演じた乃木坂46の吉田綾乃クリスティー(24)は「どこか懐かしさを感じたりクスッとするシーンもあり、老若男女楽しめる作品」と手応えを感じているようだ。

「94歳の母の手作り」というカニ柄のシャツを着てポーズを決める河崎実監督(カメラ・矢口 亨)
「三大怪獣グルメ」に登場する(左から)イカラ、タッコラ、カニーラとチラシ(下)
「三大怪獣グルメ」に出てくる「タッコラのグリルステーキ」という怪獣料理
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「三大怪獣グルメ」で怪獣と戦う攻撃部隊SMATのメンバーたち
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