スポーツ報知の評論家陣が、高校球児、野球少年たちに攻守における“プロの極意”を伝授する「見本代表」―。今回は、来年に延期された東京五輪の日本代表4番候補の広島・鈴木誠也外野手(25)の打撃フォームを掛布雅之氏(阪神レジェンド・テラー)が解剖します。
昨季、首位打者に輝いた理由をひもときながら、「令和初の3冠王」に輝くための進化の余地を指摘しました。
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野球少年にまず注目してほしいのが、ベルトのライン。地面と平行にコマのように回っているのがよく分かる。打撃の基本は肩、腰、膝のラインが地面と平行に回るレベルスイングだ。ボールをバットの芯で捉える確率が高くなる。そして、頭の位置も構えから振り切るところまで動かないのも見習ってほしい。目線がぶれずにしっかりとボールに対応することができる。
〈2〉で高く左足を上げて、軸足の右足に体重を乗せると、〈4〉で左足を着地。
ここから〈6〉まで左足のスパイクがめくれ上がらないのが素晴らしい。左の壁が崩れていない証拠で、体重移動のパワーがロスされていない。〈7〉でそのパワーを受け止めている左太ももの筋肉の盛り上がりにも注目だ。たくましい下半身が、パワフルな打撃を支えている。将来、誠也のような強打者になるためには、地道に足腰を鍛えることも忘れないでほしい。
〈6〉のミートポイントは少しホームベース寄りだ。〈4〉〈5〉のように右肘をへその方に絞り、〈6〉〈7〉と右腕の強烈な押し込みがあるから、このポイントでも強い打球をはじき返せる。誠也ほどのパワーがないなら、ボール1~2個分、投手寄りにした方がいい。〈7〉の両手の三角形が崩れない美しいフォローもまねたいポイントだ。
昨季、首位打者を獲得したのが、うなずけるフォームだ。〈4〉で弓矢を張るような形は、どっしりと安定感がある。踏み込む左足に、グッと体重を乗せていきながら、体が突っ込みすぎることなく、グリップをトップの位置でキープ。〈5〉でバットが早めに寝る形で出てくる。ボールを点ではなく、線で捉えやすくなるから、いろんな変化球にも対応できる。
少し高度な解説になるが、この先、3冠王、40本塁打以上を狙うには、〈5〉でもう少しグリップが地面の方に向く感じになればいい。するとスイング軌道が「U」から「V」に近くなり、低めの球でも打球が上がるようになる。まだ進化の余地はあるということ。どんな大打者でも「これで完璧」というのはない。プロ野球選手も、野球少年も常に向上心を持って、スイングづくりに取り組んでほしい。(掛布 雅之)
◆五輪1年延期「切り替えて」
○…鈴木は来たる日に備えて、黙々とバットを振り続けている。全試合で4番を務めた昨年11月の「プレミア12」では打率4割7分8厘、3本塁打、12打点、9得点の圧巻の成績で世界一に導いた。主軸として期待される東京五輪は1年延期となったが「ショックだが仕方のないこと。切り替えて、しっかりとシーズンを戦っていけたら」と前向きに捉えている。現在は1勤1休でマツダで調整中。「チームの優勝が一番の目標」と、どんな状況でもチームファーストの精神は揺るがない。
◆過去の連載
守備の極意は右足だ!吉川尚輝と藤田一也の捕球と送球を川相昌弘氏が解説