混合ダブルス・渡辺勇大、東野有紗、乗り越える「コロナは目に見えない…だから苦しんでる人のこと思い生活」

スポーツ報知
東野有紗、渡辺勇大

 バドミントンの19年世界選手権混合ダブルス銅メダルの渡辺勇大(22)、東野有紗(23)組=日本ユニシス=が24日までにスポーツ報知の電話インタビューに応じた。ともに中高を過ごした福島県で東日本大震災を体験。新型コロナウイルス感染拡大で、競技生活を揺るがす災いに再び直面した2人は、トップ選手として何を考え、延期された東京五輪に向かうのか。五輪の同種目日本勢初制覇が期待される注目ペアに迫った。(取材・構成=細野 友司)

 今年3月11日、忘れもしない震災からちょうど9年の節目に、渡辺、東野組は全英OP出場中に五輪出場を確実とした。それから2週間で五輪延期が決まり、一度は手にした切符も宙に浮いている。

 渡辺(以下、渡)「しょうがないですよね。もう、命が一番大事なので。命があればまた復活できますし。(ツアーは中断中で)何をすべきか逆算できないので、多少のストレスはあると思うんですけど、できることは限られている。あまり思い悩まない方なので、大会(再開が)決まったら、また新たにスイッチを入れる感じになると思います」

 東野(以下、東)「しょうがないこと。全英までの時も(右膝を痛めた)勇大くんのけがで練習できていない面もあって、このまま五輪が始まっちゃうのはちょっと不安もあった。延期して練習が積めることは前向きに考えています」

 新型コロナ禍で、日本ユニシスの全体練習も中止。各自で工夫し、気分転換しながら調整する日々だ。

 東「体力は絶対落ちてしまうと思いますけど、室内でできるエクササイズバイクを購入しました。最近は料理をしたり、(同居する)母とニンテンドースイッチ(ゲーム)をやったりします」

 渡「ランニングして、(一人で)素振りやフットワークをしたり、という感じですね。(ユニシス)男子チームの皆でテレビ電話しながら、トレーナーさんとトレーニングもしました」

「最悪」も想定 競技生活を揺るがされるのは初めてではない。ともに福島・富岡一中時代に大震災を経験した。今回は新型コロナ禍。立場も変わった2人は、再び乗り越えようと思いを強くしている。

 渡「震災は、家がないとか地割れとか、目に見えて怖さが感じられた。コロナは震災に比べると、見えないので感じにくいんですよね。だからこそ、最悪の状況を想定して動かないといけない。僕らより苦しんでいる人が大勢いて、その人たちのことを思って生活するのが大事だし、どうやって元気や勇気を与えられるか、といえばバドミントンしかない。成果を出すのが一番の恩返しで、元気づけられること。必死にやるしかないですよね、今は」

 東「震災と違う形で、ウイルスなので、本当に徹底して手洗いうがいや除菌に気をつけています。震災の時はSNSも全くやっていなくて、情報もテレビやラジオのニュースで知る状態だったけど、今は逆に情報が入りすぎて怖いですね。でも、自分たちができること(発信)はやろう、と思います。SNSを活用して、皆さんに楽しんでもらえることがあればいいなと」

 中学で出会った2人は、18年全英OP初優勝で頭角を現した。19年世界選手権銅メダル。東京五輪の金メダルは現実目標だ。

 渡「東野先輩は、顔から優しさがにじみ出ているじゃないですか。本当にあのまんま、裏表なく誰にでも接することができて、自分を好きなようにやらせて、後は任せて、っていうカバー力とか、包み込んでくれる優しさがある。ダブルスは協調性とか、相手がやりたいことをくみ取らないと試合にならない。僕の気持ちを受け止め、くみ取ろうとしてくれるのが得意なので。そこがぴったりですね」

 東「勇大くんは本当に頼もしいですし、(1歳年下で)弟、弟と言っているけど、お兄ちゃんみたいな、頼れる存在です。勇大くんがいなかったらここまで来られていない。日本の(バドミントン)他の4種目は安定して強いし、一緒に金メダルの領域に食い込めるように頑張りたい」

 延期後の東京五輪の日程は、当初予定と大枠は変わらない見通し。混合複は、全5種目で最初に決勝戦が組まれる日程が濃厚だ。

 東「最初は自分たちで勢いづけようと。後ろに先輩方が待っていると思うと、ワクワクして楽しみです」

 渡「まずは自分が金メダルを取ることに尽きますね。まだ(ペアとして)成熟したとは思っていない。個々の力を上げて、世界をびっくりさせたいですね」

 ◆渡辺、東野組と東日本大震災 11年3月11日当時、東野は富岡一中の2年、渡辺は1年だった。卒業式が行われた後、練習拠点の富岡高体育館にいた渡辺は「忘れるわけがない日。こうして今バドミントンをできているのも、当たり前ではない」と振り返る。10キロ圏内にあった東京電力福島第1原発事故の影響も受け、地震後は、内陸部の福島・猪苗代町に拠点を移して活動を続けた。2人は福島県体育協会による地元ゆかりの強化指定選手「Jクラスアスリート」に選ばれて支援を受けるなど、福島は第二の故郷となっている。

 ◆渡辺 勇大(わたなべ・ゆうた)1997年6月13日、東京・杉並区生まれ。22歳。小学2年時に小平ジュニアで競技を始める。バドミントン経験者の父・雅和さんの作新学院高時代の後輩・大堀均さんが富岡高監督だった縁から、富岡一中に進学。福島・富岡高を経て、実業団の日本ユニシス入り。男子ダブルスも16年リオ五輪代表の遠藤大由とのペアで世界ランク5位につけ、東京五輪は2種目での出場が有力。167センチ、57キロ。

 ◆東野 有紗(ひがしの・ありさ)1996年8月1日、北海道・岩見沢市生まれ。23歳。小学1年から競技を始める。地元から富岡一中へ進学して以降は、母・洋美さんが北海道を離れてともに暮らし、競技に集中できるように衣食住を献身的に支えてきた。富岡高時代の14年世界ジュニア選手権では、渡辺と組んで銅メダルを獲得。17年から全日本総合選手権で3連覇を達成した。160センチ、54キロ。

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